アップルペイは、アップルが提供する電子決済サービスです。米国では2014年10月からサービスが開始されていましたが、米国に遅れること2年、日本でも今年10月後半よりサービスが提供されることになりました。
アップルペイは、従来行われてきた電子マネーの「タッチ決済」を、iPhoneまたはアップルウォッチで可能にします。日本にはさまざまな電子マネーがありますが、その筆頭に挙げられるのがJR東日本の「スイカ(Suica)」でしょう。アップルは、日本でのアップルペイ開始に先立ち、このスイカ対応を強力に推し進めたとみられています。
スイカに対応したアップルペイでは、現在スイカカードで行われている「改札にタッチして乗車」が、iPhoneまたはアップルウォッチで可能になります。さらに、スイカを使う店頭での買い物も、スイカカードの代わりにiPhoneやアップルウォッチが使えます。つまり、スイカカードを持たなくても、同様の利用体験をアップルデバイスだけで行えるようになるのです。
アップルペイがカバーする電子マネーは、スイカだけではありません。JCBの「クイックペイ(QUICPay)」、NTTドコモの「iD」にも対応しており、それらに紐付くクレジットカードやプリペイドカードについても、その機能をアップルペイに取り込むことが可能です。よって、クイックペイ、iDのマークがある店舗では、クレジットカードなしにアップルデバイスだけで決済できるようになるのです。
日本でアップルペイが可能になった背景には、iPhone側が非接触IC規格としてほぼ日本独自の「フェリカ(FeliCa)」をサポートするようになったことがあります。米国では、非接触決済の9割を占めるといわれているアップルペイ。はたして日本人の生活を変えるような体験を提供できるのでしょうか。気になる使い方から、セキュリティ問題、競合システムとの比較などを通じ、その実力を詳しく見ていきましょう。
【Point 1】デバイスごとに異なるApple Payの活用シーン
まずは、アップルペイを活用する場面とデバイスの関係について確認しましょう。実は、アップルペイはiPhoneやアップルウォッチの世代によって、使える機能が異なります。ある程度古いデバイスでもアップルペイを利用することができますが、すべての機能を使えるわけではありません。アップルペイそのものは、iOS 10をインストールできるiPhone 5以上のデバイスで利用可能です。しかし、そのうちすべてのモデルで利用できるのはオンライン決済機能のみ。リアル店舗でのタッチ決済はiPhone 7/7プラスか、アップルウォッチ・シリーズ2のみとなります。本体だけでタッチ決済を行う場合はiPhone 7以降を、それ以外のデバイスではアップルウォッチ・シリーズ2をリンクさせる、と覚えましょう。
タッチ決済可能なデバイスを持っている場合、アップルペイにクレジットカードおよび電子マネーの情報を追加すれば、アップルデバイスだけで決済することができます。スイカ、 クイックペイ、iDのマークがついた店舗であれば、どこでも利用可能です。ただし、たとえばスイカには対応していてもiDには対応していない店舗では、iDしか登録されていないアップルペイで支払うことはできません。支払い時には、アップルペイというだけではなく、どの決済手段を利用するのか指定する必要があるからです。
アップルペイ対応の電子マネーであるスイカは、JR東日本、および提携している会社の交通機関に乗る際にも利用できます(IC対応自動改札を使う場合)。電子マネーとしても、コンビニを中心に対応店舗数が多いので、都市部ではタッチ決済可能なアップルデバイスさえあれば、移動も買い物も困らなくて済むでしょう。
なお、前述のようにiPhone本体が非対応でも、アップルウォッチ・シリーズ2があればスイカなどのタッチ決済が利用できます。ただし、iPhone 7とアップルウォッチ・シリーズ2の組み合わせは要注意。スイカ側の仕様上の制限でもあるのですが、同じスイカの情報を物理的に2つ以上のカード上に保存できないのです。iPhoneとアップルウォッチのどちらもタッチで改札を通れるようにしようと思ったら、それぞれに1枚ずつスイカを作って登録しなければなりません。
なお、日本でタッチ決済できるiPhoneは、日本国内で販売されたiPhone 7/7プラスのみ。これは日本のアップルペイだけが、フェリカに対応しているためです。逆に、日本で購入したiPhone 7/7プラスを海外に持っていった場合も、現状は海外で使用できない可能性が高いです。ハード面では対応する機構が見受けられるので、ソフト側でリージョンを切り替える仕組みができれば、ゆくゆくは可能になるかもしれません。
Apple Pay対応デバイス一覧
フェリカに対応したiPhone 7とアップルウォッチ・シリーズ2のみがタッチ決済に利用可能です。アップルペイのタッチ決済には非接触ICのNFCチップが必要で、iPhone 6、6sもこれを搭載していますが、それらはフェリカに対応していないので日本国内でのアップルペイ決済に使用できません。
日本でタッチ決済の代表格は、やはりスイカによる電車の乗降になるでしょう。フェリカならではの高速性を活かし、約1秒のタッチで改札を通過できます。
電子マネー決済に利用する場合は、レジ前に置いてある端末にiPhoneをタッチします。支払い方式によってタッチの仕方が異なる点に注意が必要です。
アップルウォッチ・シリーズ2でもスイカは利用可能です。タッチしやすいほうの腕に装着しておくと、読み取りがスムースにできるでしょう。