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AirPods

AirPods

【発売】アップル

【価格】1万8144円

【URL】http://www.apple.com/jp/airpods/

初のアップル製ワイヤレス

9月のスペシャルイベントで発表された、アップル初の完全分離型ワイヤレスイヤフォン「エアポッズ(AirPods)」。コンパクトでシンプルなデザインに、専用に設計されたW1チップや各種センサを搭載。イヤフォンとテクノロジーを融合させたら、「限りなく魔法に近いもの」が生まれたとアップルは紹介しました。

では、その魔法とはなんなのでしょうか? 1つはワイヤレスイヤフォンの常識を覆すシンプルな使い勝手です。誰でもできる接続設定、アップル製品との連係など、ワイヤレス特有の手間を徹底的に省き、有線イヤフォン以上の快適さを実現しました。

2つ目は従来の完全分離型ワイヤレスイヤフォンとは一線を画する、長時間のバッテリ駆動です。W1チップがバッテリを効率的に管理することで、圧倒的な持続時間と急速充電を可能にしました。

3つ目はクリアな音質および、デュアルビームフォーミングマイクロフォンによる高性能な聞き取り性能です。価格は1万6800円(税別)、10月下旬から発売開始が予定されています。

アップルのエグゼクティブが「私たちは、ケーブルのない未来を信じています」と表明しているように、アップルは今後もワイヤレス環境を推進していくものと思われます。

個人的にもイヤフォンジャック廃止は大歓迎で、発表時に「いよっ、待ってました!」と心の中で叫んだくらい。ワイヤレスイヤフォンの圧倒的な快適さに加え、イヤフォンジャックを廃止することでiPhoneの耐水性能が実現するならそのほうが日々使ううえでメリットが大きいからです。

最大のデメリットは、好きな人との「イヤフォン半分こ」ができなくなることでしょうか(できるっちゃできるんだけど、あの“接近”が大事なんです)。あの甘酸っぱい青春のワンシーンを、若い子は味わえなくなるなんて…!と切なくなりますが、技術の進化とともに日常の光景も変わっていくのは世の常ですね。

冗談はさておき、エアポッズは前評判がかなり高く、発売直後は購入が集中するものと思われ、しばらくは品薄状態が続くのではないかと予想されています。では、エアポッズには具体的にどんな魔法がかけられているのか、1つずつチェックしましょう。

パッケージはホワイトを基調としたおなじみのデザイン。エアポッズ、充電ケース、ライトニング−USBケーブル、説明書が同梱されています。

【DESIGN】見た目はどうなの?

装着時の軽さとのトレードオフ

発表直後、SNSで大喜利の対象となっていたエアポッズのデザイン。たしかにアップル製品第一世代特有のプロトタイプ感はあるものの、初めて実物を見たときは、写真ほどの違和感はありませんでした。のちにSNS上で「チンアナゴ」などいじられていたと知り、うまいと感心しつつも、「実物はそうでもないのになあ」と感じたものです。

ただ機能性や完成度の高さに“萌える”タイプでない普通の人が、このデザインに惚れて、2万円弱を払うかというと限定的です。私も友だちにプレゼントするなら、エアポッズより、W1チップを搭載したビーツ(Beats)製品を選ぶと思います。完全分離型は耳栓を着けているような見た目になってしまいますし、装着時の軽さとトレードオフでしょうか。

iPhoneに付属する純正イヤフォンのイヤーポッズから、ケーブルを取ったようなデザインをしています。

耳の形や位置にもよりますが、正面から見ると意外と目立ちません。髪で隠せばまったく見えなくなります。

女性が装着した姿を横から見るとこんな感じ。普段からピアス、イヤリングなどのイヤーアクセサリで耳元を飾っているぶん、エアポッズを着けていても意外と違和感は少ないかもしれません。

髪の短い男性は耳元を隠せないため、女性よりも目立つ印象です。しかし見た目は慣れの問題が大きいため、それほど気にする必要もないのでは? 清潔感のある髪型やファッションのほうがよっぽど大事です。

【FITTING】簡単に外れないの?

