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あなたが買ったApple製品、もしかしてニセモノ?

著者: 氷川りそな

あなたが買ったApple製品、もしかしてニセモノ?

ライトニングケーブルをはじめとしたアップル製品の偽造品の販売がECサイトを中心に大きな問題となっている。「少しでも安く買いたい」という消費者心理を狙った悪質な販売に巻き込まれないように、どう対策すればいいのか。具体的なチェック方法とともにその傾向と対策を考える。

巷にはびこる偽造品

昨年の10月、アップルは米アマゾンのマーケットプレイスを通じて、「アップル純正品」を謳って偽造品のライトニングケーブルやUSB電源アダプタを販売していたとして、販売元のMobile Star社に対して訴訟を起こした。請求した賠償金は商標権侵害の200万ドル(約2.3億円)と著作権侵害の15万ドル(約1700万円)。莫大な金額だ。

事の発端は、ユーザの報告だった。「購入した製品が使用中に発火した」というレビューが上がり、アップルが調査に乗り出したところ、Mobile Star社が販売する製品がすべて偽造品であったことが発覚したという。訴訟状によると、アップルが内部調査とテストを実施したところ、米アマゾン内で流通している製品のおよそ90%が偽造品であることがわかった。

これを裏づける追試を行った団体もある。英国取引基準協会はアメリカ、中国、オーストラリアなどを含む8カ国で400個の電源アダプタを取り寄せてテストを実施したところ、基準を満たした製品はわずか3個、つまり99%の製品が安全テストに合格しなかったという驚くべき事実を公表したのだ。

しかし、今回の事件でもっとも重要なのは、これがもはや「対岸の火事」ではないということだ。日本国内でもECサイトをチェックしてみると、製品写真がまるでアップル純正品のように見えるのに、商品説明は「iPhone専用」「アップル製品対応」など曖昧な記載にとどまっており、何よりも価格が不自然に安いものが数多く存在する。これらは偽造品である可能性が高いといっていいだろう。

偽造品が原因で起こる問題は山ほどある。たとえばライトニングケーブルの場合、最悪接続したiOSデバイスが破損する場合もないとは言えない。ほかにも、ケーブルが断線しやすい、コネクタの端子が外れやすい、端子が非常に熱くなる、端子がデバイスにうまく挿さらない、iOSデバイスを同期・充電できないといった問題が起きるだろう。加えて、偽造品は安全対策などについても甘く作られているため、ある日突然発火するような粗悪品も中には含まれているかもしれない。

正規品の「Apple 5W USB電源アダプタ」の販売ページ

アマゾンで販売されているアップル純正の「Apple 5W USB電源アダプタ」の販売ページ。「Amazon.co.jpが販売、発送します」と記されており、それがアマゾンで取り扱うアップル正規純正品である証拠だ。次々に現れる悪質な偽造品の販売手法に、アマゾンも販売元が「Amazon.co.jp」ではない製品は正規保証が受けられないと警告表示するようになった。

偽造品と思われる「Apple 5W USB電源アダプタ」の販売ページ

こちらのページの「Apple 5W USB電源アダプタ」は一見、型番やメーカーリンク、画像いずれも純正品の販売ページと同じものを使用しているが、価格が3分の1近く値下がりしており不自然なまでに安い。これがいわゆる「マーケットプレイス」を利用した業者の販売品だ。

真贋を見極める

では、どうやって偽造品を見分ければよいのだろうか。まず、すでに手元にある製品を確認する場合には、外見から真偽を確認するための参考記事がアップルのサポートページに掲載されているので、そこを参照するのがよい。たとえば、電源アダプタは底面部分に必ず「認定ラベル」という、安全基準を満たした製品であることを証明する情報がプリントされている。

偽造品は当然認証されていないため、これが一切記載されていなかったり、あいまいな記述で“それっぽく”見せているものが多い。また、悪質なものはこの認定ラベルすらコピーしているものがあるが、その場合も印刷の色が薄かったりフォントが違っていたりと、違和感があるのがポイントだ。

