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USB-Cポート1基のみでも拡張性は高い●はじめての人こそMacBook⑥

著者: 栗原亮

USB-Cポート1基のみでも拡張性は高い●はじめての人こそMacBook⑥

「拡張性が低い」という誤解

電源と外部入出力を1つのポートに集約したMacBookのUSB-C(USBタイプC)は、新時代のモバイルコンピューティングを象徴するインターフェイスだ。これは、1990年代にUSBを初めて採用した初代iMac以来の画期的なレジームシフトとみなすこともできる。

USB-Cという名称自体は物理的なコネクタ形状の呼び名で、USBの規格は最新のUSB3.1を採用している。将来的にはGen・2で最大10Gbpsの通信速度を可能にするとしているが、現在のMacBookで採用されているGen・1は最大5Gbpsでスペック的にはUSB3.0とほぼ同等だ。このUSB3.1は、従来のUSBとの下位互換性が確保されているため、コネクタ形状の違いさえ変換できれば、これまでのUSB周辺機器も扱える。だから、「MacBookは拡張性が低い」という一部で見かける意見は、まったく的を射ない指摘なのだ。また、USB-Cを採用する外部周辺機器が増えてきている現状も見逃してはならない。

とはいえ、USB-C非対応の機器と接続するには、USB-C用の各種変換アダプタやケーブルの用意が必要だ。それらの多くはアップルが自ら販売していて、データ転送、映像出力、iOSデバイスとの接続といった用途に利用できる。また、アップル純正ではないが、「Belkin USB-C to Gigabit Ethernet Adapter」(c ベルキン a 4000円)のようにギガビットイーサネットに接続するためのアダプタもあるので、有線ネットワークとの接続も問題なく行える。つまり、Wi-Fi環境でなくても、適切なアダプタさえ用意すればほとんどの周辺機器は問題なく利用できるのだ。

もちろん、すべてのアダプタを用意しておくのはMacBookを運用する姿勢としてはあまりスマートではないし、コスト的にも大変なので、自分の利用シーンをよく考えて本当に必要なものだけ購入することをおすすめしたい。

モバイルバッテリにも対応

USB-Cのもう1つの特徴は、USB経由で最大100ワットまでの給電が可能となるUSB PD(パワーデリバリー)をサポートしている点だ。これまでのUSBの規格では給電は2.5ワット(5ボルト×500ミリアンペア)までに制限されていたが、USB-Cではこうした制約がないため、これまで以上に多くの周辺機器がケーブル1本でバスパワー駆動可能になるだろう。

さらに、MacBook側を外部のモバイルバッテリから充電することもできる。こうした運用方法はそれ以外のMacBookシリーズでは改造前提でないと不可能だったのだが、MacBookでは標準でサポートしている。

こんなにあるぞ! USB-Cでできること

MacBook本体の充電

USB PDを兼ねているため、標準付属のACアダプタを利用して本体充電が可能だ。予備の「Apple 29W USB-C電源アダプタ」(【発売】アップル 【価格】5800円+税)を用意しておけば、自宅とオフィスなどでそれぞれ充電できて便利。また、大容量のモバイルバッテリでMacBook本体の給電や充電もできる。写真は「Anker PowerCore 20100」(【発売】 Anker 【価格】3999円)のブラックバージョン。20100mAhのバッテリ容量を持ち、丸1日電源が確保できないような厳しい状況であっても、MacBookとiPhoneまたはiPadを同時に充電できる。

データの転送

近年USB-C対応の外付け機器も続々と増えている。1TBのハードディスクとしては写真の「G-DRIVE Mobile USB-C」(【発売】HGST 【実売価格】1万6000円前後)などがある。また、USB-CとUSB-Aのデュアルインターフェイスを備えたUSBメモリ「U3C-HPシリーズ」(【発売】アイ・オー・データ機器 【実売価格】16GB:3000円前後、32GB:4000円前後、64GB:7000円前後)であれば、以前のMacやウィンドウズとも共通で利用できる。

映像出力

プレゼン用の機器や外部ディスプレイとの接続にはアダプタが必要だ。HDMIの場合は写真の「USB-C Digital AV Multiportアダプタ」、従来の15ピンのVGAの場合は「USB-C VGA Multiportアダプタ」(いずれも【発売】アップル 【価格】9500円+税)が用意されている。アダプタには充電しながら接続するためのUSB-Cポートと、外部機器接続用のUSB-Aポートも備わる。

既存のUSB機器との接続

USB-Cは、従来のUSB周辺機器との下位互換性も確保されている。「USB-C – USBアダプタ」(【発売】アップル 【価格】2200円+税)を用意しておけば、USB2.0接続やUSB3.1接続の従来の周辺機器とも問題なく利用できる。外部接続の光学式ドライブなど、まだUSB-C対応が少ないカテゴリの製品を持っている人には欠かせないアイテムだ。

ターゲットディスクモード

MacBookはUSBターゲットディスクモードを搭載しているので、ストレージとして利用したい側のMacBookで[T]キーを押しながら起動することで、USBケーブルで接続したもう1台のMacからは外付けストレージ機器として認識される。この機能を利用して、「移行アシスタント」によるOS Xの環境移行作業にも行える。ただし、MacBookに付属するUSB-C充電ケーブルはターゲットディスクモード非対応のため、別途USB-C-USB-A(オス)変換ケーブルが必要となる。

iOSデバイスの充電と同期

これまでiPhoneやiPadをMacBookで充電するには、USB-C-USBアダプタを介してライトニングケーブルを接続する必要があったが、今年3月に「USB-C-Lightningケーブル」(【発売】アップル 【価格】1メートル:2800円+税、2メートル:3800円+税)が発売されたことで、シンプルにケーブル1本でつながるようになった。アイクラウドの登場でiTunesと直接同期する使い方も少なくなったが、iOSデバイスの復元作業などを高速に行えるメリットがある。また、iPhoneと直結させれば外出先での高速なテザリングが可能になるなど、持っておいて損はない1本だ。