iPhoneが起こした革命
2007年6月に米国で初代iPhoneが発売されるまで、「スマートフォン」という言葉はブラックベリーのようなビジネス向けの携帯端末を指し、その市場はニッチな規模にとどまっていたが、iPhoneの登場でスマートフォンの定義が変わり、モバイル市場が急速に開花した。それからわずか9年、今年の7月末にiPhoneは累計販売台数10億台を達成した。
iPhoneは単一ブランドでもっとも売れている携帯電話だが、10億台という数字は携帯電話の枠を超えてコンシューマ製品の歴史の中で飛び抜けている。1990年代、2000年代に音楽プレーヤを使っていた人なら、ソニーのウォークマンや、あるいはiPodだってiPhoneに劣らずスゴい勢いだった、と思うかもしれない。だが累計販売台数を見れば、ウォークマンは4億2000万台(2014年3月末時点)以上、iPodは3億9000万台(2014年末時点)以上である。
創業から40年の歴史の中でアップルは数多くのヒット製品を生み出してきたがiPhoneのこれまでの販売総数は、2000年以降のMac、iPod、そしてiPadの合計販売台数をも上回る。
カメラやPC市場にも影響
巨大な携帯電話市場を土台にiPhoneは爆発的な成長を実現したが、10億台という数字を達成できたのはiPhoneが携帯電話以外の市場も破壊・再構築するプラットフォームだったからだ。たとえば、iPhoneはカメラでもある。写真共有サービス「フリッカー(Flickr)」にアップロードされた写真の撮影に使われたカメラの統計で、ここ数年iPhoneは2位以下を大きく離してトップを独走し続けている。マイクロソフトはウィンドウズ10で搭載デバイス10億台という目標を掲げているが、iPhoneはそれを単一ブランド製品で実現した。
iPhoneは携帯電話市場を変革し、さらに音楽・ビデオプレーヤ、カメラ、ネットデバイス、そしてコンピュータのベストセラー製品として、私たちの生活に大きな変化をもたらした。10億台達成に際してティム・クックCEOはiPhoneを「世界を変えた重要な製品の1つ」と表現している。
今日のペースが続けば、2020年には販売台数20億台に到達する。販売数だけが製品の価値を示すわけではないが、長い歴史の中で販売数を積み上げてきた他カテゴリの大ヒット商品と比べてみると、わずか9年で10億台を達成したiPhoneの社会的なインパクトを実感できる。
他のカテゴリのヒット商品
【自動車】フォルクスワーゲン・タイプ1(ビートル)
2150万台
高性能な小型大衆車として開発され1938年に生産開始、カブトムシのような形から「ビートル」という愛称で親しまれた。ドイツでの生産は1978年に終了したが、2003年にメキシコで最終車両が完成するまで65年にわたって製造され続けた。フォルクスワーゲンは1998年にニュービートルを発売したが、こちらは2010年に生産終了になった。【URL】http://media.vw.com/release/672/
【二輪車】ホンダ・スーパーカブ
9400万台以上
きるのも特徴の1つで、またたく間に大衆の心をつかんだ。その勢いは日本だけにとどまらず、米国や東南アジアにも波及し、特にアジアでは今でも高い人気を誇る。エンジン付きの乗り物のベストセラーである。【URL】http://www.honda.co.jp/SUPERCUB/photo/
【音楽アルバム】スリラー(マイケル・ジャクソン)
7000万枚以上
1982年12月リリース、「ビリー・ジーン」「今夜はビートイット」といったシングルが大ヒットし、全米チャートで37週1位を記録した。史上もっとも売れた音楽アルバムとして、ギネス・ワールド・レコーズでは6500万枚の認定を受けているが、その売り上げ枚数に関してはさまざまな意見があり、2009年にマイケルジャクソンが急逝したあとも売り上げ枚数を伸ばし続けている。【URL】https://itunes.apple.com/jp/album/thriller/id269572838
【ゲーム】テトリス
4億9500万本以上
ソビエト連邦(現ロシア)で教育ソフトとして開発された落ちものパズルゲームの元祖。誰でもすぐに遊べて熱中できるシンプルさが魅力。幅広くライセンスが提供され、ゲーム機への移植で80年代後半に一大ブームを巻き起こし、その後キーホルダーゲームやJavaアプリで復活、携帯電話で新たな世代のプレイヤーを開拓するというように、時代を超えた大ヒットゲームになっている。【URL】http://press.tetris.com/game-photos/
【玩具】ルービック・キューブ
3億5000万個以上
ハンガリーの建築学者エルノー・ルービックが1974年に考案した立方体パズル。70年代後半から80年代初めに爆発的に流行した。色を揃える攻略法が知られるようになってからも、完成のスピードや手数を競ったり、色で模様を作るなど、さまざまな遊び方が考案され、パズルのロングセラーとなっている。3×3のルービック・キューブを6面揃える競技における、現在のWCA認定最速タイムは4.9秒だ。【URL】https://www.rubiks.com/about/the-history-of-the-rubiks-cube
【News Eye】
もう1つのiOS搭載デバイスであるiPadの累計販売台数は3億2800万台(2016年6月末時点)で、タブレット製品のベストセラーとなっている。ただし、2010年の初代モデルリリースから数年は爆発的な伸びを記録していたが、 2014年からタブレット市場全体が減速し始めている。