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Macを司るパーツを見てみよう・2●Macのしくみ大図鑑

著者: 今井隆

Macを司るパーツを見てみよう・2●Macのしくみ大図鑑

薄型軽量化が進む記録媒体『ストレージ』

Macのストレージの主役は30年近くハードディスク(HDD)が担ってきましたが、2008年に登場した初代MacBookエアにSSD(フラッシュストレージ)が初採用されて以来、急速にSSDへの移行が進んでいます。SSDはUSBメモリやメモリカードと同じく、半導体メモリチップ(NAND型フラッシュメモリ)を記録媒体に用いたストレージデバイスで、HDDのような可動部がなく衝撃に強いこと、大幅に薄型化や軽量化が可能なメリットがありますが、HDDに比べて容量あたりの価格が高いことがデメリットでした。しかし近年の急速な半導体技術の進歩によって小容量帯を中心に低価格化が進み、MacBookシリーズではほとんどのモデルがSSD化されています。

そのSSDもここ数年で改良が進み、従来のHDD型SSDに代わって登場したスティック型SSDの採用によって本体の小型化・軽量化がさらに進んでいます。また、接続インターフェイスもパラレルATAからシリアルATAへ、そして最近はPCIエクスプレスへと高速化が進んでおり、アクセスプロトコルも従来のSATAプロトコルから、半導体メモリに最適化されたNVMプロトコルへと進化してきています。最新のMacではすべてのモデルでPCIエクスプレス接続のSSDが採用されており、従来のSATA接続のSSDに比べて2~5倍に高速化されています。またライオン以降のOS XではSSDの未使用領域の消去を事前処理しておくことでSSD固有の速度劣化(プチフリなど)を抑えることができる「Trim命令」にも対応しており、特に空き容量が少なくなった状態でのアクセス速度低下を抑制可能です。

HDDのしくみ

ハードディスクの内部には、1~6枚の磁気ディスク(プラッタ)とその両面に配置された磁気ヘッドがあり、高速回転する磁気ディスク上に磁気ヘッドでデータを磁気記録することで読み書きを行っています。

SSDのしくみ

一方、SSDの内部は数個から十数個のNANDフラッシュメモリチップとSSDコントローラで構成されており、ハードディスクと違って機械的に動く部分はないため、衝撃に強くかつ高速なアクセスが可能となっています。

SSD高速化のしくみ

SSDは多数搭載されたフラッシュメモリチップを同時にアクセスする(並列動作)ことや、SSDコントローラのアルゴリズムを工夫することで、USBメモリやメモリカードなどに比べて数倍~十数倍のアクセス速度を実現しています。

Macの通信を司るインターフェイス『ネットワーク』

LANは古くからMacのネットワークインターフェイスとして活躍してきましたが、1999年登場の初代iBook以降、Wi-Fiがネットワークの主役の座を急速に奪ってきています。そのWi-Fiも新しい規格が次々と登場し、当初は最大11Mbps(IEEE802.11b)だった通信速度も、最新モデルでは最大1300Mbps(IEEE802.11ac)まで高速化され、今後も高速化は続く見込みです。現在のWi-Fiでは2.4GHz帯と5GHz帯の2つのバンド(周波数帯)を使用し、アクセスポイントと接続機器側の両方に複数の無線アンテナと送受信回路を搭載して高速転送を行うMIMO(マイモ:Multi-In Multi-Out)方式が採用されています。さらにIEEE802.11acでは通信に使う周波数幅を従来(11n)の20MHzまたは40MHzから80MHz(160MHz)に拡張したり、新しい変調方式(256QAM)を採用することで高速化を実現しています。最近では同じ2.4GHz帯を使うブルートゥースも合わせた全機能を1つに統合した無線モジュール方式が採用され、PCIエクスプレスでシステムに接続されています。

Wi-Fiの主力として利用されている2.4GHz帯は先に述べたブルートゥースやジグビーなどの短距離通信だけでなく、独自方式の無線キーボードやマウス、あるいは電子レンジなどでも使用されている過密周波数です。そこでWi-Fiでは「周波数ホッピング」と呼ばれる自動チャンネル切り換え機能を搭載しており、同じ周波数が利用されていて相互干渉が想定される場合には、ほかの周波数を使うチャンネルに自動的に切り換えて通信を継続できる仕組みを備えています。

無線LANのしくみ

無線LANカード上には、2.4GHz帯の無線送受信回路と5GHz帯の無線送受信回路がそれぞれアンテナの数と、それらを総合的に制御するWi-Fiコントローラが搭載されています。最近はこれにブルートゥースの通信機能も統合されています。

MIMOのしくみ

MIMOは複数のアンテナと無線送受信回路を同時に使う(マルチストリーム)ことでデータ通信速度を向上する技術です。ストリーム数に比例して通信速度を向上できるのです。

