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日本語入力の楽しさを再発見する

著者: 栗原亮

日本語入力の楽しさを再発見する

テキスト入力専用機の誘惑

“文章を書く”といってもさまざまな形態がありまして、詩や小説を創作する作家もいれば、取材やネットで調べた情報を決められた字数にまとめあげる私のようなライターもいるわけです。また、レポートを書く学生さんや企画書など資料作りに勤しむビジネスパーソン、さらには日記やブログを書く人など実に多種多様です。

こうしたさまざまなテキスト入力のニーズに対して、最大公約数的に応えられるのはMacBookシリーズだと思いますが、便利で器用であるがゆえの思わぬ落とし穴があります。それは「集中力」が持続しにくいことです。WEBブラウザを開いていれば多くの情報に注意を奪われますし、執筆に行き詰まったときはSNSの誘惑があり、メールやスケジュールの通知が割り込んで来ます。

もっと純粋にテキスト入力に向き合える環境が欲しいなと思っていたところに登場したのが、キングジムの「ポメラ」シリーズ最新作「DM200」です。ポメラシリーズのことは前モデルから気にはなっていたのですが、Macとのデータ交換に不安があり購入には至りませんでした。最新モデルではWi-Fi対応でiOSデバイスやMacともテキストファイルが同期できるという点に期待して試してみることにしました。

なお、基本的なスペックや使用感については、多くのレビューが掲載されているのでここでは割愛させていただきます。

デジタルメモ

ポメラ DM200

【開発】キングジム

【価格】4万9800円(税別)

【URL】http://www.kingjim.co.jp/pomera/dm200/

入力の快適さは予想以上

まず、テキスト入力そのものについては、さすがに専用機だけあって満足しています。特に、DM200の適度なキーの沈み込みは文章入力にリズム感を生み出し、心なしか文体に勢いが生まれるような気がします。

カスタマイズされた日本語入力システム「ATOK」の変換効率の高さもその一助になっているのでしょう。内蔵された類語辞書も別の言い回しを探す際に便利で、日本語表現の幅を広げるのに役立ちます。

また、7インチのモノクロディスプレイは解像度こそ高くはありませんが、テキスト入力に集中できるという意味ではむしろポジティブに評価したいところです。シンプルな画面は往年のワープロ専用機を思い出しました。縦書き表示にして文豪気分を味わいながら原稿を書き進められるのもDM200ならではでしょう。

気になるキーボード

横方向のキーピッチは17ミリ、縦方向は15.5ミリでMacBookよりはわずかに狭めですが、キーストロークも浅すぎず深すぎず快適に文字入力が行えます。私自身は使いませんが、親指シフト入力のキー配置にも対応しているので、長文を執筆する小説家のような人にも向いています。

縦組みの表示もできる

通常はフルスクリーン画面の利用が快適ですが、DM200ではフレーム表示と文字設定を組み合わせることで「縦組み」での入力ができます。基本的に文字数を指定される専業ライターにとってはかなり魅力的な機能です。

惜しいネットワーク対応

一方で、DM200の新機能であるネットワーク対応には、現状ではいくつかの問題があると感じています。

まず、DM200内のテキストファイルをワイヤレスで取り出すには「アップロード」と「ポメラSync」という2種類の方法があるのですが、いずれもGメールの利用が前提なのはいいとして、グーグル2段階認証をオフにして、さらに「安全性の低いアプリ」の利用を許可しなければなりません。セキュリティの強化が叫ばれている昨今の流れに逆行します。

また、Wi-Fi機能は自宅や職場で利用する分には問題ないのですが、WEB認証が必要な公衆無線LANサービスへの接続ができません。駅やカフェの無料無線LANもWEB認証が必要なところが多いため、iPhoneのテザリングなど自前の回線が必要です。

結局のところSDメモリーカードが一番確実で手早いという結果に落ち着きました。そもそもファイルの同期自体を頻繁に行わないのかもしれませんが、クラウドを利用しない近距離通信などほかの手法もあったのではないかと思えてなりません。

とはいえ、DM200はテキストを入力するための「文房具」としての基本機能が確かなので、日本語で文章を書くという行為の楽しさを再発見させてくれるデバイスなのは間違いありません。いつでもどこでも思いついたら文章を書き始めたくなるライティングハイな人には最高のガジェットです。

ノマドでの入力作業に好適

リチウムイオンバッテリの搭載で、連続18時間という長時間駆動が可能になったのも大きな利点です。旅行先でもカフェでも電車の移動中でも、思い立ったらすぐにテキストを書き始められる機動性の高さはDM200ならでは。乾電池でなくなったのは評価が別れるところですが、スマートフォン向けのモバイルバッテリが普及している現在ならむしろウェルカムでしょう。

Wi-Fiでファイルをワイヤレス送信

ポメラシリーズで初めてWi-Fiに対応したので、ファイルをワイヤレスで取り出せるようになりましたが、グーグル2段階認証をオフにしたうえで安全性の低いアプリへのアクセスを有効にしないと利用できない点が気になります。

macOSやiOSのメモと同期できる

もう1つのワイヤレス機能である「ポメラSync」を使えば、Gメールのメモ機能を利用してiPhoneやMacの標準「メモ」アプリと同期できます。ちょっとしたメモをiPhoneで記録し、DM200で原稿として整理するといったシチュエーションでは利用できそうです。

SDメモリーカードで充分かもしれない

本体メモリとは別にSDメモリーカードをテキストメモの保存先にできます。SDカードスロットを搭載したMacと利用するのであれば、こちらのほうがファイルの受け渡しはスムースです。また、余ったSDメモリーカードをバックアップ用途にも使えるのでわかりやすいです。

外付けキーボードにもなる

本機は、なんとiPhoneやiPadとブルートゥース接続すれば外付けキーボードとしても利用できます。ポメラのキータッチでiOSデバイスに文字入力できるのは意外と便利かもしれません。