Mac業界の最新動向はもちろん、読者の皆様にいち早くお伝えしたい重要な情報、
日々の取材活動や編集作業を通して感じた雑感などを読みやすいスタイルで提供します。

Mac Fan メールマガジン

掲載日:

2017年のAppleは、 どうなる?【iPad編】

著者: 山下洋一

2017年のAppleは、 どうなる?【iPad編】

iPadプロが成熟する年に

2016年度のiPadの販売台数は4560万台で、前年度比17%減。2015年から減速が続くが、2017年は私たちのデジタルライフスタイルを変えるプロダクトとして注目したい。

2017年にアップルのOSを搭載したデバイスの出荷台数シェアがウィンドウズを上回り、2018年にはその差がさらに広がると、ガートナーのアナリストが予測している。アップルのシェアの大半はiPhoneによるもので、PCが中心のウィンドウズとの比較は妥当ではないという人もいるだろう。だが、日々の情報入手やコミュニケーションだけならPCは不要、モバイルデバイスで十分という人が増えている。

昨年春に9.7インチのiPadプロを発表した際に、フィル・シラー氏(ワールドワイドマーケティング担当上級副社長)が「5年以上前のPCが6億台以上もある」と指摘し、iPadプロが「最高のPCの代替になる」と述べたことが波紋を呼んだ。ウィンドウズPCユーザにしてみたら、PCで動くフル機能のアプリが動作しないiPadはPCの完全な置き換えにはならない。

だが、iOSアプリを使えることがiPadの強みなのだ。スマートフォンが普及してから、コンピュータデバイスに対する人々の価値観が一変した。PCのソフトウェアは多くがハードウェア内で完結するものだったが、デバイスやアプリ、サービスがクラウドの中に溶け込んで機能するのが今日のコンピューティングである。

そうしたクラウドやオンラインサービス、ソーシャルを活かしたソリューションは今、モバイルアプリから誕生している。デジタルライフスタイルのためのデバイスというニーズに対して、iPadはインターネットが普及する以前に設計されたPCよりも優れた体験を提供できる。

2017年のiPadに関しては、12・9インチと10インチ台のiPadプロ2、iPadミニの後継となる7.9インチのiPadプロなど、さまざまな噂が飛び交っている。10インチ台のモデルは縁をなくしたデザインで、ホームボタンが廃止されるという噂もあるが、どのようなサイズのラインアップになるにせよ、アップルはPCの代替として新しいiPadプロの価値をアピールするだろう。

全ラインナップが刷新されるなら、iPadプロの基本的なスペックのばらつきが解消されるはずだ。現在12・9インチのiPadプロは広色域ディスプレイではなく、「トゥルー・トーン」をサポートしていない。またメインカメラが4K非対応の8メガピクセルである。一方で9.7インチモデルはUSB 3.0に対応していない。

春頃の登場が噂されているが、不確定な要素がいくつかある。性能面では、10nmプロセス製造のCPUによる底上げが期待されているが、製造施設の立ち上げの遅れが報じられた。春頃発売の製品への十分な供給が間に合うか、まだ不透明な状態だ。

もう1つはiOSのアップデートだ。iOS 9で画面分割機能やキーボードショートカットなどが導入されて以来、iPad向けのiOSの新機能や強化が停滞気味である。たとえば、たくさんのアプリをインストールしているとマルチタスクを設定しにくく、iPhoneと同じホーム画面に不満の声を上げるユーザが少なくない。アップルがiPadプロでiPadの価値を本気で変えようとしているなら、iOSから改善を図るはずである。春頃に新しいiPadプロが登場しても、その価値が存分に発揮されるのは秋のiOSのメジャーアップデートからになるかもしれない。

iOSの最適化に期待

アプリをたくさんインストールしていると、マルチタスク機能を使って使用するアプリを選択する画面のスクロールが長くなる、iPadを生産性を高める道具とするにはiOSの最適化も必要。