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待望の「小さな」iPad Proを4つの視点で大検証!

著者: 松山茂

待望の「小さな」iPad Proを4つの視点で大検証!

待ち望んでいたサイズ感

いつでも外で仕事をできるようにと、外出時には12インチのMacBookとiPadミニ2を持ち歩いています。MacBookではテキストの入力や画像の編集、iPadはMacの遠隔操作やPDFへの書き込みなどに使い分けています。

MacBookは動作も軽快、キーボードの打ち心地もお気に入り。ただ、iPadミニ2はそろそろ動作がもたついてきました。バッテリの持ちも悪くなってきたため、もっとハイスペックなiPadが欲しいなぁと思っていたところ、2016年3月に12インチのiPadプロが登場。購入を考えたのですが、MacBookと併用するにはちょっと大きすぎるし、気軽に試せる価格でもないので見送りました。

そんな私の前に満を持してこのたび登場したのが9.7インチiPadプロ。歴代のiPadシリーズと同じ9.7インチ、これまで使っていたiPadミニ2よりも少し重いですが、プロセッサやグラフィックスの性能がミニ2と比べて段違いに向上しているので快適に使えるはず。対応するアクセサリも魅力的でした。アップルペンシルがあればPDFへの書き込みなども簡単になりそうですし、スマートキーボードも便利そう。「待ってました!」といわんばかりに、迷うことなくアクセサリ類も合わせて一式購入しました。

小さなボタンにアップルペンシル

リモートログインしたMacの画面を操作するには、指ではちょっと大変。アップルペンシルなら小さなチェックボックスやラジオボタンも、画面を拡大せずにクリックできるんです。

4つの視点で検証

触ってみると、これまで使っていたiPadミニ2との性能差にびっくり。それもそのはず、iPadミニ2に搭載されているA7プロセッサに対してiPadプロに搭載されたA9Xプロセッサは2.5倍もパフォーマンスがアップ。単純にWEBブラウジングや動画の再生などを試してみてもサクサク感がまったく違います。そこで、今までiPadミニで行っていた「Macの遠隔操作」、「PDFへの書き込み」、「簡単なテキスト入力」、「写真の取り込み」の4点をiPadプロで試してみました。

まずはMacの遠隔操作です。「ログミーイン(LogMeIn)」というアプリを使って仕事場のサーバを操作しているのですが、画面の書き換えが非常になめらか。通信環境の違いもあるのでしょうが、ポインタの遅延が大きく減りました。また、今まではマウスポインタを指で操作していたのですが、アップルペンシルを使うと作業がぐっと楽になりました。ポイントの精度が非常に高く、いちいち指で画面を拡大しなくても、アップルペンシルの先端を落とすだけで狙ったところを確実にクリックできます。PDFへの書き込みも同様で、まるで紙に書いたようにきれいに書けるのはさすがです。

スマートキーボードでテキスト入力も試してみました。今まではサードパーティ製のブルートゥースキーボードをiPadミニ2に装着して使っていたのですが、バッテリ内蔵のためiPadミニと同じぐらい重く、定期的に充電する必要がありました。また、時々ペアリングが切れるたびにつなぎ直すのも面倒。スマートキーボードはこれらの欠点を完全に解消しています。

薄くて軽いキーボードはスマートカバーのデザインを踏襲し、スタンドとしても使えます。キーはMacBookと同じバタフライ構造で、打鍵感も良く似ているのですぐ慣れました。電源はスマートコネクタでiPad本体から供給されるため、キーボードにはバッテリがありません。充電の必要がないのは快適です。キー配列はUS配列ですが、サードパーティ製の外付けキーボードもUS配列だったので問題なし。ただ、[キャプスロック]キーがオンなのかオフなのかわからないのには困りました。iPad上にキャプスロックの状態を表示する場所があったらよかったんですが…。

あと、文字入力に関してはもう1ついいことが。以前、購入したまま放置状態だった手書き日本語入力アプリ「マゼック(mazec)」が、アップルペンシルのおかげで有効活用できそうです。今までマゼックを使うときには指やスタイラスで字を書いていたのですが、細かい字を書くのが難しく、ひらがなから漢字に変換していました。アップルペンシルを使うと細かい線でもきちんと書けるので、漢字混じりの文章を直接書けてストレスがありません。これからは手書き入力も積極的に活用するつもりです。

手書き入力の精度が向上

アップルペンシルを使えば、マゼックによる手書き入力も快調に行えます。漢字も認識してくれるのがうれしいですね。

キーボードは惜しい出来

スマートキーボード(下)と、iPadミニ2で使ってきたロジック—ル社のウルトラスリムキーボード(上)。キータッチの好みが大きく分かれるスマートキーボードですが、私は結構好き。ファンクションキーがないのは我慢するとして、キャプスロックの状態表示がないのはいかがなものか?

