時計として地位を確立
かねてから登場が噂されていたアップルウォッチの新モデルが、ついに発表されました。「アップルウォッチ・シリーズ2」と名づけられた新モデルは、50メートルの防水性能、内蔵GPS、より高速なCPU、スイカ(Suica)も使えるアップルペイなどを備え、前モデルを大きく上回る基本性能を身につけました。
中でも防水性能とGPSの搭載は、アクティブな生活を送る人にとって、とりわけ高い魅力となるでしょう。「防沫性能」に過ぎなかったこれまでのアップルウォッチと比べ、シリーズ2では腕につけたまま泳げるほどの高い耐水性能を備えています。日常的な生活で水に濡れることを心配する必要がなくなったのはもちろん、水泳をしながら消費カロリーを測ったり、ラップタイムを計測することができるようになります。また、GPSの搭載によって、iPhoneを一緒に持ち歩かなくてもランニングやウォーキング時の移動距離やペースを計測することも可能です。アップルウォッチはこれまでもスポーツウォッチとしての側面が注目されていましたが、シリーズ2になってその立ち位置がいっそう強まったといえます。
とはいえ、アップルウォッチはハードなワークアウトをこなすアスリートだけのものではありません。日常的な暮らしをサポートするという面でも、シリーズ2は心強い進化を遂げています。より明るくなった画面はどんな場所でも見やすく、また新しいデュアルコアプロセッサ「S2」によってどんなアプリもより高いレスポンスで動作します。新しくなったウォッチOS 3によって使い勝手もよくなり、文字盤のバリエーションも増えました。
さらに注目すべきは、アップルペイへの対応です。10月からは日本でもアップルペイが始まりますが、新しいアップルウォッチ(シリーズ1を除く)があれば、スイカを登録して自動改札を通ったり、クレジットカードや電子マネーを登録して店頭での買い物に利用することができます。新しいアップルウォッチを使えば、誰もがよりスマートで、心地よく健康的な毎日が送れるようになるわけです。
[ ラインアップ ] 新モデルの登場により製品体系を一新
ラインアップは5種類
シリーズ2の登場に伴い、アップルウォッチのラインアップは全体的な見直しが行われています。メインストリームとなる「シリーズ2」、ホワイトセラミックという新しいケースを採用した「エディション」、そして、コラボモデルの「エルメス」と「ナイキ+」、そこに旧モデルの基本性能を引き継ぎながらCPU性能をアップさせた「シリーズ1」を加え、全5種類の製品ラインアップになりました。
すべてに共通しているのは、38ミリと42ミリ、2種類のケースサイズを選べる点。ケースの素材やバンドの種類は、シリーズによって選べるものが変わります。
まず、シリーズ2では、アルミニウムとステンレススチールの2種類からケースを選べ、バンドも複数の種類を選べます。一方、エディションのほうは、ホワイトセラミックとホワイトのスポーツバンドの組み合わせのみ。これまであった18Kゴールドはなくなりました。ホワイトセラミックのケースは、パールのような輝きを持つ高級感のある仕上がりで、アップルによればステンレススチールの4倍の硬度を持つといいます。
そして新たに登場したナイキとのコラボモデル「ナイキ+」は、何列も通気孔の空いたオリジナルバンドが特徴です。ナイキ+専用の文字盤も用意されているほか、「ナイキ+ランクラブ」というアプリもプリインストールされています。
Apple Watch Series 2
【価格】3万7800円~
シリーズ2では、アルミニウムとステンレススチールの2種類からケースを選べます。アルミニウムの場合はシルバー/ゴールド/ローズゴールド/スペースグレイの4種類、ステンレススチールはステンレスカラーとスペースブラックの2種類が用意されています。
Apple Watch Edition
【価格】12万5800円~
シリーズ2と同様の基本性能を備え、さらに新素材のホワイトセラミックをまとったエディション。滑らかな光沢が見た人を魅了します。しかもステンレススチールに比べて軽いのも魅力。42ミリケースで比較すると、ステンレススチールが52.4グラムなのに対し、ホワイトセラミックは45.6グラムです。
Apple Watch Hermés
【価格】11万8800円~
エルメスとのコラボモデルも、シリーズ2と同じ基本性能を備えて刷新されました。ケースはステンレススチール製、バンドは精巧に手作りされた4タイプのレザーバンドが用意されています。また、すべてのモデルにエルメスオレンジのスポーツバンドが付属します。
Apple Watch Nike+
【価格】3万7800円~
