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「最高のiPhone購入方法」には思わぬ落とし穴があった!

著者: 山下洋一

「最高のiPhone購入方法」には思わぬ落とし穴があった!

見切り発車のサービス開始

昨年、iPhone 6sシリーズとともにアップルが発表した「iPhoneアップグレードプログラム」。24回分割の支払いで、アップルケアプラス(AppleCare+)が付属するiPhoneを購入し、12回の支払いを完了した時点で新しいiPhoneに機種変更できる。つまり、毎回半分の支払いで毎年最新モデルにアップグレードし続けられるというものだ。

iPhoneアップグレードプログラムでは、iPhone 7(32GB)が月々32ドル41セントで、24回払いの総額は778ドル。本体価格649ドルとアップルケアプラス129ドルの合計と同額だが、アップグレードプログラムなら途中で最新モデルに機種変更が可能。【URL】http://www.apple.com/shop/iphone/iphone-upgrade-program

新モデルの発売後、しばらく経過してからアップグレードプログラムでデバイスを購入した場合も、6カ月の支払いさえ完了してしまえば次の機種へのアップグレードは可能。ただし、12回分との差額を支払わなければならない。

同プログラムについては、アップルが「iPhoneを購入する最高の方法」とアピールした効果もあって、米国では大きな話題になった。しかし、見切り発車のような部分があったことも否めない。たとえば、1年後に発売される新製品の価格が大きく変動したり、4.7インチのモデルから5.5インチのモデルにアップグレードした場合、月々の支払い額はどのように調整されるのか。昨年の開始時点では、アップグレードに関する疑問に明確な回答が得られなかった。そして、1年が経過。プログラム利用者が待望していた新製品発売となったが、アップグレードした利用者からは少なからず戸惑いの声が上がっている。

混乱を生んだ2つの要因

まず、アップグレードプログラム利用者のほとんどが予約発売時に購入できなかった。割り当てが少なかったのか、まだ通信キャリアを通じて予約できていた段階で、同プログラムでは同じモデルが売り切れになって入荷待ちになった。

販売台数を伸ばしたいアップルが、iPhoneを使用し続ける可能性が高いプログラム利用者を後回しにして、新たにiPhoneを購入しようとしている人たちにより多くの製品を回したかどうかはわからない。ただ、アップルが自分たちをロイヤルカスタマーとして発売時に優先してくれると期待していたプログラム利用者は、予約販売時のプログラム枠の少なさに失望した。

iPhone 7シリーズの予約販売開始時に予約できなかったアップグレードプログラム利用者から不満の声が噴出したのに対して、アップルは発売の数日前にアップグレードプログラム向けの割り当てを用意するという内容のメールをプログラム利用者に送った。

また、機種変更の方法の問題も指摘されている。24回分割払いは購入者がシチズンズワンという銀行とローン契約を結ぶ。1年後に12回の支払いが完了して新しいモデルにアップグレードする際には、使用していたデバイスをトレードインする形で契約を完了させ、新しいデバイスの購入で新たに24回分割のローン契約を結ぶ。

問題は、アップグレードのたびにシチズンズワンがローン申請者のクレジットスコアを確認することだ。クレジットスコアとは、個人の経済的な信用度を表すもの。スコアの調査はローン契約に欠かせない手続きになるが、「ハードプル」と呼ばれる調査方法が用いられる。ハードプルが行われると新規にクレジットアカウントを作成すると見なされ、その度にクレジットスコアが下がってしまうのだ。iPhoneのローン契約だけなら影響は軽微だが、自動車ローンや住宅ローンなどを探している人やこれからクレジットスコアを積み上げていこうとしている若い人にとっては1年に1回のハードプルは軽視できない。クレジットスコアの調査については契約書に明記されているが、読み飛ばす人も多く、アップグレードプログラムの説明でアップルがしっかりと伝えるべきという声が少なくない。

アップグレードプログラムは1年目を終えた段階であり、混乱するのは仕方がない。iPhone 7シリーズ発売後は、プログラム利用者に毎日一定数を用意するなどアップルは対処に努めている。ハードプルの問題もローン契約審査における米国特有の問題といえる。ただ、同プログラムに興味を持った人の多くは、ユーザの要望を満たすユーザのための販売方法をアップルが確立してくれると期待した。トラブルはともかく、それが満たされていないのは残念だ。アップルケアプラス付きで最新のiPhoneを安心して使い続けられるプログラムを人々は求めている。ロイヤルカスタマーのためのプログラムとして評価されてこそ「iPhoneを購入する最高の方法」である。