Bluetoothのしくみ

Mac本体にはブルートゥース通信機能を統合したWi-Fiカードが搭載されおり、アンテナは共用のタイプが使用されています。一方、ブルートゥース機器には小型のアンテナと無線回路が搭載されており、Macとペアリングすることで通信が行われます。

Macを支える文字入力装置『キーボード』

コンピュータであるMacにとって、キーボードは極めて重要な入力インターフェイスです。Macでは2006年に登場した初代MacBookからキートップの隙間をフレームでカバーしたアイソレーションキーボードが採用されています。このタイプのキーボードはキートップ同士のすきまにホコリやゴミが入りにくいことから耐久性に優れ、キートップ同士の間隔が広いことから誤操作しにくいとされています。その一方でトップカバーとキーボードユニットを一体的に作り込む必要があるためコストアップとなりますが、高剛性を売り物とするユニボディとの相性は非常に良く、非常に安定感のある打鍵感を得られるメリットがあります。

Macのキーボードのメカニズムは以前はメンブレン方式が主流でしたが、現在は全モデルがパンタグラフ方式となっています。この方式は短いストロークでキー入力が可能で、キートップ保持にパンタグラフ構造を採用していることからキートップが傾きにくく、キートップの周辺部を押しても入力ミスが起きにくいという特徴があります。MacBook(2015)のバタフライメカニズムはこれをさらに改良したもので、有効ストロークを確保しつつ、より薄いキーボードメカニズムを実現することに大きく寄与しています。

MacBookプロで初採用されたキーボードバックライトは暗部でのキーの視認性を向上する便利な機能です。キーボードの両サイドに配置された白色LEDの光源を導光板で、文字部分を透明樹脂で成形したキートップまで送り届けています。

アイソレーションキーボード

アイソレーションキーボードは各キートップが独立したボックス型になっていて、そのすき間がフレームで覆われています。製造には高い精度が要求されますが、ユニボディの高い剛性に支えられた安定した打鍵感が魅力です。

バタフライメカニズム

MacBook(12インチ)には、従来のパンタグラフ構造を改良したバタフライメカニズムのキートップ支持機構が採用されており、これによって確実な操作感を得ながらも極めて薄いキーボードを実現しています。

独立LED型バックライト

MacBook(12インチ)のキーボードバックライトは、従来のMacBookシリーズに採用されているサイドライト方式ではなく、個別のキートップの直下に1個ずつLEDを配置する方式を採用することで徹底した薄型化を実現しています。

指で操作する魔法のデバイス『トラックパッド』

トラックパッドは平らなセンサパネルを指で操作することでGUI操作を行うポインティングデバイスです。初期のPowerBookシリーズにはメカニカルマウスを裏返したような構造を持つトラックボールが採用されていましたが、回転するボールを有することから薄型化と操作性の両立が難しく、またスクロールセンサ部にホコリやゴミが溜まりやすい欠点がありました。1994年に登場したPowerBook 500シリーズ(BlackBird)では業界に先駆けて静電容量検出方式のトラックパッドが採用され、メンテナンスフリーとセンサユニットの薄型化を実現しました。以降、この構造はノートパソコン設計のお手本となり、以降のPowerBookシリーズやiBook、MacBookシリーズをはじめ、全モデルにトラックパッドが採用されています。

トラックパッドはX軸・Y軸の2枚のシート状のマトリックスセンサから構成され、このセンサと触れた指先との間に構成されたコンデンサの微弱な静電容量の変化を計測することで、指先が触れたX・Y座標を算出する仕組みです。現在では、複数のセンサラインからの入力を同時演算することで複数の指先の座標を検出できるマルチタッチ機能や、トラックパッドのパネル周辺に設けた圧力センサでパッドを押した強さを計測するフォースタッチ機能も搭載されています。一部のMacBookではクリックスイッチの機能をフォースタッチで代用することでトラックパッド自体の薄型化をさらに推し進め、そのフィードバックをタプティックエンジンと呼ばれる磁気アクチュエータで行う仕組みになっています。

トラックパッドの構造

トラックパッドは、ガラスパネル上に形成されたマトリックス状の静電容量センサと、このセンサからの信号を処理するコントローラチップで構成されています。コントローラチップはロジックボードとUSBで接続されています。

感圧タッチ&タプティックエンジンのしくみ

フォースタッチ対応のMacでは、従来のメカニカルなクリックスイッチに代わって、パネルを押した力を検出する圧力センサと、クリック感をフィードバックするためのタプティックエンジンが搭載されています。

タプティックエンジンのリニアモータ

タプティックエンジンは電磁石の吸引力と反発力を利用したリニアモータで、専用コントローラによって人工的なクリック感を演出します。これによってトラックパッドから機械的な可動部分をなくし、耐久性と薄型化を実現しています。