Nike+は、スペースグレイ/シルバーの2つのアルミニウムケースと、4色のNikeオリジナルスポーツバンドが用意されています。オリジナルのスポーツバンドはフルオロエラストマー製で、さらに通気穴を何列も並べてたことで軽量化と通気性の向上を図っています。GPSなどの基本性能はシリーズ2と同様です。10月下旬発売予定となっています。
Apple Watch Series 1
【価格】2万7800円~
シリーズ1は、従来のアップルウォッチ・スポーツとほぼ同じ基本性能。GPSや耐水性能は備えておらず、ディスプレイの明るさも従来どおり。ただしCPUはシングルプロセッサのS1からデュアルプロセッサのS1Pへと進化しました。そしてなにより価格がかなり手頃になっているのが特徴で、以前のスポーツは4万2800円からだったのに対し、シリーズ1では2万7800円から購入できます。「とりあえずアップルウォッチを使ってみたい」という人も手の出しやすい価格だといえるでしょう。
[ オーバービュー ] デザインを踏襲し、最新のテクノロジーを凝縮
詰め込まれたテクノロジー
アップルウォッチシリーズ2は、デザイン面では前のモデルとほとんど変わりません。新たに登場したホワイトセラミックのエディションを除けば、ケースやガラスの素材も前モデルと同様です。また、バンドをつける部分の仕組みも変わっていないため、前モデルのバンドをそのままつけることができます。
外観上で変わっている点といえば、厚みが0.9ミリほど増えていることが挙げられます。前モデルをつけていた人であれば、若干存在感が増していることに気づくのではないでしょうか。また、重量も前モデルに比べると少しだけ変わり、42ミリのアルミケースモデルで比較すると4.2グラム増えています。ジョギングなどで身につけている人なら、意識できる違いとして感じられるかもしれません。
一方、42ミリのステンレススチールモデルは以前から50グラムあり、シリーズ2になってわずか2.4グラム増加したにすぎません。こちらに関しては、変わったことに気がつく人はほとんどいないのではないでしょうか。
厚さや重さが変わった要因には、GPSの搭載や防水のための仕組みなどさまざまなものが考えられますが、中でも大きな要因になるのがバッテリです。スペック上は、バッテリ駆動時間は新旧ともに18時間と変わりませんが、実はバッテリ容量は前モデルより23%増加しています。より高速なCPUやGPSを搭載しながらも同じ駆動時間を実現するため、バッテリ容量が増えたと考えていいでしょう。
さて、そのCPUについてですが、シリーズ2ではデュアルコアプロセッサのS2が搭載されました。このCPUは、アップルによると前モデルのS1チップに比べ50%高速に、またチップに内蔵されているGPUは2倍高速だといいます。この違いは実際にさまざまなシーンで実感できるレベルで、アプリの起動などもより高速になっています。さらにこのCPUの向上により、これまで以上にリッチなサードパーティ製アプリも登場してくるでしょう。
そして、新旧アップルウォッチのもっとも大きな違いは耐水性能です。シリーズ2では、50メートルの水深にも耐える性能を備えています。この耐水性能を手に入れるために行ったユニークな試みが、スピーカの水抜き機構です。新しいアップルウォッチは水から上がったとき、ビープ音を鳴らしてその振動で水を外部に押し出す機構を備えています。まったく新しい防水のためのアプローチです。
このように、アップルウォッチはこれまでとほぼ同じコンパクトなケースの中に、最新のテクノロジーとアップルならではの工夫が凝縮されているのです。
●50メートルの耐水を実現
水泳で腕にかかる水圧に耐えるためには、50メートルの耐水性能が必要。そのためシリーズ2ではスピーカを再設計して、ビープ音で水抜きをするという新しい機構を取り入れました。
●わずかに厚みは増
写真左がシリーズ2、右が前モデルです。比べると、厚みが0.9ミリ増加したのがわかります。これにより存在感が若干増えましたが、それはあくまで前モデルと比べての話。日常的な使用で不満を抱くレベルの厚さとはいえないでしょう。
●サードパーティにもGPS解放
内蔵GPSはサードパーティ製アプリでも利用できます。イベントでは内蔵GPSを利用したハイキングアプリ「ViewRanger」のデモが披露されました。
●水泳用ワークアウトが追加
耐水性能を備えたことにより、シリーズ2では水泳のワークアウトが追加されました。スイミング時の消費カロリーや移動距離などが計測できます。プール用とオープンウォーター用(海や湖など)の2種類が用意されています。
●水泳のストロークを徹底検証
アップルは専用のシミュレータを使い、1日24時間、数週間に渡って水泳のストロークをシミュレートしたといいます。
●バッテリが増量
バッテリは、4.35ボルト、1.03Whrで容量273mAhのものを搭載。前モデルに比べ23%増加しています。
