すでに説明があったように、フォントには大きく分けて明朝体とゴシック体があります。また、フォントにはさまざまな太さがあります。フォントの太さのことを「ウエイト」といいます。OS Xに標準で搭載されてるものだけでもかなりの種類があり、悩む方も多いのではないでしょうか。
そこで我々デザイナーはどうやって書体やウエイトを決めているのでしょうか。
書体に関してはこの明朝体はこういうときには使ってはいけない、ここはゴシック体以外はダメ、のような厳密な決まりは少ないと思われます。自由に使ってかまいません。
ただ、一部には歴史的に使用用途を決められた書体も確かに存在します。
たとえば歌舞伎の書体である勘亭流を相撲のポスターに使ったり、逆に相撲字を寄席のパンフレットに使ったり(寄席文字というものが存在します)することは明らかに間違いですが、本特集は一般的な明朝体とゴシック体の紹介が中心なので割愛します。このあたりの江戸文字関係の話は、とてもおもしろいので興味のある方はぜひ調べてみてください。
あえてフォントイメージを決めるなら、筆の筆跡が残る明朝体はやさしく上品な趣で和風の固有名詞などが似合うでしょう。それに比べ、ゴシック体はカジュアルでリラックスした雰囲気が感じられます。
冠婚葬祭や研究論文などのカッチリした文書は明朝体で、チラシやPOPなどはゴシック体で、などと大雑把に決めることはできますが、これもケースによりけりです。私も本誌では内容が明朝体だと硬くなりがちなところはあえてゴシック体を多用したり、くだけた内容に細い明朝体を使い真顔の面白さみたいなものを狙ったりしますから。
たとえば「うどん」という文字を組むときはどうしましょう? 日本の食べ物ですので、まず書体は和の雰囲気が出る明朝体に決めてみます。
そこで今回のテーマ、ウエイトです。
「うどん」を2種類のウエイトで組んでみました(1)。さあ、どちらが「うどんらしい」でしょう? やはり麺が太いうどんには太いウエイトがよく似合うと思います。
では、試しに「そうめん」という文字を組んでみました(1)。これは細いほうが似合いますね。
このように物のカタチのイメージから太さを選ぶのも1つの考え方だと思います。例として船の呼び名も組んでみました(2)。いかがでしょう?
船のイメージを太さで表しました。書体もこの場合、カタカナの外来語はゴシック体のほうがしっくりきます。
さて、今度は言葉の持つイメージから考えてみましょう。たとえば「ダイエット」という言葉を組んでみました(3)。
「ダイエット」という言葉自体にカタチはありません。しかし、この言葉の目指すところは痩せることなので細い書体がマッチするでしょう。
ただ、最近の男性向け痩身サロンのように、体を鍛えまくって痩せマッチョになるような目的なら太いゴシックでも似合うかもしれませんね。このように視点を変えるのも文字選定の楽しさでもあります。最後に本誌発行元、マイナビ出版のマイナビ文庫での、私がデザインしたカバーデザインを掲載したいと思います。文庫はサイズが小さいので文字の扱いにはとても気を使う仕事です。ご参考になれば幸いです。