日々の行動を振り返ろう

耳に装着するヘッド部分は、イヤーポッズ(EarPods)とほぼ同じ形状です。そのため大前提として、イヤーポッズが合わないタイプの人は、できれば試着をおすすめします。

私はイヤーポッズがしっくりくる耳なので、エアポッズを試した数日間は、勝手に落ちるようなことは一度もありませんでした。完全分離型だけあって装着感は軽く、長時間使用しても疲れません。ジャンプからヘドバン、電車移動まで試しましたが、人とぶつかる程度ではびくともしません。

もちろん、柄に指が引っかかるなどの物理的接触があれば外れます。ベッドで寝返りを打ったり、耳をボリボリかいたりすれば、落とす可能性は高いでしょう。しかし、もし片方が外れたとしても、自動で音が一時停止するようになっているのですぐに気づくはずです。顔のそばにある長さ3センチ程度の柄に、何かがクリティカルヒットする可能性がどの程度あるか、日々の行動を振り返って判断すればよいかと思われます。

また軽いランニングにも使用できますが、耐汗・防沫機能非搭載のため、耐久性が高いわけではありません。走りながらタップしようとして、指が変に当たって外れるという可能性もなきにしもあらず。激しいワークアウトなら「パワービーツ3」のような、スポーツ用途のワイヤレスイヤフォンをおすすめします。

指が柄にひっかかると外れそうになりますが、写真のように少し当たるくらいであれば耳孔からズレる程度ですみます。

【CONNECTION】接続は簡単なの?

誰でも使える「使いやすさ」

ブルートゥースイヤフォンは、iPhoneなどの端末と接続する「ペアリング」と呼ばれる設定が必須となります。エアポッズでは搭載されているW1チップのおかげで、ペアリングがかなり容易になりました。

その方法とは、iPhoneのそばでエアポッズの充電ケースのフタを開け、画面に表示される設定ウインドウの接続ボタンを押すだけ。ブルートゥースの設定画面を開く必要すらありません。 初めて試したときは「えっ、これで終わり?」と拍子抜けしたほど。ワイヤレス製品初心者でも、つまづくことは少ないでしょう。

アップルは子どもから高齢者、障がい者まで、より多くの人が楽しめる製品づくりを目指していますが、エアポッズも例外ではなさそうです。

もし自動ペアリングがうまくいかない場合や、アンドロイド端末などのアップル製品以外とペアリングしたいときは、充電ケースの背面にあるペアリングボタンを長押しして、手動で接続します。

なお、OSはmacOSシエラ、iOS 10、およびウォッチOS 3以降が必要です。

iPhoneにエアポッズをケースに入れたまま近づけ、フタをオープンすると、自動的にペアリングのポップアップウインドウが現れます。あとは画面上の接続ボタンをタップすればOK。バッテリ残量が表示されます。

【OPERATION】曲の操作はどうするの?

タップでSiriを呼び出せる

完全分離型のワイヤレスイヤフォンは、本体サイズの都合により、操作ボタンを持たないものが少なくありません。エアポッズも操作ボタンはないものの、モーション加速度センサが搭載されており、ヘッド部分をトントンとダブルタップすることでSiriが起動します。

そのため曲の操作は、Siriに「音量を上げて」「スキップ」など声で指示する形になります。自動耳検出をオンにしておけば、光学センサがW1チップと連係。エアポッズの片方を耳から外すことで、自動的に音が一時停止する機能も搭載しています。

また、iPhoneのブルートゥース設定画面から、ダブルタップ操作をSiriではなく、「再生/一時停止」「オフ」に変更することも可能です。

ただ、いくらSiriに対応するとはいえ、いちいち声で操作するのは面倒ですし、外で使うときは恥ずかしさもあります。そこでコントローラ代わりとなるのが、アップルウォッチのミュージックアプリです。