キーボード付きでも今までより薄い

iPadミニ2+ウルトラスリムキーボード(左)よりも、iPadプロ9.7インチ+スマートキーボード(右)のほうがスリム。キーボードの電池切れも心配しなくていいんです。

写真を扱うには最適かも

私がiPadを一番よく使うのは、写真の撮影時です。いつもWi−Fi搭載のSDメモリカードを使って、一眼レフで撮影した写真をワイヤレスでiPadに転送して写真を確認しています。iPadプロのおかげでこの作業も快適になりました。

大きくてきれいな画面は写真の良し悪しを判断するのには最適ですし、グラフィックス性能が高いので露出補正などの簡単な編集はMacBookで行うよりも、iPadプロの「写真」アプリを使ったほうが速いぐらい。

これまで、部分的なレタッチはMacで行っていたのですが、アドビのiOSアプリ「フォトショップ・エクスプレス」や「フォトショップ・フィックス」などとアップルペンシルを組み合わせると、スライダの操作や編集範囲の細かい指定をペンシルでできるので、Macよりも快適にこなせそうです。

また、私のデスクは大きな窓に面しているので、天気や時刻で環境光が大きく変わり、室内の蛍光灯もミックスされます。写真の色味をチェックするには不向きな環境ですが、新たに採用された「トゥルートーン」ディスプレイの機能は、周囲の環境光によって画面のホワイトバランスを調整してくれます。今までのディスプレイでは青っぽく見えていた写真も、ぐっと見やすくなりました。

テザー撮影にもiPadプロは最適

以前からテザー撮影にiPadを使ってきましたが、グラフィックスパフォーマンスが向上したことで、写真の取り扱いが楽になりました。画像の確認には最適かも。

単なるビューワ以上の可能性

結論からいうと、9.7インチiPadプロには大満足しています。アップルペンシルとスマートキーボードという2つのアクセサリによって、単なるビューワではなく、インプットデバイスとして大きく強化されています。ですから持ち運ぶときだけでなく、近頃は仕事場でもキーボードをスタンドにして置いておき、頻繁に使っています。「2台目のMac」を検討している方は、iPadプロも選択肢に入れてみては?

また、Macを持っていない人が「初めてのiPad」として買うのもおすすめです。バッテリは最大10時間も持つので、家でも外でも軽快に使えます。高いパフォーマンスのおかげでWEBブラウズや動画の再生も快適、アクセサリを使えば情報をインプットするツールとしても役立ちます。

逆に、電子書籍を読んだり、映画を見たり、ゲームをプレイしたりといったビューアとしての用途「のみ」に使うのなら、iPadプロよりも安価なiPadエア2やミニ4が選択肢に上がります。このように現行ラインアップでは用途に合わせて最適なiPadを選べるので、ぜひ検討してみてください。

レタッチにはアップルペンシルが欠かせない!

マスクやレタッチ範囲の指定も、指よりアップルペンシルのほうが細かなところまで指示できます。絵だけでなく写真を扱う人にも、アップルペンシルは便利なツールなんです。

松山茂の評価

● 処理性能が高い

● スマートキーボードが使える

● ペンシルがいろいろ活躍

● 写真表示がきれい

● スマートキーボードがUS配列のみ

● キャプスロックの状態表示がない

【補足】

トゥルートーン(True Tone)ディスプレイを搭載しているのは9.7インチiPadプロのみです。12.9インチのiPadプロには搭載されていませんのでご注意ください。

【補足】

スマートキーボードでは、[コマンド]キー+[H]キーでホーム画面、[コマンド]キー+[タブ]キーでアプリの切り替え、[コマンド]キー+[スペース]キーでスポットライト検索画面に切り替えるショートカットが使えます。アプリで使えるショートカットは、[コマンド]キーを長押しすると確認できます。

SPEC

[使用期間]20日

【発売】アップルジャパン

【価格】8万2800円(税別)

【URL】http://www.apple.com/jp/ipad/

【サイズ】高さ169.5(W)x240(H)×厚さ6.1(D)

【重量】437g(Wi-Fiモデル)、444g(Wi-Fi+Cellularモデル)

【インターフェイス】802.11a/b/g/n/ac、MIMO、ブルートゥース4.2、ステレオミニイヤフォンジャック、ライトニング

【備考】バッテリ:27.5Whリチャージャブルリチウムポリマーバッテリ、起動時間:Wi-Fiでのインターネット利用、ビデオ再生、オーディオ再生は最大10時間、携帯電話データネットワークでのインターネット利用は最大9時間

松山茂 Shigeru Matsuyama

東京・谷中を拠点として日々ガジェットと猫を愛でながら執筆するフリーライター。Mac歴は1984年発売のMacintoshから。気づけば早30年、Macの進化と時の流れの速さを実感中。