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iPhoneで操作できるイマドキ家電!HomeKitの現状

著者: 松山茂

iPhoneで操作できるイマドキ家電!HomeKitの現状

iOS 10では、アップルが提唱するスマート家電用プラットフォーム「ホームキット(HomeKit)」がパワーアップした。しかし、海外では対応製品が増える中、依然国内で入手・使用できるものは少ない。それでも一度体験すると、その便利さに驚くはず。「ホーム」アプリの使い方とホームキットの現状を確認してみよう。

photo●apple.com 【URL】 http://www.apple.com/jp/ios/home/

長期停滞時期から脱却

2016年6月に開催したアップルの開発者向け会議「WWDC 2016(世界開発者会議)」の基調講演では、新しいiOS 10のバージョン番号になぞらえて、10個の新機能が紹介された。その中でも多くのユーザの興味を引いた項目が、スマート家電用のプラットフォーム「ホームキット(HomeKit)」の機能向上だ。

ホームキットが発表されたのは、2014年のWWDCと2年以上も前のこと。発表直後は、すかさず海外の5つの企業がホームキット対応を表明したが、それに続く企業や製品がなかなか現れず、長く停滞時期を過ごしてきた。「アップルのセキュリティ要件が厳しい」とか「処理時間の遅延が長すぎる」など、メーカーが対応製品を製作するうえで多くの障壁があると耳にしていたが、そのうち解決するだろうと思っていた。しかし、一向にその後の様子は伝わってこなかった。

ところが今回、プラットフォームの拡張や新しいアクセサリのサポート、フレームワークのアップデートなどが行われ、機能や使い勝手を大幅にアップして再登場したのだ。

家中の家電を一元管理

まずは、ホームキットについて簡単に復習しておこう。ホームキットはアップルが提唱する家電用のスマートプラットフォームで、iOSデバイスから家電製品などの対応機器をコントロールするものだ。ホームキットがサポートする機器は「アクセサリ」と呼ばれ、主な製品ジャンルとして照明やコンセント、センサなどがある。こうしたアクセサリのオン/オフや制御を行うのが、ホームキットの基本機能だ。これまでも、このようなスマート家電に対応した製品はさまざまなメーカーからリリースされていたが、どれもメーカーごとに制御方式がバラバラ。操作体系もそれぞれ違っていた。それらを共通の方式で一元管理しようというのが、ホームキットの主な狙いだ。

通常、スマート家電を操作するには、メーカーが用意した専用アプリを使う必要がある。当然ながら、異なるメーカーの機器をコントロールしようとすると、複数のアプリを操作しなければならない。これではお世辞にも使い勝手がいいとはいえないだろう。そこで今回、アップルがiOS 10に搭載したのが「ホーム」アプリだ。ホームキットに対応したアクセサリをホームアプリに登録すれば、同じユーザインターフェイスで管理・操作ができる。

iOS 10のアップデートでは、新たな機器もサポートされた。主な製品として、エアコンやヒータ、空気清浄機、加湿器などの空調アクセサリ、動画や静止画などを撮影するカメラ、ドアベルなどがある。ホームでは、こうしたアクセサリを単体でコントロールするだけでなく、起床や帰宅などのシーンごとにアクセサリをグループ化してオン/オフしたり、制御することも可能だ。

また、ホームは音声アシスタント「Siri」にも対応しているので、「ヘイ! Siri 電気をつけて」といったように音声でも操作できる。イベントやタイムトリガーを使ったオートメーションをアプリ上で設定すれば、それぞれの機器を組み合わせて、“部屋の温度が10度を下回ったらエアコンを起動させる”や“朝になったら部屋と台所の電気をつける”といった連係もできる。

外出先からの操作やモニタリングも、アップルTVを介したリモートアクセスのサポートで実現可能になった。アクセサリの状態変化(鍵の開閉など)を通知センターに表示したり、よく使うアクセサリやシーンはコントロールセンターからも操作もできる。今後は「ワークス・ウィズ・アップル・ホームキット(Works with Apple HomeKit)」のマークがついたアクセサリを購入すれば、「ホーム」アプリで一元管理できるうえに、それぞれの機器を組み合わせて簡単にスマートホームが実現できるのだ。

