3部構成で初心者もカバー
「Fabミニ四駆カップ」は3Dプリンタやレーザカッターなどのデジタル工作機械を使ってカスタマイズ(Fab)したミニ四駆で競うレースだ。すでに大会は過去2回行われており、第3回となる大会が2016年7月、品川にて行われた。
今年のイベントは、「カルFabクラス(最低1カ所のカスタマイズ)」と「マジFabクラス(タミヤ純正グレードアップパーツ使用不可の、フルカスタマイズ)」の2クラスのレースの前に、「カーデザイナーと作る初めてのFabミニ四駆ワークショップ」が行われる3部構成。レースはトーナメント制で、コースはミニ四駆の純正ユニットを使って構築されるが、極端な落差を持つ魔の下り坂などが待ち受けている。
昨年も前座的にその場でミニ四駆キットを組み立てて参加できるレースが行われたが、今回は、プロのカーデザイナーユニット「t-o-f-u」がデザインを手がけ、手製のバキュームフォーマ(真空成形機)で「量産」された3種の樹脂ボディから選んでデコレーションできるという内容へと大幅に進化。子どもも大人も、思い思いのカラーリングやラインストーンの飾り付けを行った愛機で、白熱のレースを楽しんだ。
CADを使いこなす小学生も
午後からスタートしたカルFabクラスでは、そのハードルの低さから親子での参加が目立つ一方、クラス名称とは裏腹にボディがフル3Dプリントされた車両も続々登場。かくいう筆者も、車両のアイデアがいろいろと湧いてくるので、本来であればマジFabクラスに出走できる車両を、あえてカルFabクラスでエントリーした。その「FA−1」という車両は、オートデスクの3DCAD・ソフト「フュージョン360」でボディ設計を行ったもので、筆者はこれが同アプリを使う初めての試みだったが、Fabミニ四駆を通じて新しい知識や経験が得られる良い実例となった。
中には、2週間でフュージョン360をマスターして自作のボディで参加したスーパー小学生もおり、見事にXYZプリンティング賞に輝き、賞品の3Dプリンタ、「ダ・ヴィンチ1.0プロ」を射止めていた。
筆者のカルFab車両は健闘したものの、FA−1は練習走行では何回もクリアしていた魔の下り坂でコースアウト。もう一台エントリーしていた「3Doodler 2号」も、隣のコースに飛び出して敗退。それでも前回よりも完走率をかなり高められたので、次回はぜひリベンジしたい。
Fabミニ四駆と教育
昨年、(たまたま)筆者が優勝したマジFabクラスには、まさに百花繚乱の車両が集結。今回は、モータの自作すら許される、ほぼ何でもありのルールに変更されたため、複数ユニットの連結でコースアウトを防ぐものや、コースの一部に設けられた赤外線LEDを感知してスピードを制御できたり、スマートフォンやタブレットからコントロールできるIoT指向のもの、さらにはコース脇の自転車を漕ぐことで車両の速度を調整するものなど、奇想天外な車両のオンパレードとなった。
これらのことからわかるのは、Fabミニ四駆が、STEAM教育(科学、技術、工学、芸術、数学の統合的教育)の要素を集約したジャンルに成長しつつあるという点で、これからは教材としての活用も考えられそうだ。
筆者のレース結果は、「ゴーズオン・ステープラー号」がかなり勝ち進んだが、惜しくもコースアウト。完走した「フウジン号」もダウンフォースの効き過ぎで遅くなって敗れ、マジFabクラスの優勝は「岩石スポーツ」という多面体ボディのマシンが勝ち取った。
限られたスペースでは紹介しきれないFabミニ四駆カップの魅力。来年は、読者の皆さんも含めて、さらに幅広い参加者と車両のアイデアに期待したい。
今年は優勝カップも豪華になり、最大6種類のマテリアルで一括造形可能なスーパー3Dプリンタ、「Stratasys J750」でフルカラー(CMYKW+クリア)出力されたものとなった。バナナやスイカの質感も超リアルだ。
形もメカもさまざまな、マジFabクラスの参加車両たち。手前右側の黄色いモデルが、以前本誌の連載でも制作過程を紹介した「ゴーズオン・ステープラー号(マジFab)」。ほかに出走したのは、プロペラの風力でダウンフォースを生む「フウジン号(マジFab)」(上部左)、3Dペンで制作した「3Doodler 2号(カルFab)」(上部右)、フュージョン360で設計した「FA-1(カルFab)」(上部中)。
【豆知識】
これまで年1回のペースで行われてきたFabミニ四駆カップだが、それでは待ち遠しすぎるという有志の手で、個別にミニレースを開く動きが生まれつつある。ゆくゆくは、本家ミニ四駆のジャパンカップのように地方予選を経て本戦に臨むような規模に発展するかも。