さよなら究極のデジアナメモ
3年前に本連載でご紹介した「Livescribe wifi スマートペン」。ノートに書いた文字をデジタル化するだけでなく、同時に録音まで行い、文字と音声を時系列でリンクさせたファイルをクラウドにぶち込んでくれるという究極のデジアナメモでした。
あまりに便利すぎて一生使い続ける決意をしたのも束の間、なんと日本の代理店が今年秋でサポートを終了。次世代機も利用時にスマホとの連係が必須となり、かつてのようなアナログメモ的なシンプルさがなくなってしまいました。
そんなときに登場したのが9.7インチのiPadプロ。細かい文字が描写でき、パームリジェクション機能もあるアップルペンシルとセットで使えば、紙のメモ代わりになりそうです。肝心の文字と音声のリンクですが、実はiOSアプリにも「サウンドマークス(Soundmarks)」や「ノータビリティ(Notability)」といったメモアプリがあるのです。
導入コストは先述のスマートペンの2万円に対し、iPadプロとアクセサリは全部で17万円…。しかし、商売道具と自分に言い聞かせて、このたびノータビリティとともに完全デジタルメモ体制に移行することにしました。
書いた文字と録音した音声がリンク
音声を再生すると、手書き文字やテキストがグレー化。任意の文字をタップすると、その文字を入力していた時点の音声にジャンプできるので、取材のテープ起こしが超絶楽ちんなのです。
アップルペンシルで試す
完全デジタルメモ体制に移行…などと小難しいことを言いましたが、何のことはありません。取材という実戦で使ってみただけ。
ノータビリティのUIはシンプルで、画面上部に「テキスト」「手書き鉛筆」「手書きマーカー」「消しゴム]「録音」「メディアの取り込み」といったメニューアイコンが並びます。取材なら「録音」を開始しておいて、鉛筆ツールでメモを取るのがオーソドックスな使い方。肝心の書き心地ですが、アップルペンシルの滑りが良すぎて、本当にメモできているのか手元を見ないと不安になります。また、ペン先が画面に軽く触れているだけで描画されるので、余計なストロークが記録されてしまい、ただでさえ判読しづらい文字がより汚くなります。このへんはソフトウェアキーボード同様に慣れるしかないのでしょうね。
一方、デジアナメモでは不可能だったことを実現することができます。やたら便利になったのが「テキスト入力」と「写真の挿入」、そして「PDFの取り込み」。キー入力が許される取材や会議なら速くて正確なスマートキーボードが使えます。また、写真とメモを1カ所にまとめられるので素材の散逸がありません。
導入コストはバカ高いのですが、デジタルにしかできない芸当が満載のiPadプロ+ノータビリティ。先立つものがない、という方でも従来のiPadとスタイラスで、まずはアプリだけでも試されてはいかがでしょうか。
iPhoneやMacともメモを同期できる
ノータビリティはiOS版以外にMac版もリリースされています。保存したファイルはドロップボックスやグーグル・ドライブなどのクラウドはもちろん、iPhone/Mac間で同期されます。
熊山准の評価
● 取材メモオールインワン
● 音声の頭出しが楽ちん
● メディア取り込み
● 導入コストが高い
● アップルペンシルの書き心地には
慣れが必要
[SPEC]
【使用期間】30日 【発売】アップルジャパン 【価格】iPad Pro 9.7インチ 256GB:10万2800円(税別)/Apple Pencil:1万1800円(税別) 【URL】http://www.gingerlabs.com/ 【備考】対応OSはiOS 7.0以降、OS X 10.9以降
【補足】
紙のノートと違うのは、とにかくバッテリ管理が必要だという点と、折り曲げられない点。あと、インタビューしながら使うので取材後は画面が唾の飛沫だらけになるということでしょうか(笑)。
熊山准(Jun Kumayama)
おもちゃとおやつと遠足が好きなノマドライター。モバイル最適解を求めるべく、iPhoneとMacBookプロの間を行きつ戻りつ、答えはいまだ見つからず。装備は今日も3キロ超。