Vol.1 furost（フロスト）

入浴中にペダルを漕いで足の運動ができる健康器具「フロスト（furost）」。開発したのは、株式会社コレッド社長の中里智章さんだ。中里さんはもともと、カーナビや後席モニタなどを開発する会社の設計士。そこで脇見運転などを防止するシステムを研究していたときに、認知・判断・操作能力の衰えが事故につながることを痛感した。

「逆に考えると、高齢になっても思考力や運動能力を維持できれば、事故率は下がる。ひいては医療費も下がるし、健康維持は社会にとって非常に重要だと気づいたんです」

そして中里さんは、予防医療・未病対策のための商品を開発しようと決意し、起業した。

健康について調べたところ、健康維持のポイントが「足の運動にある」という研究に行き当たった。生活の中にうまく足の運動を取り入れたい。できれば効率よく、運動効果が得られるものがいい。そうして、ひらめいたのが「お風呂」だった。

前職での開発経験を活かし、横浜のものづくり企業の力を借りてフロストを作りあげた。苦労したのは、表面をすべて樹脂やゴム素材で覆ったところ。金属製品を湯船に入れるのは抵抗があるという、ユーザの気持ちを汲んでのことだった。樹脂を使うことで強度が下がっては困る。耐久試験を繰り返し、強さと使い心地の両方を追求した。

フロストの使い方はいたってシンプル。湯を張った浴槽の端に立てかけ、座ってペダルをこぐだけだ。40度の湯で5分もこげば充分汗が出てくる。スマホ対応モデルであれば、アプリと連係してこいだ回数や消費カロリーなどを記録することができる。

「これからも足にフォーカスした商品を作っていこうと考えています。足の筋肉を鍛える、血行を良くするという部分でまだできることがあると思っているので」

足元から日本人を健康にする。中里さんの壮大なチャレンジは、まだ始まったばかりだ。