働き方を変えるための空間
コワーキングスペースというと、利用料を取って仕事場を提供する事業で、通常はオフィス不動産の活用方法として運営されることが多い。それを、一見すると異業種であるヤフーが手がけるのは意外だ。その理由を、同事業を担当する植田裕司氏と平野彩花氏に聞いてみた。
「ヤフーの来客フロアをコワーキングスペース『LODGE』として提供することで、5800人のヤフー社員が社外の方と交流する機会を提供し、さまざまなアイデアや問題解決を生み出す場を作るのが目的です」と植田氏は言う。
「もともとはヤフーのオフィス移転プロジェクトがあり、それを機会に『働き方のリズムを変えよう』という考えが会社としてありました。そのコンセプトとなったのが『Good Condition(いい環境で働く)』、『Hackable(常にどんどん変えていく)』、『Open Collaboration(外部の人と交わっていく)』の3つで、LODGEにはそのうちのHackableとOpen Collaborationが色濃く出ています」
植田氏はもともとアプリ開発のエンジニアで、オフィス運営については未経験だったが、プロジェクトの遂行能力を買われてLODGEの推進役に任ぜられたとのことだ。
もう一人の推進役である平野氏も普段はアプリのUI/UXデザイナーで、やはり空間デザインの経験はなかった。しかし、かえって既成概念にとらわれない場作りができたという。
「企業のオフィスというと、スタイリッシュなスペースになりがちですが、LODGEではもっとカジュアルで自由な空間を目指しました。また、利用状況に合わせてレイアウトを変更するために棚や仕切りは移動できるようにしています」(平野氏)
ヤフー本社の来客フロア兼コワーキングスペースである「LODGE」。LODGEは、11月時点では無料で利用できるキャンペーンを実施中(ワンデイ利用のみで身分証の提示が必要。ただしキャンペーンは予告なく終了することがある)。詳細は公式サイトへ。
常に変化する場所へ
LODGEの広さは1330平方メートル。都心のオフィスをここまで大規模に使ってLODGEを展開する最終目的は「びっくりするようなサービスを生み出す」ということ。
「その『びっくりするようなサービス』を山の頂上にたとえて、そこに挑戦する出発地点である山小屋(LODGE)になろうという思いを込めました」(植田氏)
頂上攻略の出発地点なので食事もできるように、ということでLODGEには食堂などが併設されており、社員も外部来訪者も利用できる。またLODGEの一角には実際に料理ができるキッチンも設置されている。
この11月に始まったばかりのLODGEだが、今後はどのように運営されていくのだろうか。植田氏に聞いてみた。
「LODGEのコンセプトのひとつであるHackableは『未完成で常に変化する』という考えです。イベントを行ったり、利用者からのフィードバックを反映して進化させ、LODGEのファンとなる人を増やして、本格的な人の交流を生み出していきたいと思います」