多くのユーザが日常的に使っているWEBブラウザはもう「完成」してしまった退屈なソフトなのだろうか。アップルとグーグルという巨大企業が支配するWEBブラウザ市場へ独自のブラウザ思想で新たに挑む「ヴィヴァルディ(Vivaldi)」の共同創業者に話を聞いた。
ブラウザの進化に終わりはない
MacユーザにとってWEBブラウザといえば、「サファリ」か「グーグル・クローム」というのが一般的な認識だろう。だが、「(既存のデスクトップ)WEBブラウザのUIや操作性はほとんど変わっておらず、改善の余地がまだあります」と語るのはヴィヴァルディ(Vivaldi)の共同創業者兼COO(最高執行責任者)冨田龍起氏だ。
WEBブラウザのヴィヴァルディは、かつて軽快な操作性で人気を集めた「オペラ(Opera)」のコンセプトを引き継いだ、実質的な後継ソフト。冨田氏自身もかつてノルウェーのオペラ・ソフトウェアに勤務し、オペラ創業者のヨン・フォン・テッツナー氏と共同でヴィヴァルディ・テクノロジー社を2014年に創業したという経緯がある。
ヴィヴァルディ最大の特徴は「カスタマイズ性の高さ」にあるという冨田氏。現在多くのWEBブラウザが採用するタブブラウズのインターフェイスについても、もっとユーザの好みに合わせて変更できる柔軟性が必要だという。
「たとえば、macOSであればドックの位置を左右に変えられますよね。しかし、今のWEBブラウザのインターフェイスはメインウインドウの上部にタブバーがあって、ステータスバーがあって…とレイアウトが固定されています。タブは左や下にあったほうが便利と感じる人もいますので、ヴィヴァルディでは好みに合わせて自由に変更できるようになっています」
実際にヴィヴァルディの環境設定を見ると、タブに限らずユーザが設定できる項目の多さに驚かされる。機能も豊富でキーボードでさまざまな機能にアクセスできる「クイックコマンド」や、マウスジェスチャなどヘビーユーザ好みの機能が揃っている。
「ウインドウを数十ページ開いていても、クイックコマンドで探す手間を省いたり、タブをグルーピングしたり画面を分割して複数ページを同時に表示できます。こうした機能がほかにできるものがないのでヴィヴァルディを選んだというユーザも少なくありません」
2016年に正式版として登場したヴィヴァルディは、タブのスタッキングなどオペラ由来の機能に加え、タブ通知などSNS時代にふさわしい新機能を備える。オープンソースのChromiumベースで開発されているので、グーグル・クロームのエクステンション(機能拡張)がほぼそのまま利用できるのも利点だ。
イノベーションは突然に
さらに最新の「ヴィヴァルディ1.6」では、既存のWEBブラウザではまったく思いもよらないユニークな機能も搭載されている。ネットワーク経由で調色できるスマート照明「Hue」との連携機能もその1つで、現在見ているWEBページのテーマカラーに合わせて照明の色が変化するというものだ。WEBブラウジングがディスプレイ外の環境と連動するのは実際に体験しないとその面白さが感じられないが、メディアアートやインタラクション・デザインでの体験を彷彿とさせるものだ。
「この機能自体がWEBブラウズに必要ということではなく、HueのファンであるエンジニアがHueのAPIを利用すればこんな新しい体験をユーザに提供できるということで採用しました」
意外にも、明確なビジョンに基づいて採用したわけではないと説明する冨田氏。だが、こうした一見無駄にも感じられる突飛な技術的アイデアを積極的に取り入れていく開発の姿勢がWEBブラウザのイノベーションには欠かせないという。
「イノベーションというのは明確なコンセプトに基づいて実現するものではなく、あとから考えれば“これがあるのは当たり前”と人々が思うアイデアのことです。発明された時点ではぼんやりとしていても、面白いことがありそうだと進めていくうちに、ある瞬間から飛躍的に使い勝手が向上することがあるのです。だからこそ私たちはブラウザの基本機能を改善し続けるのと同様に、常に新しいものを出し続けたいと考えています」
このように、ほかのWEBブラウザにはない機能が満載のヴィヴァルディ。あなたも自分の利用スタイルに合った便利でユニークな機能を見つけよう。