このように、ユーザにとっていいことづくめのホームキットだが、まだまだ国内で販売されている対応製品が少ないのが現実だ。WWDC 2016では、ホームキット対応を表明している家電メーカーに加え、住宅メーカーも大々的に紹介されたが、そこには見慣れた国内メーカーのロゴや名前は見当たらなかった。現在、アップルのサポートページにはホームキット対応アクセサリの紹介ページが存在するが、日本で入手できたり利用可能な製品は数少ない。事実、日本のアップルストアで扱っているのはどれも海外メーカーの製品のみで、わずか3社、10点と限られている(2016年12月15日現在)。それでも照明やセンサ、ヒーターが含まれているので、今の商品構成でもアクセサリ同士を連係させてホームキットの便利さを体験することはできる。そこで、筆者もフィリップス(Philips)のスマート照明システム「ヒュー(Hue)」を導入してみた。

これまでもホームオートメーションに対応したアクセサリはあったが、各メーカーの専用アプリでのコントロールが原則だ。そのため、自社以外のアクセサリとの連係や一括でのコントロールなどは基本的にできない。

ホームキット対応のアクセサリであれば、「ホーム」アプリからの設定やコントロールが可能だ。アクセサリの中には、直接アクセサリをコントロールするものや、ホームキット対応の中継ブリッジ(ハブ)を介して、そこから先は独自や別規格で制御しているアクセサリもある。

外出先からアクセサリをコントロールしたい場合は、アップルTV(第4世代以降)やiPad(iOS 10)をホームハブとして設置することで、リモートコントロールが実現できる。

「ホーム」アプリでは、アクセサリ単体だけでなく部屋ごとにコントロールしたり、時刻や現在地、アクセサリの状態によってコントロールするなど、さまざまな制御方法が用意されている。

アップルユーザなら体験すべし

今回、手に入れたのはアップルストアでも購入できる「フィリップス・ヒュー・ホワイト・アンド・カラー・ワイヤレス・アンビエンス・スターターキット(Philips Hue White and Colour Wireless Ambiance Starter Kit)」という製品。ヒューは以前から発売されていた商品だが、新バージョンでは電球をコントロールするブリッジ部分がホームキット対応になった。スターターキットではそのブリッジと電球3つがセットになっているため、すぐにホームキットを体験できる。筆者の場合、2つの部屋の電球と台所の電球を交換。ブリッジをWi−Fiルータに接続して、セットアップしてみた。

手順はいたって簡単。まずは「ホーム」アプリを開いて[アクセサリを追加]を選択。ネットワークへの追加を許可したら、iPhoneのカメラを使ってパッケージに記してある8桁のホームキットコードをスキャン。あとは[部屋]と[台所]という部屋を作成して、そこに3つの電球を割り振るだけ。たったこれだけでiPhoneから電球のオン/オフや明るさの調整、照明色の変更ができるようになる。外出時にすべての電球をオフするシーンを作成しておけば、出かける際にワンタップで室内の照明をすべて消せる。夕食時には台所の電気を消して部屋の照明を一番明るくしたり、深夜になったら室内の明るさを暗くするなどのシーンも作成できるのだ。

また、こうした設定は他のユーザと共有できるので、家人をメンバーとして登録。家人のiPhoneからでもコントロール可能にした。

さらに、自宅に第4世代のアップルTVが設置してあるので、これをホームのセンターとして登録。オートメーションとして、ホームから出発(つまり外出)したら、すべての照明をオフする設定を登録した。これで照明を消すのを忘れて出かけても、自動的に消灯してくれる。

Siriでの操作も想像していた以上に便利だ。いちいちiPhoneを取り出さなくても、アップルウォッチに向かって「台所の電気をつけて」といえば点灯してくれる。頭では理解していたが、実際に使ってみるとその便利さが実感できる。ヒューのブリッジには50個までのアクセサリを追加できるので、玄関やトイレの照明もヒューに交換したくなったのが正直な感想だ。

対応アクセサリを「ホーム」アプリで制御するには、最初に[マイホーム]にアクセサリを追加していくことから始まる。追加の方法は、アクセサリについているコードをiPhoneのカメラでスキャンするか、手動で入力するだけ。

[部屋]を作成してアクセサリを割り振れば、操作が簡略化されるだけでなく、部屋ごとにコントロールすることも可能になる。

[オートメーション]機能を使えば、自動でアクセサリをコントロールできる。現在位置が変わったときや時間だけでなく、アクセサリのコントロールをトリガーとすることもできる。

よく使うシーンやアクセサリはホームのトップ画面に登録しておこう。「ホーム」アプリを開いてすぐに操作できるし、コントロールパネルからもアクセスできるようになる。

ホームキットの便利なところは音声アシスタントのSiriにも対応していること。iPhoneやアップルウォッチに向かって話しかければ、部屋の電気のオン/オフなどのコントロールもできる。

