もはやエアに肉薄する性能
MacBookはそのCPUに、タブレットにも用いられる省電力性能の高いインテル・コアmを搭載している。「タブレット向け」というイメージから、初代モデルは非力な印象があったが、それも最新モデルの登場で払拭された。
最新モデルのMacBookに搭載された第6世代インテル・コアmは、CPUテスト「ギークベンチ(Geekbench)」で前モデルよりも約15%速いという結果が得られた。その処理性能は、もはやMacBookエアに肉薄する勢いだ。ファンレスを前提としたコアmは、熱が上がってくると処理の負荷を抑えるように設計されており、高負荷の作業を行うと速度が落ちるという特性があるが、日常的な作業では、もはやエア並みにパワー不足を感じることがないまでに進化している。
さらに、CPUのパワーだけではなく、搭載メモリ量やストレージの読み書きの速度、グラフィックス性能といった他のパーツも体感速度に影響を及ぼす。その点でMacBookはバランスがよく、性能が存分に引き出されている。
3Dゲームや映像処理などでCPUパワーの必要を実感しているならともかく、ほとんど行わない作業のために性能にこだわるのはもったいない。日常の作業を快適にしてくれる総合的な使用感の高さが、MacBookのいいところなのだ。
【CPU】電力効率が向上したスカイレークはMacBookにぴったり
MacBook最新モデルのアップデートの目玉といえるのがCPUだ。インテル・コアの第6世代(スカイレーク)の「コアm」を搭載する。コアプロセッサは第5世代(ブロードウエル)で14ナノメートル製造プロセスに微細化され、スカイレークでマイクロアーキテクチャが改善された。低電力動作にフォーカスした設計になっており、そのためPC向けCPUとしては評価が分かれる。だが、TDP(熱設計電力) 4.5Wと、低電力でパフォーマンスを引き出さなければならないコアmにとって、電力効率が重視されたスカイレークへの移行は恵みのアップデートだ。MacBook最新モデルのクロック周波数は初代モデルと変わらないが、CPU性能を向上させながら、バッテリ動作時間が1時間も延びている。
また、スカイレークの採用によって、CPU内蔵のインテルHDグラフィックス(iGPU)が5300から515にアップデートされた。最大25%のグラフィックス性能の向上を果たしているが、同時に新しいiGPUは消費電力あたりの性能の向上にも貢献している。5XXシリーズでiGPUの内部構成が見直され、GPUの並列処理性能を画像処理以外にも汎用的に利用するGPGPUに配慮した構造になった。CPUの負担を、より効果的にGPUに分散できるようになっている。
MacBook(2015、2016年モデル)と13インチMacBookエア(2015年モデル)のベンチマーク比較。MacBookも1.2GHzの上位モデルを選ぶか、1.3GHzのオプション選択をすれば、それよりクロックの高いMacBookエアの性能とほぼ同じになっていることがわかる。(出典:Macお宝鑑定団Blog http://www.macotakara.jp/blog/macintosh/entry-29750.html)
【メモリ】ゆとりのある8GBメモリを標準搭載
OS Xはメモリをたくさん消費するといわれる。たしかにメモリの使用状況を確認すると、常にゆとりがないように見える。それは体感速度を引き上げるために、搭載メモリをなるべくフル活用するというOS Xの設計思想の影響もある。だから、プロフェッショナルユーザだけではなく、カジュアルユーザにとってもメモリ増設の効果は高く、メモリのゆとりがあると日々の作業をてきぱきとこなせるようになる。
MacBookは初代モデルのときから、すべてのモデルが8GBのメモリを搭載していた。そのためミッションコントロールやスプリットビューといったグラフィックリッチな機能やマルチタスク機能もスムースに動作する。
最新モデルも同じくメモリは8GBだ。残念ながら16GBにアップグレードするオプションは見送られたが、LPDDR3(1600MHz)からLPDDR3(1866MHz)へとメモリの動作クロック周波数が引き上げられた。メモリ帯域幅も25.6GB/秒から29.8GB/秒に向上している。コアmはまだDDR4をサポートしていないので、パフォーマンスを大きく引き上げるようなアップデートにならなかったが、CPUやストレージとともに基本性能の底上げに貢献しているはずだ。
コアmシリーズは最大16GBのDDR3メモリをサポートする。初代モデルが登場した頃はMacBookエアの標準搭載メモリが4GBで、メモリ8GBのMacBookには上位感があったが、エア13インチも8GBモデルが標準となった今日、評価が分かれる容量だ。
【ストレージ】高速なフラッシュストレージできびきびと動作
スペック表などに記載されていないことが多いものの、マシンの体感速度に大きく影響するのがフラッシュストレージ(SSD)の転送速度だ。ストレージの読み込みや書き込みの速度が速いと、OSやソフトの起動、ファイルのオープンなどが速くなり、また大きなファイルを扱うソフトもきびきびと動作する。ローエンドモデルでもCPUの処理性能が高まった昨今では、CPUパワーの差以上にストレージ性能の差が体感速度の違いになって現れる傾向が見られる。特にモバイル用途では、短時間でスリープと復帰を繰り返したり、ファイルの読み書きの回数が多くなるため、ストレージ性能の向上が体験の違いになって現れやすい。
MacBookの初代モデルはPCIエクスプレス接続のSSDを採用していたものの、コアmがサポートするPCIエクスプレスはリビジョン2.0だった。そのため高速ではあったが、MacBookエア13インチやMacBookプロに比べるとSSDの長所が十分に引き出されていなかった。スカイレーク世代のコアmはリビジョン3.0をサポートしており、MacBookの最新モデルはストレージの書き込みスラッシュ読み込み速度が大幅に向上している。
オンボードのフラッシュストレージは、下位モデルが256GB、上位モデルが512GB。システムレポートを見ると、NVMExpressのリンク速度が初代モデルの5.0GT/s(リンク幅x4)から8.0GT/s(リンク幅x2)に向上している。