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[PART 2]万全の準備で安心安全のアップデートを

著者: 小平淳一

[PART 2]万全の準備で安心安全のアップデートを

古いアドビ製品は要注意

シエラは数多くの新機能を搭載した、魅力あふれる新OSです。しかしその一方で、シエラで廃止になってしまった技術や機能もあり、今まで使っていたソフトが使えなくなってしまう懸念も出てきます。特にバージョンの古いソフトを使用する必要があるという人は、その点に注意してアップデートを見極める必要があるでしょう。

中でも影響が大きいのは、JA VA6のサポート廃止です。OS Xエルキャピタンでは非推奨ながらもユーザ自身でインストールが可能でしたが、シエラではついにインストールが不可能になりました。具体的には、これにより「アドビ・クリエイティブ・スイート6(CS6)」以前のアドビCS製品がインストールできない、または動作しなくなる可能性が出てくるのです。

仕事の兼ね合いで旧バージョンのアドビCSを使っている人は多いと思いますが、アドビのフォーラムではアドビのスタッフがCS6はシエラは動作サポート外と表明しており、今後もシエラ対応アップデータが登場する見込みは低いでしょう。中には動作するソフトもありますが、全ての機能が問題なく動作する保証はないため、アドビCS製品を業務で使っているユーザは慎重に導入を検討しましょう。

古いアドビCS製品は、インストーラが動作しなかったり、すでにインストール済みのソフトも正しく動作しない可能性があります。

映像関連にも影響

また、同じく大きな影響を与える要因になるのが、クイックタイム(QuickTime)技術の廃止です。クイックタイムは、動画をはじめマルチメディアコンテンツの制御を司っていたMacの基盤技術でしたが、現在はiOSにも採用されているAVKitやAVファウンデーションといった技術がMacのメディアコンテンツ制御の核となっています。開発者向けには以前から新技術への移行が呼びかけられていましたが、ついに、シエラになって旧来のクイックタイムで使われていたAPIが大幅に削除されました。

これにより、動画の再生や編集を行うソフトが正しく動作しない可能性が出てきます。最新のソフトであれば影響は少ないと考えられますが、やはり古いバージョンの映像編集・再生・圧縮ソフトを使っている人は、調べてからアップデートしましょう。

そしてもう1つ、シエラではPPTPを利用したVPN接続が廃止されました。PPTPというプロトコルは非常に古い接続方式であり、脆弱性の面からすでにエルキャピタンの時点で非推奨になっていました。仕事でVPN接続を行っている人は、使用している接続方式をしっかり確認しておきましょう。

そのほかにも、周辺機器のドライバなどが動かなくなるといった可能性も考えられます。しかもこうした対応/非対応の問題は、アップデートしてしばらくしてから気づくことも多いのです。シエラへのアップデートの際は、万が一のときに備えて、旧バージョンに戻せるよう万全の準備をしておきたいものです。

古いクイックタイムプレーヤのAPIを使っている動画再生ソフトや動画編集ソフトは、シエラで動作しない可能性があります。

シエラとiOS 10は、ともにPPTPによるVPN接続が不可能になります。アップルはサポートページ上で代替のVPN接続方式を案内しています。

 

シエラのアップデート前に確認しておきたい5つのポイント

1・Macはシエラ対応?

シエラは、OS Xエルキャピタンよりもハードウェア条件が上がっています。エルキャピタンでは、2007~2008年以降に発売されたMacが対応条件でしたが、シエラでは2009~2010年以降に引き上げられました。また、自動ロック解除やハンドオフなど、使用によってハードウェア条件が異なる機能もあります。

MacOS シエラのハードウェア条件

MacBook(Late 2009以降)/MacBook Pro(Mid 2010以降)/MacBook Air(Late 2010以降)/Mac mini(Mid 2010以降)/iMac(Late 2009以降)/Mac Pro(Mid 2010以降)

自分のマシンがどの年代のMacなのかは、[アップルメニュー]→[このMacについて]から確認しましょう。

2・ソフトはシエラ対応?

シエラに正式対応を謳っていないソフトでも、支障なく動作するケースもずいぶんあります。また、現時点で動作に不具合のあるソフトでも、しばらく待てばメーカーが対応アップデータをリリースする可能性があります。ただし、なんらかの事情で古いバージョンのソフトを使い続ける必要のある人は、動作の有無を事前に確認しておきましょう。

「RoaringApps」というWEBサイトでは、ソフトの対応状況をチェックすることができます。メーカー公式の発表ではありませんが、アップデート時の参考になるはずです。

3・ディスクユーティリティで起動ディスクの検証と修復

かつて、一部の環境でOSのアップデートが途中で失敗してしまう現象が発生したことがあり、その際の対策として有効だったのがディスクユーティリティによる起動ディスクの検証と修復です。万が一に備えて、事前に起動ディスクの検証を行っておくといいでしょう。

エルキャピタンなら、復旧ディスクなどから起動しなくても起動ディスクの検証と修復が行えます。ディスクユーティリティは、[アプリケーション]→[ユーティリティ]フォルダにあります。

4・タイムマシンバックアップを忘れずに

事前準備の中でも特に重要なのが、タイムマシンによるバックアップです。万が一アップデート時に問題が発生した場合や、アップデートしてからエルキャピタンに戻したくなった場合などに備えるもっとも有効な対策だといえます。シエラへのアップデート前は、起動ディスクを丸ごとバックアップすることを強くおすすめします。

アップデート前は、普段のバックアップで除外している項目も含めて、一度完全なバックアップを取っておきましょう。

5・トラブルに備える

アップデートの前に、実行できるタイミングかどうかをいったん考えてみましょう。通常であれば、シエラへのアップデートは数十分で完了しますが、トラブルが発生してアップデートが完了しない可能性もゼロではありません。しばらく操作不能になっても構わないタイミングかどうかを考え、急ぎで必要になるかもしれないデータは別途どこかに退避させておくなどの準備を整えましょう。

仕事で必要になりそうなデータは、USBストレージにとっておいたり、アイクラウドドライブのようなクラウドストレージに移動させておくと安心です。