国内メーカーの対応状況

先述のように、これまでも国内の家電メーカーからスマートホーム関連の機器はいくつか登場している。たとえば、パナソニックからは外出先でもスマートフォンで来客応対ができるワイヤレスモニタ付きテレビドアホンが発売されている。ワイヤレスカメラや窓に設置できる開閉センサ、ドアセンサなどをモニタ親機に接続すれば、自宅の様子をトータル的に監視できるシステムが構築できる。しかし、JEM−A対応の電気施錠操作器など一部の機器を除けば、接続できるのは自社の製品のみ。自ずと選択肢は限定されてしまう。

また、エアコンやテレビなど、赤外線で操作できる家電をWi−Fi経由でiOSデバイスから操作できるオープンソースなリモコンデバイス「IRKit」もあるが、こちらも今のことろホームキット非対応だ。最近のIoT製品も調べてみたが、ホームキットに対応している商品を見つけることはできなかった。

海外では徐々に対応製品が増えつつあるホームキットだが、国内では今ひとつ盛り上がりに欠けるのはなぜだろう。アップルの公式WEBサイトには「ホーム」を紹介する専用ページがあったり、アクセサリの紹介ページでも「ホームキット対応製品」カテゴリが用意されているが、その存在を知らない人が多いのは事実。また、ホームキットを謳っている製品はすべて海外製で、国内メーカーの対応製品が皆無というのも大きな原因だろう。大手メーカーの場合は、自社で提唱しているスマートプラットフォームの手前、おいそれと他社の規格に対応できないといった大人の事情もあるだろう。それ以外にも、技術面やコスト、ライセンス的な問題など、参入しない理由はいろいろと想像できる。

しかし、これだけ手軽にスマートホームを実現できる体験をしてしまうと、もっと多くの製品が対応して欲しいと思うのは、アップルユーザとして当然の願いだ。ホームキットには対応していないが、独自のスマートホーム対応やアクセサリ、センサなど国内メーカーが手がける製品は増えてきている。中には「これがホームキットに対応していれば、あのアクセサリと組み合わせてこんなことができるのに!」とワクワクしてしまう製品もいくつかある。2017年は、日本におけるホームキット元年となるように期待したい。

海外で販売されているHomeKit対応アクセサリ一覧

 

日本国内で購入できる主なホームキット対応製品

Philips Hue White and Colour

Wireless Ambiance スターターキット

【発売】フィリップス

【価格】2万6800円(税別)

発光色を1600万色から選べたり明るさを調整できるユニークな電球3個と、電球などを制御するブリッジ1台がセットになったHueの入門向けキット。

Philips Hue Go

【発売】フィリップス

【価格】9800円(税別)

Hueブリッジ対応のルームランプがこちら。内蔵バッテリで動作するので、持ち運びも可能。電球同様に発光色を1600万色から選べる。

Philips Hue Lightstrip Plus(ライトリボン)

【発売】フィリップス

【価格】1万1800円(税別)

サイズに合わせてカットできるHueブリッジ対応のライトリボン。延長ストリップを追加すれば最長9メートルまで延長可能。

Elgato Eve Door & Window Wireless Contact Sensor

【発売】ソフトバンクセレクション

【価格】5100円(税別)

ドアや窓の開閉状態を感知するセンサ。バッテリによる長時間駆動が可能だ。「ホーム」アプリに直接接続できるため、ハブやゲートウェイが不要。

Philips Hue ホワイトグラデーションスターターセット

【発売】フィリップス

【価格】1万4600円(税別)

白色に特化したHue電球2個と、Hueブリッジ1台、さらには照明のオン/オフや調光調色操作ができる「Dimmerスイッチ」がセットになった製品。なお、Dimmerスイッチがあれば、ブリッジを介さずに照明のオン/オフが行える。

Elgato Eve Weather Wireless Outdoor Sensor

【発売】ソフトバンクセレクション

【価格】6400円(税別)

屋外の温度や湿度、気圧を感知する環境センサ。「Door & Window Wireless」と同様に、バッテリによる長時間駆動が可能で、こちらもハブやゲートウェイが不要。測定したデータはアプリでモニタリングできる。

De'Longhi Multi Dynamic Heater WiFi Model

【発売】デロンギ・ジャパン

【価格】8万4800円(税別)

イタリアの家電ブランド「デロンギ(De'Longhi)」の自動温度調整機能が付いた発熱パネルヒーター。温度調節、プログラムタイマー設定などの操作が可能だ。