SIMカードの基本を学ぼう
SIMカード(シムカード:Subscriber Identity Module Card)は、iPhoneやセルラー版のiPadなど携帯電話回線を利用する端末に装着される小さなICカードのことです。アップルストアやキャリアのショップでiPhoneやiPadを購入・機種変更する際に見たことがある人も多いでしょう。基本的に自分で取り付けることは少ないので、その存在をほとんど意識していない人もいると思います。
SIMカードの主な役割は「そのデバイスが誰のものなのか」を証明することで、1枚ごとにIMSIという固有のIDが割り振られています。たとえばiPhoneであれば、このIDが電話番号と紐づいていて、契約している携帯電話会社(キャリア)の回線を利用した音声通話やデータ通信が可能になります。また、セルラー版のiPadのようにデータ通信専用の契約もあります。3GやLTEなどキャリア回線での通信に不可欠なカードであることを理解しておきましょう。
現行モデルのiPhoneやセルラー版のiPadには、接触型のナノSIMカードが装着されています。通常SIMカードはキャリアからの貸与品ですが、プリペイド式のSIMカードとして利用できる契約もあります。
キャリアによって名称が異なることもありますが、SIMカードには数種類の共通規格があります。モバイル端末向けの標準的なミニSIMは現在ほとんど使われておらず、マイクロSIMはiPhone 3GSまで使われていました。現在のiPhoneやiPadはナノSIMを採用しています。なお、物理的なSIMカードを必要としないバーチャルSIMの研究がアップルによって進められています。
SIMロックを理解する
NTTドコモ、au、ソフトバンクといった国内の大手キャリアから販売された端末には、回線契約したキャリアのSIMカードしか受け付けないようにプロテクトが施されており、別のキャリアのSIMカードに差し替えても通話・通信ができません。これを「SIMロック」と呼びます。
これは、自社の通信サービスを利用してもらう代わりに、端末本体価格を極力抑えるというキャリアのビジネスモデルと深い関係があります。こうしたキャリア主導の施策は、iPhoneなどが普及する局面では一定の成果を果たしましたが、ほかの通信事業者の参入を阻害したり、通信費の高止まりという別の問題が指摘されました。そのため、総務省の改正ガイドラインに基づき、2015年5月以降に発売されたモデルに関しては、契約から一定期間過ぎたらSIMロックの解除にキャリアが応じるようになりました。
なお、はじめからSIMロックがかかっていない状態の端末は「SIMフリー」と呼ばれます。
● SIMロックとは
キャリアから販売されたiPhoneやiPadでは、購入時にアクティベーション(認証、有効化)が行われて、そのキャリアのSIMカードしか受け付けない「SIMロック」の状態となります。そのため、他のキャリアのSIMカードに入れ替えても通話や通信はできません。
● SIMフリー端末も購入できる
オンラインのアップルストアで販売されているiPhoneやiPadはSIMフリーの状態で販売され、契約したいキャリアを選んでアクティベートを行います。また、海外で販売されているiPadなどもSIMフリーの状態で販売されていることが多いです。
格安SIMのはじめの一歩
こうしたSIMフリー化への流れの中で登場したのが、大手キャリアより安くSIMカードだけを販売する事業者です。自前で通信設備を持たずにキャリアの回線を間借りしてサービスを提供することからMVNO(仮想移動体通信事業者)とも呼ばれます。
このMVNO事業者からは、さまざまなプランの「格安SIMカード」が登場しています。格安といっても通信インフラ自体は大手キャリアの設備を利用していますので、通信やエリア自体は極端に品質の低いものではありません。
格安SIMには大きく分けて「データ専用SIM」と「音声通話対応SIM」があり、音声通話に加えてSMS(ショートメッセージサービス)に対応しているものもあります。大手キャリアからMVNOに契約を移せば、いずれも月々の通信料金は大手キャリアよりも数千円程度安くなりますが、iPhone、iPadの購入から2年以内の場合、キャリアの端末割引サービスが解除されてしまいますので注意が必要です。
