東京・代官山の閑静な住宅街に佇む小さなカフェ。その上のフロアにあるオフィスから、教育業界を変革しうるサービスが発信されている。先生と生徒、保護者を結びつけるコミュニケーションサービス「エドニティ(ednity)」だ。スレッド式で会話ができるシンプルなツールで、グループコードを利用したセキュリティ対策や立場の違いによる権限管理などが特徴である。
同サービスを開発したのは、株式会社Ednity代表取締役・佐藤見竜氏。きっかけはNPOが主催するシリコンバレーでの社会課題解決プログラムに参加したことだった。オンラインを活用した学習と、保護者や地域が積極的に学校教育に参加・協力するスタイルに感銘を受けた佐藤氏。
「子どもの可能性を引き出すには、何よりも良い人間関係、コミュニティが形成されている環境が重要だと気づきました。そうした環境を生む手段の1つとして、先生・生徒・保護者が円滑にコミュニケーションをとれるツールを創ったのです」
2013年にはスタートアップ企業を支援するアクセラレータプログラム「Open Network Lab」の第7期に参加し、サービスをスタート。数カ月かけて全国を飛び回り、実際に教師の声を聞いて機能を改良していった。その中で気づいたのは“現場は多くを求めていない”ことだったという。
「エドニティには最初、成績管理機能やQ&A、クイズといったさまざまな機能を用意していました。でも現場の声を聞くと、安全・確実な手段でテキストや画像などをスムースに共有できれば満足で、機能はむしろ少なくてよかったんです」
佐藤氏はすぐさまエドニティから各種機能を削り、コミュニケーションに特化したシンプルなツールとして生まれ変わらせた。「学校で使えるコミュニケーションサービス」というコンセプトだけ聞くと競合も多そうに感じるが、3年たった今も多くのシェアを獲得しているのはエドニティだ。なぜ他社は追随できないのか。その理由を佐藤氏は次のように分析する。
「真似できそうでできないのは、教育業界の問題を理解してサービスに落とし込むことが難しいからだと思います。特に大手企業は売りやすくしないと社内で企画が通らないため“機能を増やす”方向に行きがちですから」
将来は「学校そのものを作りたい」と夢を語る佐藤氏。彼にとってエドニティとは、理想の教育を実現するための着実な第一歩だ。
シンプルで使いやすいどこでも「学校」とつながれる
学校のクラス向けのクローズドなコミュニケーションツール。ホームルームや授業の連絡事項の共有、学習での疑問点の質問などに利用できる。ほかにも、教職員の情報共有や生徒同士でのチームプロジェクトに役立てるなど、活用方法はさまざま。シンプルなインターフェイスで使いやすく、学校向けSNSではトップのシェアを誇る。iPhone、iPadはアプリ上で、Macはブラウザ上で同サービスにアクセスできる。