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TITLE 19 幻の鳥ケツァール

著者: 鈴木陵生

TITLE 19 幻の鳥ケツァール

世界一美しい鳥。そう呼ばれる幻の鳥が、中米にいる。その美しさからか、古代アステカ文明では神の使いとして崇められ、現在はグアテマラの国鳥かつ通貨単位にもなっている。マンガ『火の鳥』のモデルも、この鳥なのだとか。もはや神話のようなその鳥の名は、“ケツァール”。

ぜひとも神話を目撃したいとやってきたのは“中米の楽園”コスタリカ。首都サンホセでケツァール情報を得た僕らは南へ70キロほど移動し、停留所もない山の中でバスを降りた。目の前には鬱蒼としたジャングル。いかにもな雰囲気だ。カメラを抱え、注意深く見上げながら、僕らは奥へと続く小道を進んだ。

随分歩いて日が傾きかけた頃、ジャングルの中に異様な集団を見つけた。皆バズーカのような望遠鏡を三脚に据えて、横一列に並んでいる。欧米人のツアー客のようで、中にはガイドらしき人も。ここだ。この場所にケツァールが現れるに違いない。僕らもこっそり列に加わり、三脚にカメラを据えた。

突然ガイドが皆に目配せをし、一本の木を指差した。そこには、鮮やかな色をした一羽の鳥が長い尾を揺らしていた。ケツァールだ。『火の鳥』のイメージそのまま、長い尾をなびかせて木々を飛び移る。そのたび僕らは、バズーカを抱え追いかける。まさに火の鳥を追いかけるマンガのストーリーのごとく、僕らはずっとケツァールを追って、右往左往していた。

鈴木陵生(Ryosei Suzuki)

映像作家。2011年より夫婦で世界一周を始める。旅の様子を発信する映像サイト「旅する鈴木」が、平成26年度文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に。2014年11月、DVD&Blu-ray「World TimeLapse」(KADOKAWA)をリリース。 【URL】http://ryoseisuzuki.com