噂は現実のものに
「これが、7」とアップルが謳うように、新世代の名にふさわしいiPhoneの新モデルが登場しました。
iPhone 7/7プラスは前モデルと比べて外観に大きなデザイン変更はなく、外形寸法に至ってはiPhone 6s/6sプラスと同じ。それでいてハイパフォーマンスな「A10フュージョン」チップの採用や、シリーズ初搭載となる耐水・防塵機構、カメラやオーディオの大幅強化、日本の交通機関乗車システム・電子マネーに欠かせない「フェリカ(Felica)」対応など、内部が見事に一新されています。
アップルユーザにはお馴染みとなった継ぎ目のないユニボディは、前モデルに引き続き高強度な7000シリーズのアルミ合金。エッジ部分を連続した曲面で構成するなめらかなラウンドフォルムは手の収まりもよく、カメラハウジング部分を削り出しで成形するなどソリッドな質感が所有者の満足感をこの上なく高めてくれます。重量は前モデルから7プラスで4グラム、7で5グラム軽量化しています。
カラーバリエーションは、ローズゴールド、ゴールド、シルバーのほかに、ブラックとジェットブラックが加わりました。特に深い光沢を帯びたジェットブラックは9段階の酸化皮膜処理と研磨加工という特殊な製造プロセスを用いており、工業製品というよりは工芸品のようなこだわりを感じさせます。
また、アップルウォッチやMac Bookにも採用されているタプティックエンジン(Taptic Engine)を搭載した感圧式ホームボタンの採用や、3.5ミリヘッドフォンミニジャックの廃止とそれに代わるライトニング接続のイヤポッズ(EarPods)の提供、さらに別売りの新ワイヤレスイヤフォン「エアポッズ(AirPods)」など改良点は数多くあります。
ストレージは16GBモデルが廃止された代わりに、32GBと128GB、さらに待ち望まれていた256GBの3タイプとなりました(ジェットブラックは128/256GBのみ)。9月9日より予約が開始され、9月16日よりアップルストア直営店およびオンラインストア、各キャリア販売店、家電量販店などから販売されています。また、通信キャリアによるSIMロック版およびSIMフリー版がありますので、料金プランなどを参考にして最適なモデルを選びましょう。
累計10億台という人類史に残るベストセラープロダクトとなったiPhoneシリーズの最新にして最強、そして最長のバッテリ駆動時間を誇るiPhone 7/7プラスの実力を、ぜひその手で確かめてください。
●新型EarPodsが同梱
3.5ミリヘッドフォンミニジャックを廃したため、ライトニングコネクタを装備した「イアポッズ with ライトニングコネクタ(EarPods with Lightning Connector)」が新たに付属します(1)。また、従来のミニジャックを利用できる変換アダプタも同梱されています(2)。それ以外の同梱物は従来どおり、ライトニング-USBケーブル(3)、USB電源アダプタ(4)、マニュアル類(5)です。
[デザイン] ヘッドフォンミニジャック、Dラインの廃止でさらにスッキリ
本体のサイズ/各部名称
外形寸法やレティナディスプレイのサイズはiPhone 6s/6sプラスと変わっていません。前面の通話スピーカ横にあるフェイスタイムHDカメラは700万画素にアップし、セルフィー撮影などでのクオリティが上がりました。また、ホームボタンは物理式からタプティックエンジン対応の感圧式に変更され、指紋認証のタッチID(Touch ID)は引き続き搭載しています。
iPhone 7プラスには2つのiSightカメラが搭載されたことで、iPhone 7との大きな外観上の違いになっています。自然な色合いを演出するトゥルートーン(True Tone)フラッシュはLEDが2つから4つになり光量が50%アップ、照明のちらつきを抑えるフリッカーセンサも採用されました。
本体側面のボタン配置はiPhone 6s/6sプラスと同様です。
3.5mmステレオヘッドフォンミニジャックが廃止され、オーディオ出力はライトニングコネクタ経由またはブルートゥースで行うようになりました。
●分割ラインもスッキリ
電波の干渉を防ぐために設けられた樹脂素材パーツの分割ライン、いわゆる“Dライン”が本体の上下に移動しました。これにより、本体裏を横切るラインがなくなり、これまでよりスッキリとしたデザインになりました。
[カメラ] 極まったカメラ性能。プラスではプロ並みの撮影が可能に
本格撮影・編集が可能
