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Parallels Desktopの魅力と仮想化の「これから」を社長に直撃

著者: 氷川りそな

Parallels Desktopの魅力と仮想化の「これから」を社長に直撃

積み重ねられた進化

パラレルス(Parallels)は、8月23日にMac上でウィンドウズやリナックスなどをゲストOSとして動作させることができる仮想化ソフトウェアの最新版「Parallels Desktop 12 for Mac(以下、パラレルス・デスクトップ)」を発表した。これに際して本誌は、日本法人であるパラレルス株式会社代表取締役の下村慶一氏に直接インタビューできる機会を得た。

Macでウィンドウズを動作させる方法としては、アップル純正で提供されるウィンドウズ起動用ツール「ブートキャンプ(Boot Camp)」が有名だ。しかし、OSを切り替えるために都度再起動する手間や、使用するMacとOSの組み合わせの制約などから、期待するようなパフォーマンスが得られないなどという問題が散見しているのが実情である。

その一方でパラレルス・デスクトップが扱う仮想化の分野では、再起動でOSを切り替える必要がないだけでなく、同時に使用も可能だ。またそこで利用できるOSの自由度が高いのも魅力だといえる。そういった実績から、ユーザ数はこの10年で500万人を超える規模にまで成長しているのだという。

今回のアップデートでは、数多くのユーザフィードバックから、特に「使用感の向上」をキーワードに大きく改善が図られている。全体的なレスポンス向上だけでなく、人気の高い「コヒーレンスモード(ウィンドウズソフトがそれぞれOS X上でネイティブソフトのように動作する機能)」では、ソフト単位で「起動時にほかのアプリケーションウインドウを隠す」といったオプションが選べるようになったり、マイクロソフト・オフィスの持つ手書き機能「Ink」を利用できるなど機能面でのシームレスさ、使いやすさを念頭に入れた新機能が多い。

実行速度の向上はより良い体験に欠かせないものだが、それ以上に「よく使う機能の手間を減らす」というのも重要な使用感向上のソリューションだ。そこで、今回のバージョン12より提供が開始されたのが「Parallels Toolbox」というソフトウェア群。これはスクリーンショット(もしくはビデオ)の作成や、ファイルの圧縮、デスクトップにあるものを非表示にしたりといった「簡単にできたら便利な機能」たちを取りまとめたものだ。同様の機能を持つソフトウェアはほかにもあるが、1パックにして提供することでばらばらに探してくる手間をなくして必要なときにすぐに使えるようにする設計意図があるという。

パラレルス株式会社代表取締役・下村慶一氏。2013年9月に同社入社、2015年8月より現職。歴任した外資系IT企業の経験の中でも、起ち上げから事業拡大への実績が豊富で、エンタープライズおよびコンシューマ事業において20年以上の経験を持つ。

拓かれ続ける未来

進化と多様化が続く仮想化技術は、どこへ向かっていくのだろうか。その1つの答えが「クライアント仮想化」なのは間違いないのだという。

「ネットワークは今後ますます発展していきます。今はローカルに置かれていることの多いゲストOSも、ネットワークにあるサーバ上から直接読み込む『VDI』方式を取れば、個々人でシステムのメンテナンスを行う必要なく仮想環境を実行することが可能になります」(下村氏)

また、ソフトウェア単位での配信を行う「RDS」方式であればウィンドウズやMac、さらにはモバイルといったプラットフォームの制約なく同じソフトウェアを使用することも可能だ。これを実現する環境として「VMware Horizon」や「Citrix XenApp」、そして「Parallels Remote Application Server」といった製品群が今後スタンダードになるのは間違いなく、今後のメインビジネスとしてターゲット視野に入れているのだそう。

しかし、直近の問題としてはまだローカル環境下における仮想環境のニーズが多く求められているのが現状だと下村氏。特にMacはウィンドウズやリナックス、クロームといった多種多様なゲストOSと、ライセンス上Macでしか動作できないOS Xを同時に利用できる唯一のプラットフォームなのだ。

さらに、パラレルス・デスクトップはMac上で合法的に複数のOS Xを動作させることができるのも特徴だ。これは最新版のOSを本格運用前にテストするといった使い方もできるし、逆に古いバージョンのOSを入れることによって最新のハードウェア(とそこにバンドルされるOS)では動作しないような世代のソフトウェアを利用することも可能になる。これによって一部のハイエンド(プロ向け)ソフトにありがちな「ハードウェアを買い替えたいけれど、OSを最新版にしてしまうと手持ちのソフト資産が動作しなくなる」というジレンマを解消する手立てにもなる。このように仮想化技術がもたらす恩恵は時代に合わせて常に新しいニーズを満たしていくのだ。

パラレルス・デスクトップバージョン12の価格は、通常版が8500円(税込)。プロエディションが年間1万800円(税込)。ビジネスエディションが1年間1万円/本(税抜)より。そのほか、既存ユーザ向けの乗り換えプランも用意されている。【URL】https://www.parallels.com/jp/

バージョン12の新機能の1つが、20以上のツールやユーティリティがワンタッチで使えるアプリケーション群「Parallels Toolbox for Mac」の搭載だ。日本語へのローカライズに対応中だという。