見せる人/足立 光
日本マクドナルド株式会社上席執行役員マーケティング本部長。P&Gのマーケティング部に入社し、ブーズ・アレン・ハミルトン、及びローランドベルガーを経て、シュワルツコフヘンケルに転身。2005年には同社社長に就任。2007年よりヘンケルジャパン株式会社取締役シュワルツコフプロフェッショナル事業本部長を兼務。2015年より現職。【URL】 http://www.mcdonalds.co.jp
足立 光さんのiPhoneインストールされているアプリ McDonald's Japan/マックデリバリー/Starbucks JP/Krispy Kreme for APP/BurgerKing
直感でヒットを予想
先日、スマートフォン向けゲームアプリ「ポケモンGO」がマクドナルドと提携したことが話題となりました。今回は、その提携を画策した敏腕マーケッターである日本マクドナルドの上席執行役員・マーケティング本部長の足立光さんを訪問。まずは足立さんにポケモンGOとマクドナルドの提携について聞いてみました。
「何でポケモンGOがヒットすると思って、どうやって社内で企画を通したんですか?」(美崎)
足立さんいわく、マクドナルドではポケモンとコラボすること自体は従来もやっていましたが、今までは「ハッピーセット」というセットメニューを買ったお客さんへの“オマケ”としてオモチャなどをプレゼントするというものでした。しかし、ポケモンGOの場合、お客さんはハンバーガーなどを買う必要がないため、マクドナルドで食事をするお客さんの数が未知数という問題があったのです。
ですが、足立さんは株式会社ポケモンを訪れたときにポケモンGOのプロトタイプを見せてもらい、「これはポケモンの世界観がリアルに再現されているからヒットする」と直感的に思ったそう。そのあとは過去の似た施策の数字を集めて分析し、ゲームやポケモンの世界観がわからない社内の人間でも理解できるように判断材料を作り、プロジェクトを推し進めたそうです。
さて、足立さんのiPhoneを見せてもらうと、流行のアプリやゲーム、競合他社のクーポンアプリなどが満載でした。
「直感が働くには経験が大事で、足で情報を稼ぐのは基本です。そのうえでロジックもしっかりと組み立てるのです」(足立)
足立さんにマクドナルドのクーポンアプリについて聞いてみました。マクドナルドのアプリは、数あるクーポンアプリの中でもっともよくダウンロードされ、利用されているそうです。アプリ内で配信されているクーポンをレジのスタッフ見せることで、ハンバーガーやポテトなどが割り引きになる仕組みになっています。
実は私、ポケモンGOにハマる前はあまりマクドナルドで食事をしなかったのですが、マクドナルドがポケモンGOの「ポケストップ(アイテムを入手することができる場所)」や「ジム」になっているため、ついついマクドナルドで食事をすることが多くなりました。そのときにこのクーポンアプリの存在を知っていれば…。はい、これから使います。
経験に裏づけされた判断力
ヒットを生むには、自らの価値観で未来を読む判断をしなければなりませんが、その源泉が“経験”。そして“実証”です。
足立さんはポケモンGOの前身的アプリの「イングレス(Ingress)」のユーザでもあったそうですが、イングレスがコラボしたローソンなどのキャンペーンも調査済みで、判断材料の1つにしていました。経験によって裏づけされ、さらにそこにデータを積むと強い。
私自身iPhoneアプリは相当試していますが、ポケモンGOのような指の動きをするアプリはあまりないんです。iPhoneの画面を下から上になぞる、というモンスターボールを投げるときの動作は、普段はコントロールセンターを出すときくらいにしか使いませんよね。街中でポケモンGOをやっている人を見れば、その動きだけでわかってしまうというのはある意味画期的なことだなぁと思いつつ、日々街中のポケモンGOユーザを眺めています。
普段ゲームをしてこなかったであろう人たち、幼稚園くらいの子どもや年配の方にもポケモンGOは利用されています。これってある意味、GPSを使ったスマートフォンの位置情報機能を、もっとも世の中に認知させたんだと思います。とすると、ポケモンGOユーザに対して、新しい機能やGPSの機能を異なる使い方で提案していくことが生まれそうな予感がします。
ポケモンGOの大ブーム、そしてその可能性にいち早く気づいたマクドナルド。次の展開も楽しみでなりませんね。
マクドナルドの公式アプリを利用すると、アプリ内で配信されているクーポンを店舗でレジのスタッフに見せるだけでハンバーガーなどが割り引きされます。クーポンアプリの中でもっとも利用されているアプリだそうです。
iPhoneを社内用とプライベート用で2台所有している足立さん。流行アプリも必ずチェックしているようで、話題のアプリ「スノー(SNOW)」などもインストールしているそうです。
見る人/美崎栄一郎
『iPhoneバカ』『iPadバカ』などの著者。札幌から福岡までアップルストア全店舗、ソフトバンク本社などでも講演したiPhone大好き人間。『「結果を出す人」は、エクセルをどう乗りこなしているのか?』(学研パブリッシング)が発売されました。【URL】http://www.facebook.com/a16misaki