iPhone 7/7プラスでもっとも注目されるポイントはカメラ機能でしょう。アップデートされた背面のメインカメラは一回りサイズが大きくなり、レンズ周りのデザインも一新。レンズ部分だけが飛び出していた前モデルの形状と比べると、一体感が増しているのがわかるでしょう。
カメラのイメージセンサの画素数は1200万画素と前モデルと変わらないものの、センサのサイズアップにより受光感度が向上。また、F1.8の明るいレンズを採用し、レンズ構成も5枚から6枚となり色収差やディストーション(歪曲収差)などを軽減する改善が図られていると考えられます。
前モデルではiPhone 6sプラスのみ搭載されていた光学式の手ブレ補正機能がiPhone 7/7プラスの両方に採用されています。この手ブレ補正と明るいレンズの組み合わせは、撮影に多くのメリットをもたらします。たとえば、明るさが足りない状況でもISO感度を極端に上げずに速いシャッタースピードが得られますので、ノイズの軽減など画質の向上につながりやすいのです。
また、iPhoneカメラの特徴として、薄型のボディという厳しい制約の中で平均的なコンパクトデジタルカメラの画質を上回る撮影を可能にしていることが挙げられます。これにはソフトウェア的な画像補正技術が大きく関わっており、1枚のHDR写真撮影において顔&身体検知、露出、ピント、ホワイトバランス、色のダイナミックレンジ、トーンマッピング、ノイズ除去、画像合成などといった複雑な処理が連続的に行われています。アップルは独自開発のISP(イメージシグナルプロセッサ)をA10フュージョンチップ内に設け、この100億にものぼる画像処理演算をわずか0・025秒という瞬時に行うとしています。
2つのLEDを異なる色温度で発光させるトゥルートーンフラッシュも4LEDのクアッド構成に強化され、光量が50%アップしただけでなく、これまでよりも柔軟に自然な色味を再現しやすくなりました。人工的な照明下で発生するフリッカ(ちらつき)を軽減する機能も追加されています。
そして、ディスプレイ側に配置されたフェイスタイムHDカメラも前モデルの500万画素から700万画素にアップグレードされ、「自撮り」をよりきれいにしたいというニーズに応えました。
そのほか、写真を撮影した前後の動きや音声も記録できる「ライブフォト(Live Photos)」の機能も前モデルより進化し、映像の手ブレ処理(スタビライゼーション)が追加されました。また、このライブフォトで撮影したり編集するためのAPIも公開されたことで、“動く写真”という新しいムーブメントが広まっていくことでしょう。発表では触れられませんでしたが、「タイムラプス撮影」の機能も強化されています。
さらに写真好きにとっての朗報が、iOS 10を搭載したiPhonee 6/6sプラス、iPhone SE、iPhone 7/7プラスにおいてRAW撮影をサポートしたことです。RAW画像はセンサが記録している「生」の状態のデータを保持しているので、露出やコントラスト、明るさや色味などをあとからユーザが細かく調整できます。このRAW撮影のAPIも公開されているので、対応した画像編集アプリであればiPhone写真を納得いくまで調整できます。そして、広色域キャプチャのAPIも用意され、iPhone 7/7プラスで採用された「広色域ディスプレイ」であれば、従来よりも多くのカラーデータを扱えます。
これまではiPhoneで撮影しても、色の調整などの仕上げはMacに取り込んでからというプロレベルのカメラマンも多かったのですが、その場で本格的な写真編集が可能になりました。
●全モデルに光学式手ブレ補正搭載
iPhone 6sまでは光学式手ブレ補正は「プラス」にしか搭載されていませんでしたが、iPhone 7/7プラスともに搭載されることになりました(7プラスは広角レンズのみ)。
●1200万画素の新型CMOSセンサ
撮像素子の画素数は1200万画素と据え置きですが、新設計で受光感度が上がりピクセルサイズも大きくなっています。また、画像処理の速度も60%向上し、電力の効率も30%改善しています。
●F1.8の明るいレンズ
メインカメラに搭載されているレンズは前モデルまではF値2.2でしたが、より集光性能の高いF1.8のレンズへと進化しました。また、レンズ群の構成も5枚から6枚となり、歪みや色彩の補正能力が高まっていることが推測されます。
●トゥルートーンフラッシュ
これまで2つのLEDの色温度を調光して被写体に最適なフラッシュ光を届けていましたが、このLEDが計4つのクアッドLEDとなり、発光量が50%以上向上。また、蛍光灯などのちらつきを感知するフリッカセンサ機能が増えています。
