縮小するPC市場で存在感
iOSに軸足を移したアップルがMacを見捨てたのではないかという論争が米国で広がった。タブレットとしても使用できる2-in-1デバイスがPC市場の新たな成長の起爆剤になると期待され、一昨年のホリデーシーズンに多数な製品が登場した。それに比べてアップルはMacのデザインを大胆に変更することはなく、Macの製品アップデートのペースも明らかに落ちていた。
ガートナーの調査によると、昨年の世界PC出荷台数は前年比6.2%減の2億6970万台だった。2012年以降、5年連続で前年実績を下回り、2007年の水準まで低下している。2-in-1は刺激にはなったが、市場全体の成長をけん引するほどの規模にはなっていない。
だからといって、PCが役割を終えたわけではない。2016年の動きで明らかだったのは、PCにはPCでしか応えられない価値があるということ。そうしたPCユーザが求めているのは「パソコンとしても使えるタブレット」でも、その逆でもない。道具として成熟したPCである。
アップルほどPCという形の中でPCを進化させているメーカーはない。それは最新のMac Bookプロに触れればわかる。美しいディスプレイ、優れた操作性、スリムなデザイン、タッチバーと、使ってみるとそれが次世代のPCであると実感できる。
ノートブックの主流ラインアップの刷新が完了し、2017年はそれら新世代製品への買い換えを促す年になりそうだ。MacBookプロとMacBookは第6世代コア(Core)を搭載するが、すでにケイビーレイクと呼ばれる第7世代コアが登場しており、CPUのアップデートが行われる可能性が高い。ただ、ケイビーレイクは第6世代コアの改良版で、アーキテクチャに変わりはなく、性能のジャンプアップの幅は限られる。
デスクトップ製品はいずれも長くアップデートされない状態が続いているが、昨年末に社内向けのメモでティム・クックCEOがデスクトップを「戦略的な製品として捉えている」と明言した。1月にデスクトップ向けの第7世代コアが登場しており、Macユーザ全体へのUSB-Cポートへの移行を進めるという意味でも、2017年はiMacをリニューアルする絶好のタイミングと言える。AMDとNVIDIAが昨年に新アーキテクチャのGPUを投入しているので、CPU統合グラフィックスの下位モデルから独立型GPUの上位モデルまであまねくグラフィックスの向上が期待できる。アップルはSSDに最適化された新しいファイルシステムの開発を進めており、iMacでもSSDの活用を普及させるかもしれない。
こうしたアップデートがMacプロやMacミニにも波及するかは不透明だ。デスクトップPC市場の縮小、オールインワン型が好まれる傾向を考えるとデスクトップ機種のラインアップの整理が行われても不思議ではない。
USB-Cポートと同様に、アップルはタッチバーもMacの標準機能として広げていくだろう。タッチバー搭載のマジックキーボードの登場も期待されている。ただし、現時点ではコストが高いため、高価格帯からの緩やかな波及になりそうだ。
Touch Barが未来をつくる
サンダーボルト3対応のUSB-Cポートに絞り込み、ファンクションキーを廃してタッチバー(Touch Bar)を採用したMacBookプロ。今日のPC市場では異端だが、これからの数年のPCが進む方向を示すMacだ。