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掲載日:

木村 桂@IBM/西山正一@Adobe

木村 桂@IBM/西山正一@Adobe

STORY Ⅰ @IBM

【URL】https://www.ibm.com/jp-ja/

木村 桂 Kei Kimura

2015年に日本アイ・ビー・エムに入社、クラウド事業にてテクニカルセールスおよびエバンジェリストを担当。「クラウドの時代になって、エンジニアのアイデアを形にして公開しやすくなった」を公私混同しながら体現中。

「エバンジェリストであることとマンホールの魅力」

「エバンジェリスト」という肩書を耳にしたことはあるでしょうか? "Evangelist"、伝道師とか宣教師と訳されます。僕の学生時代に宣教師といえば「フランシスコ・ザビエル」、日本に初めてキリスト教を伝えた人です。

最近のIT業界にもエバンジェリストという肩書を持った人を多く目にするようになりました。この場合のエバンジェリストは特定の製品やサービスをお客様やユーザに魅力と併せて紹介する人です。その製品を提供する企業のエンジニアだったり、社外にいる製品の大ファンの人だったりします。基本的にその製品が大好きで、魅力たっぷりに紹介してくれます。

私は日本IBMで「IBM Bluemix」というクラウドサービスのエバンジェリストをしています。実は入社前からこのサービスを使っていて、それまでのクラウドサービスとは違う魅力にハマり、ブログなどで勝手に情報発信をしたり、偉そうにIBMに意見を出したりして…気がついたら中の人になっていました。

私は職歴のほとんどをソフトウェアエンジニア畑で過ごしてきました。プライベートでもWEBサービスを開発して個人で運用しています。オープンソース製品などの「興味はあるけど、業務では扱わない」ような技術はプライベートで運用するサービスで勉強して使っています。そうすることで特定製品や特定技術に捕らわれない、広い視野を身につけようと努力しています。そんなサービスの1つが(自称)世界最大の位置情報付きマンホール蓋情報サイト「マンホールマップ」(http://manholemap.juge.me/)です。

マンホールの魅力を話し始めると長くなるので詳しくはググっていただきたいのですが、地方自治体ごとに特徴のある日本のマンホール蓋のデザインは界隈で「地上の星」と呼ばれるほど芸術的で、最近はツイッターでも多くの人が写真と共に共有しています。その蓋が「どこにあるのか?」をマップ上でもわかるようにして共有できるようにしたサービスがマンホールマップです。当初は単純な検索程度の機能しか付けていなかったのですが、利用者の増加に併せて多くの要望をいただくようになり、人気投票やゲーミフィケーション的な要素も併せて提供するようになりました。

また、このサービスの機能の一部はREST API化して公開しています。その機能を使って第三者がマンホールアプリケーションを作ることもできます。実はiPhone版のマンホールマップアプリケーションは私が作ったものではなく、この公開APIを使って作られたものだったりします。

このような「WEBサービスの機能をAPI化して公開」し、「第三者がAPIを使って、新しいイノベーションを起こす」という考え方はIBM Bluemixの基本概念の1つでもあるAPIエコノミーやマイクロサービスといった考え方とも一致しています。プライベートでの趣味を業務に結びつけることが良いのか悪いのか自分ではよくわかりません。ただ、とりあえず仕事を楽しくすることには役立っています。

 

STORY Ⅱ@Adobe

【URL】http://www.adobe.com/jp/

西山正一 Nishiyama Shoichi

2001年にアドビ システムズに入社。WEB製作アプリやDTPアプリの製品担当を経て、現在はCreative Cloudのエンタープライズマーケティング部門を統括。新しいガジェット類にはすぐに飛びつくタイプ。食いしん坊でお酒呑み。

「デジタル世界におけるITイクメンのジレンマ」

授かったのが40歳を超えてからということもあり、子どもがかわいくて仕方がありません。こんなガジェット野郎の家に生まれてきてしまったため、幼い頃からギターを持たされたり、タブレットでお絵描きさせられたり、おデコにGoProを取り付けられたりしています。

娘よ、いつも付き合ってくれてありがとう。

そんな娘のお気に入りの1つがYouTubeです。御多分に漏れず我が娘もかわいい動物や国民的人気のパンなどをモチーフにした子ども向けキャラクターが大好きで、YouTubeではそのキャラクターのアニメはもちろん見られないのですが、そのキャラクターのおもちゃで遊ぶ動画や着ぐるみイベントの動画が山ほどアップされており、まだちゃんと文字も読めないくせにサムネール画像でお気に入りの動画を記憶し、YouTubeを華麗にサーフィンします。

娘は僕のタブレットでYouTubeを観るのですが、当然ながら僕のIDでログインしたまま利用します。つまり、娘の再生履歴と僕の再生履歴を元にデジタルセルフが形成されていきます。その結果、YouTubeは僕のことを「音楽ビデオとネコとおもちゃ動画が好きな45歳の男性」と判断し、(連載初回に書いた)Googleの広告設定にその情報を反映します。なので、ネコを飼っていないのにもかかわらずキャットフードの広告が表示されたりします。これって僕も迷惑ですが、せっかくターゲット広告を利用している広告主にとってはもっと迷惑な話ですよね。

このように、サービスの利用履歴をもとに、利用者が興味を持ちそうな情報を提供することを「レコメンデーション」や「パーソナライゼーション」と呼びます。デジタルセルフの情報がより多く、正確に蓄積されることでパーソナライゼーションの制度が上がる仕組みなのですが、一方でこのケースのように同じユーザIDを異なる人が利用すると、ほとんど役に立たない情報になってしまう可能性が出てきます。

娘に別のIDを持たせて、そのIDでログインさせて利用させてみよう!と思い立ったこともあるのですが、実はアメリカにはChildren’s Online Privacy Protection Act(通称COPPA)という法律があり、13歳以下の子どもの個人情報を取得することを厳しく制限しています。なのでGoogleやFacebookなどのアメリカに本社があるWEBサービスは13歳以下だと利用できないのです(アドビのCreative Cloudも本当は年齢を問わず使ってほしいところなのですが、COPPAに準拠して13歳以下の利用を制限しています。13歳以下のお子様は、ネット接続が不要なPhotoshop Elementsを使いましょう!)。

まだ判断力が乏しい幼い子どもをインターネットから守ろうという考えには激しく同意なので、日本でもCOPPAのような枠組みができると良いなと思います。一方で、精度の高いデジタルマーケティングを行いたい場合には頭の痛い話ですね。Googleさんは、広告設定の項目に子どもの有無や子どもの性別も入力可能にするとよいと思います。スマートフォンの普及やIoTデバイスがこの頭痛を解決してくれるのでは?と期待されているのですが、その話はまた次の機会に。