激化する定額音楽サービス
アップルミュージック(Apple Music)は、2016年4月末に発表された数字で1300万人の有料会員を抱えるまでに成長した。先行するスポッティファイ(Spotify)も、アップルミュージック効果で成長が速まったとしており、音楽定額サービスの競争は激化している。今後、音楽のハイレゾ化や、ドラマの配信など映像方面への展開も期待される。映像配信ではネットフリックス(Netflix)、フールー(Hulu)、アマゾン(Amazon)も競合してくることになるだろう。
そんな中、筆者はアップルミュージックの競争力をより高めることにつながるいくつかのアップルへの提案がある。「体験の整理」と「新しい可能性」にフォーカスして、その改善案を述べたい。
[提案 1]タップ数を減らす努力をせよ
アップルミュージックは、とにかくたくさんタップしなければ音楽を聴き始められないサービスになってしまっている。また、[New]タブでジャンルを選んでも、プレイリストのバナーをタップすると再びジャンルを選ばされるなど、操作に重複もある。特にプレイリストのメニューは奥まっており、せっかく人の手でセレクトしたプレイリストへのアクセスが難しい。
そこで、[Connect]を[For You]に統合するなどして、プレイリストへのアクセスをしやすくしてみてはどうだろうか。これだけで、前述の重複問題はなくなるし、すぐに聴き始められる可能性も高まるはずだ。
[提案 2]体験を改めて考え直せ
より大胆に変更するとすれば、アップルミュージックの機能ではなく、人がどのように音楽を聴き始めたいか、によるメニューの再構成も有効だと考えている。たとえば、「とりあえず」「発見したい」「好きな音楽を楽しみたい」という3つの動機を軸に組み立て直してみよう。「とりあえず」は[For You]と[Radio]の機能を入れる。また「発見」は[New]タブがふさわしい。「好きな音楽」は[MyMusic]タブと[Connect]タブを収録するとよい。これに、プレイリストタブを追加すればメニュー構成として最適化できるのではないだろうか。
[提案 3]再生アプリを開発可能に
アップルミュージック機能へのアクセスをAPIとしてサードパーティに開放し、開発者が自分の好きな再生アプリを開発できるようにすればよいのではないだろうか。たとえば、ヒップホップ専門のアプリや、あるアーティストが自身の楽曲を聴くためのアプリを提供してもよいだろう。また、位置情報や天候に応じて選曲してくれるアプリがあっても面白い。 Wi−Fiスピーカの「ソノス(SONOS)」は、コントロールアプリがアカウント認証を取ることで、iOSの「ミュージック」アプリなしでアップルミュージックの楽曲を再生することができる仕組みを備えている。この仕組みが広まることで、より使いやすい再生アプリを作れるようになるだろう。
面白い可能性も
以上が3つの提案だ。加えて、ポッドキャストを制作していると、アップルミュージックの音楽を挟み込んだり、活用できるとよいな、と思うことがある。アップルミュージックの会員に対してはポッドキャストで紹介した楽曲をフルコーラスで聞いてもらってもよいはずだ。ポッドキャストのトラックにはタグだけ挟み込んでおいて、再生アプリでアップルミュージックから楽曲を再生する仕組みであれば、権利処理もアーティストへのロイヤリティも解決した状態でアマチュアの制作者が音楽を活用できるようになる。
アップルが競合を上回るには、体験の充実が必要だ。提案したような正しいデザインだけでなく、新しい体験を作り出す可能性にもチャレンジしてほしい。
【News Eye】
「地球上のあらゆる音楽をワイヤレスでストリーミングする」を掲げるソノスは、アップルミュージックをはじめとした各種音楽サービスに対応している。スマートフォンやパソコンから音楽を飛ばすわけではないため、より手軽に音楽サービスが利用できるようになる。