曲の前後スキップ、再生/一時停止、ライブラリへの追加など、ひととおりの操作が手首の上で完結するので非常に快適です。ボリュームはリュウズで細かく増減できるため、ボタン操作よりなめらか。ウォッチユーザなら、エアポッズの利便性を最大限に体感できるでしょう。

エアポッズには光学センサとモーション加速度センサが搭載されており、耳への着脱を感知します。耳に装着すると自動的に再生し、外すと一時停止できるのは、W1チップを搭載する製品の中でもエアポッズだけ。

[設定]→[Bluetooth]から、ダブルタップ操作時の挙動を変更できるようになっています。そのほかにも、エアポッズの表示名を変えたり、自動耳検出のオン/オフを設定できたりと、細かなカスタマイズが可能です。

【LISTENING】聴こえ方はどうなの?

音ズレはさほど気にならない

素人耳で聴く限りでは、音質はライトニング接続のイヤーポッズと同程度の印象を受けます。長時間聞いても疲れにくい、クリアでクセのない音質です。

ブルートゥースイヤフォンは技術上、音の遅延が起きやすいのですが、左右の音ズレも含め、エアポッズで遅延は「ほぼない」と言って差し支えないでしょう。早口の漫才やドラムプレイのビデオなど、スピード感のある動画でも違和感なく視聴できました。

さすがに「音ゲー」となると、わずかな音ズレが気になります。ワイヤレスは諦めて、スピーカか有線イヤフォンで遊ぶことを推奨します。また、エアポッズの形状は密閉型ではないため、多少の音漏れはありますし、遮音性も高くありません。

周りの音楽関係者に話を聞くと「よくできている」と上々の反応。イヤーポッズからの乗り換えなら違和感なく楽しめるはず。

【CARRYING】持ち運びでなくさない?

ケースの随所に工夫の数々

エアポッズは左右独立型だから、なくすんじゃないか?という疑問が湧いてきます。たしかに有線のイヤフォンに比べて紛失する可能性は高いといえます。

しかし、その問題にもアップルは徹底的に向き合いました。一見何の変哲もない充電ケースには、紛失を防ぎ、ポータビリティを高めるための工夫が凝らされています。サイズは約4.4×約2.1×約5.3センチ、重さ38グラム(本体は各4グラム)と小ぶりで、見た目はピルケースのようなデザイン。角がないので自立はせず、横に置いて使うようになっています。

自立しない理由は、ケースのフタにありました。ケースを机などの水平面に置くと、どちらを上にしても、フタが自動的に閉じる構造になっているのです。さらに中に磁石があり、エアポッズ本体を戻すときは、磁力でカチャっと吸い寄せられるように収納されます。シンプルながらも非常に合理的なプロダクトデザインは、さすがアップルといったところ。

充電ケースのエアポッズ収納部分にはマグネットが入っており、逆さにしても落下する心配はありません。経年劣化の可能性はありますので、使いながら様子を見たいところです。

エアポッズを充電ケースに戻す際、適当な向きでなくとも、磁力によって半自動的に正しい向きになって収まります。紛失しづらいだけでなく、利便性の高さも見逃せません。

【BATTERY】バッテリはどれくらい持つの?

スタミナに自信あり

エアポッズが競合と比べて圧倒的に優れているのが、バッテリの駆動時間です。専用に設計されたW1チップが、電力をセーブし効率的にバッテリを管理します。

その結果、1回の充電で最大5時間駆動、充電ケースを併用すれば24時間以上の駆動時間を実現。急速充電にも対応しており、たった15分の充電で3時間再生が可能です(現状の他社製完全分離型ワイヤレスイヤフォンはフル充電で3~4時間駆動が多い)。

バッテリ残量を確認するには、エアポッズをiPhoneに近づけるか、通知センターを見るか、Siriにバッテリ残量を尋ねることもできます(発売前の現在は未対応でした)。MacではメニューバーやiTunesからも確認できます。

充電ケースはライトニング接続を採用。iPhoneとケーブルを共用できるため、iPhoneを使っている間にさっと充電できます。15分の充電で1時間以上の連続通話が可能です。

エアポッズだけでなく、アップルウォッチ、純正のバッテリケースなど、アップル製アクセサリの一部は、通知センターのバッテリ残量表示に対応しています。ペアリング時にも残り充電は表示されます。

【MICROPHONE】マイクの使い心地はどうなの?