● 3種類のSIMカード
データ通信用SIM
3G・LTEなどのデータ通信のみを行なうSIM。通話、SMSは使えません。iPad、Wi-Fiルータなどで使うとよいでしょう。iPhoneでも使用できますが、通話ができないためあまりおすすめできません。
データ通信+SMS専用SIM
データ通信とSMSが使用可能です。たとえば「LINE」のアプリなどはアカウント登録時にSMSを使用するので、こうしたサービスを使う場合にはデータ専用SIMよりもこちらがおすすめです。
音声通話+データ通信+SMS対応SIM
上記の2つに加え、通話にも対応しているSIM。格安SIMはキャリアからのMNP(モバイルナンバーポータビリティ)にも対応しているため、キャリアのiPhoneを使っているユーザが格安SIMを使う場合、このタイプのSIMを使うとよいでしょう。
● MVNOは百花繚乱の戦国時代
格安SIMのサービスを提供するMVNOは、そのサービスや事業ノウハウを支援するMVNE(仮想移動体サービス提供者)の登場によって急速に数を増やし、2016年4月現在で40近い事業者が参入しています。また、LINEなどWEBサービス系事業者の参入も発表されています。
● 大手キャリアとMVNOの料金比較(編集部調べ)
モデルケースとして、NTTドコモの通話無料(2年間の定期契約あり)+もっとも小容量なデータ通信プランと、IIJmioの音声通話機能付きSIMのミニマムスタートプランを比較しました(初期費用3240円は含まず)。その差額は月額5292円にもなります。
格安SIMの選び方
格安SIMはキャリアの回線を利用して通信を行うため、対応するキャリアの回線を使っている格安SIMなら、SIMロックがかかっている端末でも通信できます。
ただし、契約中のキャリアによって対応状況が大きく異なります。一番問題がないのがNTTドコモで、ほとんどのMVNOが対応しています。auの回線を利用するMVNOもありますが、数が限られるのと、一部機種でデータ通信できないという問題が解消していません。ソフトバンクは現在のところ、同社の回線を利用したMVNO事業者が存在しません。
SIMフリーのモデルであればすべての格安SIMを使用できます。アップルストアで購入したSIMフリー端末はもちろん、キャリアから購入した端末でもSIMフリー化すればOKです。ただし、現在キャリアで販売しているiPhoneの中で、今すぐロック解除して格安SIMを利用できるのはiPhone 6s/6sプラスを半年以上前に購入している場合のみとなります。
キャリア版iPhoneで使える格安SIM
DOCOMOのiPhoneの場合
IIJmio、mineo、OCNモバイルONE、ぷららモバイルLTE、NifMo、DMM mobile、BB.exciteモバイルLTE、FREETEL、ワイヤレスゲート Wi-Fi+LTE ほか
ほとんどのMVNO事業者が、ドコモの回線を利用した格安SIMサービスを提供しています。そのため、ドコモのiPhone 5s / 5c / 6 / 6プラスであれば、簡単な手続きで格安SIMに乗り換え可能です。なお、iPhone各機種の詳細な対応状況は、MVNO事業者のWEBサイトを確認ください。
auのiPhoneの場合
mineo、UQ mobile
auの4G LTE網を利用した格安SIMサービスでは、auから購入したiPhoneに対応しています。しかし、MVNO事業者の「mineo(マイネオ)」の場合、iPhone 5s / 5cについてはiOS 9.3.1以降で動作が不安定でデータ通信ができません。また、いずれの機種もテザリング、SMSに非対応です。
SoftBankのiPhoneの場合
Y!mobile
ソフトバンク回線を利用したMVNO事業者は現在のところ存在しません。それに近い形としてあるのが、ソフトバンクモバイルとヤフーが提携した通信サービス「Y!mobile(ワイモバイル)」です。格安SI Mほど安くはありませんが、音声通話無料サービスやデータ通信のシェアプランなど独自サービスが充実しています。
