【Point 1】リチウムイオンバッテリの仕組み
iPhoneやiPadにはその電源として、「リチウムポリマーバッテリ」が採用されています。リチウムポリマーバッテリは、リチウムイオンバッテリと呼ばれる高性能二次電池(充電池)の一種。乾電池の形をしたリチウムイオンバッテリが電解質に有機物の電解液(液体)を採用しているのに対して、リチウムポリマーバッテリは電解質に高分子ポリマー(ゲル)を採用し、アルミシールで保護しシート状に加工したものです。
リチウムポリマーバッテリの内部は、アルミニウム箔の正極とそこに塗られたリチウム金属酸化物の正極合剤、銅箔の負極とそこに塗られた炭素などの負極合剤と、その間に電解質を含むポリマーとセパレータを挟んだ構造になっています。これを何層にも折りたたんで積層し、アルミニウムでラミネートされたフィルムなどの外装材で密閉することで高い電力密度を得ています。充電時には正極から放出されたリチウムイオンがセパレータを抜けて負極に集まることでエネルギーが蓄積され、放電時には負極から正極にリチウムイオンが戻ることで電気エネルギーが電極に放出されます。このサイクル(充放電サイクル)を繰り返すことで優れた充放電特性を発揮するのがリチウムポリマーバッテリの動作原理です(本稿ではリチウムポリマーバッテリもリチウムイオンバッテリと呼びます)。
リチウムポリマーバッテリの内部は、アルミニウム箔の正極と、そこに塗られたリチウム金属酸化物の正極合剤、銅箔の負極とそこに塗られた炭素などの負極合剤と、その間に電解質を含むポリマーとセパレータを挟んだ構造になっています。
iPhoneのリチウムポリマーバッテリセルは、上記構造のシートを何層にも重ね合わせて折りたたみ、アルミニウムでラミネートしたフィルムで封止した構造になっています。iPadにはより大きなバッテリセルが複数搭載されています。【URL】https://www.ifixit.com/Guide/iPhone+7+Battery+Replacement/67528
【Point 2】iPhoneの充電方式
iPhoneの充電方式は「定電流定電圧充電方式」と呼ばれており、バッテリ容量が0%からおよそ80~85%までの間を「定電流充電方式」、そこから先を「定電圧充電方式」に切り換えて充電を行う仕組みです。このうち低電流充電の期間は急速充電が可能で、より大きな電流を流せる電源を使用することで、充電時間を短縮することができます。一方、定電圧充電の期間は満充電に向けて徐々に充電電流が減っていくので、この状態になってから満充電までにかかる時間は電源が変わっても大きく変化しません。
iPhoneは、0~80%程度までを定電流充電方式で、80%以上を定電圧充電方式で充電します。
【Point 3】電流と電力の関係
バッテリから取り出せるエネルギーの量は、電力(W:ワット)で示されますが、これはバッテリの電圧(リチウムイオン電池の場合は公称3.7V)と流せる電流の積で決まります。iPhoneやiPadの場合、バッテリ電圧はいずれも3.7~3.8Vと同じなので、取り出せるエネルギーは流せる電流の量でわかります。たとえばiPhone 7のバッテリは電圧が3.80V、電流容量が1960mAh(ミリアンペア・アワー)なので、取り出せる電力はおよそ7.45Whr(ワット・アワー)となります。一方、iPadプロ9.7インチモデルのバッテリは電圧が3.82V、電流容量が7306mAhなので、取り出せる電力はおよそ27.91Whrとなります。iPhoneやiPadのバッテリにはいずれも、定格電圧(V)、電流容量(mAh)、電力容量(Whr)が印刷されています。
iPhoneやiPadは1セルまたは並列セルのため定格電圧は3.8V前後ですが、MacBookは2直列セルで7.5V、MacBookプロは3直列セルで11.4Vなどの違いがあります。写真はiPadプロ9.7インチモデルの並列セルバッテリです。【URL】https://jp.ifixit.com/Teardown/iPad+Pro+9.7-Inch+Teardown/60939
【Point 4】iPhoneのバッテリ容量
iPhoneやiPadのバッテリ容量はモデルチェンジとともに少しずつ増加する傾向にありますが、デバイスの消費電力も性能の向上や機能の追加により増加してきており、実際のバッテリ駆動時間は世代が変わってもそれほど大きく変化していないというのが実情です。同世代のiPhoneであれば、画面サイズの大きいプラスモデルのほうが大きなバッテリを搭載していることもあり、バッテリ駆動時間や連続待受時間が長くなっています。いずれのモデルも1回の充電でその日の日中の連続使用に耐えるだけのバッテリを搭載しているといえます。
歴代のiPhoneおよびiPadシリーズのバッテリ容量と、そのバッテリ駆動時間の比較表です。どのモデルも1回の充電で8~10時間程度のインターネット利用が可能なだけのバッテリ容量が選定されていることがわかります。
【Point 5】充電サイクルとバッテリ寿命
リチウムイオンバッテリは消耗部品であり、使用にともなってその性能が低下(劣化)していきます。充電サイクル、使用温度、放電深度などがその寿命を大きく左右する要因とされ、中でも充電サイクルはその計測が比較的容易なため、バッテリ寿命の指標として用いられることが多いパラメータです。iPhoneの場合、目安としておよそ500回の充電サイクルを繰り返したときに本来の80%のバッテリ容量が維持できるように設計されています。ただし実際には充電時の温度環境や充電開始時の放電深度の違いなどによって、充電サイクル回数に対するバッテリ性能への影響度合いには大きな差が生まれます。
充電サイクルとバッテリ容量(満充電容量)の関係です。このケースでは気温25℃の室温で充電を行い、容量の20%以下までバッテリを消耗した状態から100%の満充電までの充電を行った回数を充電サイクルとして算出しています。