ボイスオーバーという魅力
アップル名古屋栄で行われたイベント「iPhoneのアクセシビリティ機能を活用して街へ出かけよう」では、星野史充氏が視覚障がい者の観点からiPhoneのアクセシビリティ機能を紹介した。
星野氏は、富士通製の音声アシスト機能つきスマートフォンのテスターをしていた経験を持つ。最初に買ったiPhoneは6だったそうだが、端末の操作性が似ていたため、それほど困ることはなかったそうだ。
iOSには、「ボイスオーバー」というアクセシビリティ機能がある。この機能を使うと、タッチした場所の項目が音声で読み上げられる。しかもボイスオーバーには「操作練習」という機能があり、星野氏はこの練習機能を繰り返すことで仕組みを理解できたという。
星野氏によると、iPhoneはボイスオーバーをオンにしていると、ロック画面の操作でも、これ以上先に操作を受け付けないことを違う音で知らせてくれるという。音によるフィードバックだけでも、操作に迷うことがないのだ。ボイスオーバーはほかにも、2本指で上側にスワイプすることで、ホーム画面にあるアプリを先頭から読み上げてくれる機能などがあり、視覚に頼らずに操作を行うための機能が充実していると説明した。
日常生活を支えるアプリ群
続いて、視覚障がい者の日常生活を手助けするアプリの紹介が行わた。
最初に紹介したのは、現在地情報を元に音声でさまざまな情報を教えてくれる「ブラインドスクエア(BlindSquare)」というアプリ。スポット情報サービス「フォースクエア(Foursquare)」のデータベースにアクセスし、使用者の現在地付近にあるカフェなどの施設を音声で教えてくれる。また、このアプリを使うことでタクシー乗車時でも移動状況を確認できるほか、マイプレイス機能を使用することで目的の場所に素早く移動することもできる。そのうえ、指定した目的地に移動した状況を事前にシミュレーションする機能まで搭載しており、これを使えば、その場所に移動した状態から、さらに別の場所に移動する方法まで事前に確認できる。
なお、星野氏はこのアプリを使ううえでの注意点として、建物の中と外とでは位置情報の精度に差があることも付け加えた。当事者ならではの実践的なアプリ紹介だ。
次に紹介したのは「てくてくナビ」というアプリ。音声とバイブレーションによって、向きや距離などを確認しながらナビ移動を行うことが可能になるという。
最後に紹介したのは、印刷物をカメラで撮影してその場で認識して読み上げる「iよむべえ」だ。このアプリでは、カメラで表示しているテキスト情報を認識・分析しながら読み上げてくれる。昔は、同様の機能を実装した専用のウィンドウズパソコンがあったそうで、そのアプリ版といったものなのだという。
GPS情報を元に周辺施設を教えてくれる「BlindSquare」。電車に乗っているときは次の駅をアナウンスしてくれるなど、多彩な機能を備える。
カメラで読み取ったテキストを読み上げる「iよむべえ」。文字を検出したときに効果音を鳴らすなど、撮影時点から手厚いサポートをしてくれる。
Siriも手助けの1つ
iPhoneは初期の頃からアクセシビリティを強く意識した設計になっており、改良を重ねてきたことで障がい者にとってかなり「使える」デバイスへと進化している。また、星野氏が紹介したように、障がい者の暮らしをサポートするアプリも充実している。
さらに星野氏によれば、Siriもまた、障がい者のiPhone操作を手助けしてくれる存在だという。Siriをうまく使いこなすことで、ジェスチャ操作で誤動作する確率を下げることが可能だという。
細かな部分では、まだiPhoneに不満を感じる部分もあるようだが(星野氏によれば、ネットバンキング利用時ではセキュリティとアクセシビリティの連動がうまく行われないことが課題だという)、今後も一つ一つ改良が加えられることで、iPhoneはあらゆる人々の暮らしをより手厚く支えるデバイスに成長していくはずだ。
【News Eye】
参加者から、iPhoneと富士通製ドコモらくらくホンのどちらが良いかという質問があった。星野氏は、iOSは、ボリュームコントロールなど、システムレベルでコントロールできるのがメリットだと述べ、一方のドコモらくらくホンは、声に対する反応速度などが優れていると説明した。