ライトニングコネクタを持つアクセサリも同様だ。純正のケーブルにはUSBコネクタから約18センチのところにまず「Designed by Apple in California」という印字があり、続いて生産国、そして12桁で構成される固有のシリアルナンバーがプリントされている。まずはこれがあるかどうかをチェックするのが大きな目安となる。

コネクタ部分も見慣れてくると非常にわかりやすい。USBにせよライトニングにせよ、純正のコネクタは非常に精密に作り込まれており、端子も均一に揃えられている。こういった部分にコストがかけられない安価な偽造品は、細部の仕上げが雑で、これが全体の安っぽい印象にもつながっている。サポートページにはサンプルも数多く掲載されているため実際に見比べてみるとよくわかるはずだ。

ライトニングやUSB-Cの純正ケーブルには、偽造品対策も兼ねて図のような刻印がされている。コネクタの形状で真偽の区別を付け難い場合には、まずここをチェックしてみるとよいだろう。「Designed by Apple in California」の印字のあとには、「Assembled in China」「Assembled in Vietnam」、「Indústria Brasileira」のいずれかが印字される。【URL】https://support.apple.com/ja-jp/HT204566

純正品と偽造品の最大の違いは「作りの丁寧さ」だ。アップル純正品は、端子部分が均一に揃っていたり、コネクタの端の丸みやプラスチック部分が滑らかに仕上がっているなど、価格なりの手間と時間がかかっている。

電源アダプタは発火の恐れなどがないかどうか、第三者機関によってチェックが義務づけらている。純正品はこの部分がはっきり読めるようにプリントされており、偽造品との見分けをつけるポイントとしても役立つ。【URL】http://www.apple.com/jp/power-adapters/

自己防衛のポイントは

偽造品にある程度慣れてくると、実際に手にしたときに「これは違う気がする」と思うことが増えてくる。筆者もITライターという仕事柄、この手の製品のチェックをすることが多いのだが、第一印象で感じた違和感はたいてい間違っていないケースが多かった。おそらく長年アップル製品を使っている読者諸氏の中にも似たような経験を持つ人もいるのではないだろうか。

とはいえ、最近の偽造品は中国・深?などにある純正品を扱う工場から不正に流出したものが組み込まれてくることも増えており、真偽の判別が難しいものも出てきている。こういったものはもはや素人判断は困難で、アップルストアのサポートスタッフなどある程度経験豊富な人間に判断を仰ぐしかないこともあるだろう。

その点でも、偽造品をつかまされない最大の防御法は買う前にあるといえる。アップルの純正品は基本的に「アップル製品取扱店」と呼ばれるアップルと直接販売契約を結んだ法人にしか正規の流通ルートが存在しない。これはECサイトでも例外ではないため「このお店は本当に正規の取扱店かな?」と思ったらアップルのサイトで事前にチェックすることでトラブルを未然に防げるだろう。

また、サードパーティのアクセサリもアップル製品での動作検証を正規のラボで取っている場合には、パッケージに「MFi」と呼ばれる認証済みのライセンスロゴが印刷されているのが特徴だ。これも最近では不法に使用している非認定品が出回り始めているようだが、アップルでもライセンスを発行した製品をデータベース化し、ユーザが誰でも検索できるようにするなど対策を打ち始めている。

いずれにせよ、もっとも根本的な対策は「偽造品を買わないこと」なのは間違いない。誰も偽造品を買わなくなればビジネスは成り立たず、結果として安全な品質を持ったものだけが生き残る健全な市場に戻るはずだ。金本位制の経済学の法則の1つである「グレシャムの法則」のように“悪貨は良貨を駆逐する”という事態にならないよう、ユーザである我々もリテラシーを高めていくことが望まれている。

サードパーティ製品もMFi認証されたものであれば、アップルのサイトから検索が可能だ。製品名だけでなくJANコードからも検索できる仕様になっており、かなり厳密に管理されていることがうかがい知れる。【URL】https://mfi.apple.com/MFiWeb/getAPS.action