おすすめのMVNO
各社が多種多様なサービスを提供している格安SIM、どのSIMを選べばいいのか困ってしまう人も多いはず。そこで、ユニークなプランやiPhoneと合わせて使いたいサービスなどを提供する、編集部おすすめのサービスを4つピックアップしました。
【U-NEXT】U-mobile
高速なLTEで容量無制限の「通話プラスLTE使い放題2」プランがあります。音楽や動画を存分に楽しみたい人向け。また、音楽聴き放題の「スマホでUSEN」プランもあります。【URL】http://umobile.jp
おすすめポイント
● 高速使い放題プランがある
● 動画や音楽コンテンツに強い
● 独自店舗も展開している
【ケイ・オプティコム】mineo
auとドコモの両方の通信網に合わせたサービスを提供しています。データ専用、音声対応など多彩なプランを揃えるほか、家族や友人と余ったデータ容量をシェアできるなどのサービスが特徴です。【URL】http://mineo.jp
おすすめポイント
● auとドコモの回線に対応
● 余ったデータ容量をシェアできる
● 通話SIMの解除違約金が発生しない
【IIJ】IIJmio
老舗MVNOで、音声通話対応SIM「みおふぉん」を取り扱っています。格安SIMプランのほか、10GBの容量を家族で分け合える(最大SIM10枚)「ファミリーシェアプラン」があります。【URL】https://www.iijmio.jp
おすすめポイント
● 家族全員が格安SIMを使える
● 家族間通話料金が20%引き
● イオンや家電量販店で即日MN
【プラスワン・マーケティング】FREETEL
iPhone専用プランがあり、アップストアからのダウンロードにかかるデータ通信料金が発生しません。使用したデータ容量に応じて6段階の月額料金が設定されています。【URL】https://www.freetel.jp
おすすめポイント
● 専用プランならアップストアの通信料がタダ
● 使った分だけ支払いする仕組み
● 電話かけ放題アプリもある
おすすめMVNOを比較
● 各社「最低価格プラン(音声対応SIM)」比較表
● 各社「最大パケット容量プラン(音声対応SIM)」比較表
とにかく安いプランを使いたいアナタには
FREETELの「使った分だけ安心プラン」がおすすめ!
月に100MBまでのデータ通信なら999円(税別)/月
節約モードで月額料金のコントロールも可能
アプリを落とす以外はメールくらいしか使わず、月に数回は電話をするというライトユーザにおすすめのプランです。
大容量パケットをお得に使いたいアナタには
U-mobileの「LTE使い放題2」がおすすめ!
容量無制限なのに2730円(税別)/月
高速通信で動画も楽しめる
通信容量無制限のサービスは速度が遅いことなどがありますが、U-Mobileなら最大転送速度225Mbpsで通信可能です。
海外製iPhoneはMVNOで使える
アップル製品はグローバルで展開されているため、基本的には海外で販売されているiPhoneやiPadも多少の仕様の違いがあるとはいえ、日本に持ち込んで利用できます。渡航先で購入したiPhoneを日本で使うことも可能です。国内でSIMフリー版が販売されている現状では大きなメリットはありませんが、VAT(付加価値税)がかからない香港(ただしiPhone 6はCDMA非対応なのでau回線は使えません)や、VATはかかりますが技適(技術基準適合証明/認定)が付いている米国のSIMフリー版を入手する人もいます。
しかし、通信関連のトラブルが発生した際に国内の大手キャリアではサポートができないのはもちろん、アップルストアでも対応できないことがあるというリスクがあります。その点、MVNOの格安SIMであればパッケージで購入したうえで自己責任で利用する分には問題なく使えることも多いので、最低利用期間のないMVNOで試してみるといったことも可能です。
海外のSIMフリー版iPhoneを取り扱う通販サイトを利用すれば国内にいながらにして購入できます。