Mac業界の最新動向はもちろん、読者の皆様にいち早くお伝えしたい重要な情報、
日々の取材活動や編集作業を通して感じた雑感などを読みやすいスタイルで提供します。

Mac Fan メールマガジン

掲載日:

ワイヤレス前提の究極のシンプル●はじめての人こそMacBook⑦

著者: 栗原亮

ワイヤレス前提の究極のシンプル●はじめての人こそMacBook⑦

MacBook1台あればいい

前ページで触れたように、MacBookの入出力インターフェイスは、ヘッドフォンポートを除けばUSB-Cポート1基のみ。なぜそれだけでよいのかといえば、基本的にはワイヤレスでの運用が前提になっているからだ。各種アダプタの接続で必要に応じた拡張性は担保しつつ、日常的な作業はマシン1台で済ませられる。

ワイヤレスでの運用に欠かせないのがWi-Fi環境で、MacBookは最新のWi-Fi規格である「IEEE802・11ac(以下11ac)」に対応している。11acは通信レートが理論値で1.3Gbpsと高速で、無線の周波数帯もほかの機器と干渉しにくい5GHz帯を利用できる。

Wi-Fi環境が整えば、インターネットが快適に利用できるだけでなく、OS Xのさまざまなワイヤレス機能も活用できるようになる。いちばん実感しやすいのが、アップルデバイス間でさまざまなデータの受け渡しができる「エアドロップ」だろう。重たい画像などもワイヤレスで転送できるので、データの入ったUSBメモリを手渡すといった方法は不要になる。また、WEBブラウズやメール、メッセージなどの操作をMac/iOS間で引き継ぐ「ハンドオフ」機能も便利だ。さらに、アップルTVがあれば「エアプレイ」で大画面のテレビにMacBook内のコンテンツを再生できる。ほかにも印刷をワイヤレス化できる「エアプリント」や、タイムマシンへのワイヤレスバックアップなどを利用すれば、周辺機器との接続も快適になる。

だが、ほとんどのことがソフトウェアで実現する時代に、そもそもMacBookと接続すべき周辺機器はそれほど多いのだろうか。街に出れば近所のコンビニでネット経由のプリントもできればスキャンもできる。使う頻度にもよるが、余分なモノを持たないほうがトータルのコストは低くなることも十分に考えられる。シンプルを追求してきたアップルだが、その思想がMacBookとして昇華した背景には、こうした外部サービスの発展も大きい。

OS Xのワイヤレス機能

アイクラウド・ドライブ

アップル製品は、標準でオンラインストレージ「アイクラウド・ドライブ」に対応している。これにより、自分のアップルIDと紐付いたMacBookや別のMac、iPhoneやiPadなどともファイルを同期できる。しかも、ファインダからはローカルにあるファイルと同じ感覚で扱えるので「クラウド」を意識する必要がない。

エアドロップ

MacBookと、近くにあるMac、iPhone、iPadで画像やテキスト、WEBページなどをワイヤレスで受け渡すにはエアドロップが便利。サファリやプレビューなどの標準ソフトからは[共有]メニューから呼び出して送付できる。Mac上で、Wi-Fiとともにブルートゥースをオンにする必要がある。

エアプレイ

Wi-Fi環境下にアップルTVが設置してあれば、HDMIケーブルで接続しなくても、MacBookから直接エアプレイでデスクトップ画面や動画などをハイビジョンテレビやプロジェクタに出力できる。また、エアプレイ対応スピーカがあれば、アップルロスレスで音質を劣化させずに音楽を楽しめる。なお、11acでエアプレイを利用できるのは第4世代アップルTVのみ。

街がMacBookをサポート

公衆無線LANサービス

一時期停滞していた公衆無線LANサービスだが、訪日外国人のインバウンド需要を見越し、NTTブロードバンドプラットフォーム(NTTBP)の「Japan Connected-free Wi-Fi」やワイヤ・アンド・ワイヤレス(Wi2)の「TRAVEL JAPAN Wi-Fi」などの整備が進んでいる。もちろん日本人の利用も可能だ。

コンビニでネットプリント

たまにしかプリンタを利用しないのであれば、コンビニエンスストアのマルチコピー機に搭載された「ネットプリント」機能が便利。自宅であらかじめPDFファイルや画像をアップロードしておき、コンビニで登録コードを入力すれば高品質なプリントができる。

MacBookのWi-Fi機能その実力は?

Wi-Fi環境下でのワイヤレス運用が前提となっているMacBookだが、Wi-Fiなら何でもOKというわけではない。適切な規格を使い、適切な設定を行うことが肝要だ。

MacBookが対応する最新Wi-Fi規格「IEEE802.11ac」を有効に活用するなら、Wi-Fiアクセスポイントにはアップル純正のAirMacタイムカプセルやAirMacエクストリームなど、11ac対応の製品を選びたい。11acは通信レートが理論値で1.3Gbpsと高速で、無線の周波数帯もほかのワイヤレス機器と干渉しにくい5GHz帯を利用できるからだ。

ここで注意したいのが、周波数帯の設定だ。AirMacシリーズは従来のワイヤレス機器との互換性を確保するため、2.4GHz帯で利用する初期設定となっている。「AirMacユーティリティ」を用いてこれを5GHzとのデュアルバンドに設定し、メニューバーから5GHz帯のネットワークを選択すれば11acの通信速度を享受できる。

ただし、最近のWi-Fiは複数のアンテナで同時に通信する仕組みとなっており、実際の通信速度はWi-Fiアクセスポイント側と機器側のアンテナ数に制約される。たとえば、MacBookプロであれば3本のアンテナを内蔵しているため、11ac環境下では3ストリームで前述の1.3Gbpsでの通信が可能だが、MacBookではアンテナが2本のため上限は867Mbpsに留まる。それでも、11nの場合は3ストリームで最大450Mbps、2ストリームで最大300Mbps、1ストリームで最大150Mbpsなのだから、11acでの接続の速さは段違いだ。

自分が今どのモードで接続しているかは、メニューバーのWi-Fiアイコンを[オプション]キーを押しながらクリックすれば確認できる。MacBookの最新モデルでは、この理論値の数字が低く表示されることがあるが、これは通信速度の表記が変更されたため。実際に遅くなっているわけではないので心配はいらない。

ワイヤレス運用が前提ならMacBookもアンテナを3本にすればよいのでは、という素朴な疑問が生じるかもしれないが、おそらく省電力性能との兼ね合いで現在の設計になっているのだろう。将来的にバッテリ性能が向上すれば3ストリームに進化する余地も残されている。

MacBook2016年モデル(左)と2015年モデル(右)のネットワーク接続状況を比較してみたところ、5GHzの802.11ac接続時に新モデルの転送レートが780Mbpsであるのに対して、前モデルでは867Mbpsと表示された。これは新モデルが遅くなったのではなく、ロング・ガードインターバルでの表記に改めたためと考えられる。つまり、基本的には同等のスペックと理解して問題ない。

802.11acのもう1つのメリットは「ビームフォーミング」に対応していること。Wi-FiアクセスポイントからMacBookの距離と方向を感知して信号を送出するため、持ち運びで場所を移動しても通信が途切れにくい。もともとモバイル端末向けのテクノロジーだが、MacBookもその恩恵を受けている。