●待望のGPS内蔵
シリーズ2ではGPSを内蔵しています。このため、iPhoneを持ち歩かなくても自分の移動距離などを測定できるようになりました。最低限の装備でランニングなどのフィットネスをすることができるのです。
●新型プロセッサを搭載
シリーズ2はデュアルコアを搭載した統合プロセッサ「S2」を採用。CPU性能は前モデルより50%高速になり、GPUは2倍向上しました。
●ディスプレイがより明るく
また、シリーズ2では画面がより明るくなりました。写真左がシリーズ2、右が前モデルです。前モデルが450ニト(nit)なのに対しシリーズ2では1000ニトを実現。アップル製品の中でもっとも明るいディスプレイだといいます。
●より細かな動作を実現
CPUの向上により、アプリはより細かなアニメーションを実現できるようになります。デモに登場した天体観測アプリ「Night Sky 4」では60fpsのアニメーションが可能になるといいます。
●アップルペイにも対応
日本国内でのアップルペイによる支払いにも対応します。店舗や自動改札などでの支払いにはシリーズ2が必要になります(前モデルやシリーズ1では利用できません)。
●付属物が変更
シリーズ2には、前モデルでは同梱されていなかった、5WのUSB電源アダプタが付属します。性能等はiPhoneなどに付属しているものと同じようです。また、付属の磁気充電ケーブルは、前モデルが2メートルだったのに対して1メートルと短くなりました。
[ watchOS 3 ] 新しいOSで心も体ももっと健康に
待望のバージョンアップ
シリーズ2の登場に合わせて、OSも最新の「ウォッチOS 3(watchOS 3)」がリリースされました。ウォッチOS 3はシリーズ2だけでなく、すべてのアップルウォッチで無料アップデートが可能です。
ウォッチOS 3の特徴は、まず健康やアクティビティをサポートする機能がさらに充実したことが挙げられます。「アクティビティ」アプリでは結果を友だちと共有してモチベーションを高めることができるようになったほか、新搭載の「呼吸」アプリでは深呼吸を促してリラックス効果が得られるようになりました。そのほか、「ワークアウト」アプリでは新たに車椅子使用者向けのワークアウトも追加されています。
そしてもう1つの特徴は、さらなる使い勝手の向上です。中でも象徴的なのが、「ドック」という新しいインターフェイス。アップルウォッチにたくさんのアプリをインストールしている人などは、このドックを使うことで使用頻度の高いアプリをすぐに取り出せます。
また、時計本来の役割において重要な「文字盤」もバリエーションが増えました。文字盤の変更は、これまでのようにガラス面を強く押し込んで選ぶ以外に、横にスワイプするだけでも変更ができます。シチュエーションや気分に合わせて、いつでも素早く文字盤を変えられるのがうれしいポイントです。
新しく追加された文字盤。左から、「アクティビティデジタル」「アクティビティアナログ」「ミニーマウス」「数字」。「数字」の左上にある大きな数字は、数種類からフォントを変更でき、「アクティビティアナログ」では3つの輪のレイアウトを変更できます。
●アクティビティを共有
また、ウォッチOS 3の「アクティビティ」では、自分のアクティビティの結果をほかの人と共有することができます。共有相手の設定は、iPhoneの「アクティビティ」アプリで行います。
●ホームキットデバイスを操作
ウォッチOS 3では、「ホーム」アプリも追加されました。ホームキット対応のデバイスをアップルウォッチから操作できるようになります。
●緊急時にはSOS
また、電源ボタンを長押しすることで、SOS発信のボタンも表示されます。110番通報や119番通報などを素早く行えるほか、登録しておいた緊急連絡先にもメッセージが送れます。
●呼吸を整えるアプリ
新たに加わった「呼吸」アプリ。図形がスムースに大きさを変え、それに合わせて深呼吸することでリラックス効果を促します。定期的に呼吸アプリを開くよう、通知でも教えてくれます。
●進化したメッセージがここにも
「メッセージ」も進化しました。ステッカーを貼り付けたり、「おめでとう」と伝えることで画面全体に紙吹雪のアニメーションが舞い散る効果を楽しんだり。新しい効果は、ウォッチOS 3同士やiOS 10、macOSシエラとのやりとりで完全再現されます。
●ドックが追加
ウォッチOS 3から加わった新しいインターフェイス「ドック」。サイドボタンを押すことで現れ、よく使うアプリに素早く切り替えられます。
●Macのロックを解除
ウォッチOS 3にすると、パスワード入力を行わずにMacの画面ロックを解除する「自動ロック解除」が利用できます。使用するにはシエラをインストールした2013年以降発売のMacが必要です。