最近、「腸内フローラ(腸内細菌叢)」という言葉を耳にすることが増えた。腸内の環境を改善することで、ガンや肥満の予防、アレルギー症状の抑制などができるのだとか。知りたくても肉眼では見られない腸内フローラの状態を、簡単な検査で教えてくれるのが、株式会社サイキンソーのサービス「マイキンソー(Mykinso)」だ。
サイキンソーの代表取締役・沢井悠氏は東京大学工学部応用化学科を卒業したあと、ヒトの遺伝子解析を行う企業で働いていた。いつか自分で事業を起ち上げたい、できれば消費者向けのサービスがいい。そう思っていたところに、腸内細菌の遺伝子の解析方法が劇的に進化しているという情報が入ってきた。
米国では2013年頃から、人体に生存する微生物の全容を明らかにする「ヒトマイクロバイオームプロジェクト」の研究成果をもとに、腸内細菌などに着目したベンチャーが出始めていた。一方、日本の状況を見ると、まだそうした企業は存在していない。これはチャンスと考えた沢井氏は、腸内細菌研究の第一人者である理化学研究所の辨野義己氏に連絡をし、顧問になってもらう約束を取り付け、2014年にサイキンソーを起ち上げた。
検査の仕方はいたって簡単。まずはオンライン上で専用の検査キットを購入する。キットが送られてきたら、そこに書かれているエントリーコードをスマホやPCから入力し、アカウントを登録。その後、採便して郵送し、生活習慣に関するアンケートに答えると4~6週間ほどで結果が届く。結果レポートには、腸内細菌のタイプや主要な細菌(ビフィズス菌など)の割合、腸内細菌の組成などが書かれている。それを見れば、謎に包まれていた自分の腸内に広がる生態系を知ることができるのだ。
サービスを開始して1年。マイキンソーの検査を受けた人は約2000人にのぼる。今後は現在着々と集まっているデータを解析し、生活習慣病などを予防するための具体的なアドバイスを提供するところまで視野に入れている。さらに、「マイキンソー プロ」というサービスを、医師や管理栄養士、ジムのトレーナーなどが利用できるように展開中。医療機関と共同で、より有効な健康指導ができるように研究を進めている。ヒトと一緒に進化してきた腸内細菌が、これからの私たちの健康の鍵を握っている。
腸内の細菌構成が検査キットで明らかに
専用の検査キットを利用することで、自分の腸内細菌の構成をチェックできる次世代型腸内フローラ検査サービス。自宅で採便し、オンライン上で結果を確認できるのが特徴だ。腸内細菌の遺伝子を読み取る技術を応用し、腸内の全体像を短時間で明らかにすることができる。サイキンソーは、理研の研究成果を中核技術とした「理研ベンチャー」に認定されている。