●イメージ処理性能が2倍に
アップルデザインによるISP(イメージシグナルプロセッサ)はA10フュージョンチップと連係し、撮影時の100億を超える画像処理演算を0.025秒で処理できるなど、画質向上を支える能力が大幅にアップしています。
●色域がより広く
ただ高精細になっただけでなく、より広い色域のキャプチャをサポートしました。iPhone 7/7プラスではsRGBよりも広い「DCI-P3」に対応した広色域ディスプレイとなったので、色飛びや色潰れが少ない写真を撮影・閲覧・編集ができます。
●セルフィーも大幅機能アップ
「自撮り」などに使うディスプレイ側のフェイスタイムHDカメラも500万画素から700万画素にアップしました。暗い場所ではディスプレイ全体が発光するレティナフラッシュ機能も引き続き搭載されています。
●ライブフォト&RAW対応
撮影した前後の動きも撮影できるライブフォトが進化し、この機能を用いたり編集するAPIが公開されました。また、iPhone 6s以降およびiPhone SEではiOS 10からRAW撮影に対応し、対応アプリではDNGファイルの編集が可能となっています。
プラスだけの新機能
ここまでは、iPhone 7/7プラスで共通となる部分の話でしたが、7プラスだけの撮影機構もあります。その筆頭が「デュアルレンズ」 です。文字どおり広角レンズと望遠レンズの2つのカメラを搭載し、これまでになかった機能を実現しています。
中でも「ズーム」はその効果をもっとも実感できる機能でしょう。iPhoneのカメラは画角が固定された単焦点レンズで、遠くのものを撮影するデジタルズームもあるものの、拡大倍率は最大で5倍。しかもデジタルズームは元の画像の一部を切り抜いて表示しているだけなので、ズームをしていくほど画質的に劣化する傾向があります。
iPhone 7プラスでは、ワンタップで通常の28ミリレンズから56ミリの望遠レンズに切り替わります。デジタルズームと異なり光学ズームなので画質自体はほぼ劣化しません。また、そこからさらにデジタルズームを行って5倍表示にしても、広角レンズ側を基準にすれば2.5倍相当なので画質の劣化は大幅に抑えられます(最大倍率では10倍のデジタルズームも可能)。そして、単に2つのレンズを切り替えるられるだけでないのがアップルらしさ。「被写界深度エフェクト」という機能を用いれば、まるで一眼カメラで撮影したように背景をきれにボカした写真が撮影できるのです。
このiPhone 7プラスだけの新機能は無償で年内にアップデートが予定されており、今からとても楽しみです。
●デュアルカメラ搭載のiPhone 7プラス
iPhone 7プラスでは、パワーアップした12Mピクセルのカメラを2つ搭載したデュアルカメラ仕様となっています。これにより、iPhone 7では対応していない特殊な撮影機能を実現しています。
●デュアルカメラのレンズ構成
28ミリ相当の広角レンズ(左)と56ミリ相当の望遠レンズ(右)を搭載しています。広角側はiPhone 7と同じくF値が1.8ですが、望遠側はF2.8となっています。
●光学ズームとデジタルズームの融合
写真撮影時には広角と望遠を切り替えて2倍の光学ズームができるほか、5倍のデジタルズーム機能を組み合わせることで最大10倍のデジタルズームを実現しています(iPhone 7は最大5倍のデジタルズームのみ)。ビデオ撮影でのデジタルズームは最大6倍です。カメラアプリ画面の[1x]と書いてある丸をタップすると2倍の光学ズームに切り替わり、丸を長押ししてスワイプすると、10倍のデジタルズームに調整することができます。
●一眼カメラ&単焦点レンズ並みの写真が撮れる
iPhone 7プラスならではの機能として、背景をきれいにボカして被写体を際立たせる「被写界深度エフェクト」が発表されました。通常はセンササイズの大きな一眼デジカメなどで行う撮影効果をiPhoneカメラで行う驚きの機能です。
●マシンラーニングで被写体を認識
撮影時に2つのカメラで被写界深度を測定し、その違いを計算してボケなどのエフェクトを与える仕組みですが、機械学習(マシーンラーニング)で被写体の輪郭を認識するという高度な処理を行っています。ポートレートモードでは顔と人体を検出します。
●ライブビューでの確認も可能
撮影時にはライブビューで被写界深度エフェクトの効果を確認しながら最適な設定で撮影できます。この新しいエフェクトは年内に無償でアップデートが提供開始されて利用できる予定です。