これで電話もしやすくなる

あまり注目されていませんが、実はエアポッズは、内蔵マイクも非常に高いクオリティで作られています。

ヘッド部分には音声加速度センサが搭載されており、声を発するとセンサがそれを認識します。すると2つのビームフォーミングマイクロフォンが連係しながら、周囲のノイズを取り除き、クリアな音声を届けます。実際に電話してみても、相手から聞き返されるようなことはなく、通常の声のボリュームでしっかりと相手に届きました。

Siriを起動した場合も、iPhoneに話しかけるときの精度とほぼ変わらず、スムースに私の話すことを認識しました。ブルートゥース経由なので一瞬のタイムラグはありますが、慣れれば話すタイミングはすぐにつかめますよ。

口元からマイクまで距離があるにもかかわらず、これだけ違和感なく声を拾えるなら、エアポッズをヘッドセットマイクとして、常時装着する使い方も十分アリだと思いました。

なお、音楽を楽しんでいる最中に着信があれば、本体をダブルタップして電話に出ることができます。iOS 10からは、着信元が誰かを着信中にSiriが伝えてくれる機能も追加されているため、iPhoneを確認せずともスムースに応答できます。

発信したいときは、ダブルタップでSiriを呼び出し、「○○さんに電話して」と連絡先を指定すればOKです。

エアポッズの先端にはマイクと充電用の電極が備わっているため、イヤーポッズよりも柄の部分が太くなっています。

音声を感知する加速度センサが声をキャッチし、デュアルビームフォーミングマイクロフォンがノイズを取り除きます。

【SWITCHING】デバイスの切り替えはスムースなの?

音も一緒についてくる

ワイヤレス初心者が躓きやすいのが、ブルートゥース機器と、iPhoneやMacなど複数デバイスを接続するマルチペアリング機能です。たとえば今、ワイヤレスイヤフォンがiPhoneとつながっているけれど、iPadに接続を切り替えたいとします。その場合、2つの切り替え方法があります。1つは、一度iPhone側の接続を解除して、iPad側でつなぎ直すやり方。もう1つは、ワイヤレスイヤフォンのボタンを長押ししてペアリングモードにし、iPad側で接続するやり方です。どちらもイヤフォンなり、端末なりの操作が複数必要なので、慣れていても失敗することも…。

そんなワイヤレス特有のペアリングの煩雑さを、エアポッズは一気に解決しました。同様にiPhoneからiPadに接続を切り替えたい場合、iPadの画面上でエアポッズの接続をオンにするだけなのです。iPhoneの音は自動的に一時停止し、iPadの音に切り替わって再生されます。

Macでもメニューバーのブルートゥースアイコンからエアポッズを選択し、[接続]をクリックするだけ。アップルウォッチはもっと簡単で、ミュージックアプリでiPhoneもしくはウォッチのアイコンをタップすれば、瞬時に変更できます。

iOS 10ではコントロールセンターが2画面になりました。iPhoneの画面下から上にスワイプ、右にスワイプしてミュージック操作画面を開き、エアポッズを選択します。

iPadもiPhoneと同じくコントロールセンターから、出力をエアポッズに切り替えられます。同じアイクラウド(iCloud)アカウントであれば切り替えもスムースです。

MacではメニューバーやiTunes、ブルートゥースの設定画面から接続することができます。バッテリ残量も確認できるので安心です。

アップルウォッチではミュージックアプリを起動し、トップ画面を下にスワイプすると、再生元の切り替えアイコンが表示されます。

私が試しました!

ITライター らいらさん

iPhone世代のITライター。日本の女性記者として初めて「WWDC」(2016)や「アップルスペシャルイベント」(2015~2016)を取材。