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大手メーカーに突撃インタビュー! 今さら聞けない

【Chapter3_1】セキュリティソフトのQ&A

著者: 早川厚志

【Chapter3_1】セキュリティソフトのQ&A

カスペルスキー

製品管理本部 プロダクト マネージャー

保科貴大さん

【Q】セキュリティソフトはどうして必要?

【A】OS Xのセキュリティ機能だけでは100%守れないからです

ウイルスなどに「感染したことがない」というユーザは多いのですが、昨今のウイルスは「感染したことに気づかない」ものなのです。また、ウィンドウズだけがウイルスに狙われていると信じている人もいますが、実際にはMacもターゲットになっています。

セキュリティソフトは、ウイルスの検知のほかに、WEBサイトの危険性のチェックも行っています。国内外には怪しいサイトが数多く存在し、フィッシング詐欺などの被害に遭う人が途絶えません。

アップルの公式サイトでは、ゲートキーパーやファイルボルトなど、OS Xの高い安全性を紹介しながらも、「すべての脅威を100%防止できるシステムが存在しないのは事実です」とも明記しています。より安全にMacを使うためにも、やはりセキュリティソフトが必要なのです。もちろん、これは私がセキュリティソフト会社に勤めているからではありません(笑)。

【Q】セキュリティソフトの仕組みって? 役割は?

【A】ユーザの代わりに「毒見役」をしてくれるものです

たとえるならば、ユーザの代わりにさまざまな食べ物の「毒見」をしてくれるものがセキュリティソフトだと考えてください。ただし、毒見のつもりが食べ物を全部食べてしまったり、毒見役自身が毒が効かない体質でまったく役に立たなかったり、あるいは毒見役なのにひと口が大きくて周囲を汚してしまったりするなど、セキュリティソフトにもさまざまなタイプがあります。そのため、適切なセキュリティソフトを選択する必要があるでしょう。

主な役割としては、たとえばアクセスしたWEBページのURLを見て、それをいちいちユーザが安全かどうかを判断するのは面倒くさいし、難しいですよね? セキュリティソフトを入れておけば危険なWEBサイトを一瞬で知らせてくれますし、実際に当該ページにアクセスする前から、ページ内のリンク先のコンテンツをチェックして、安全かどうかをユーザに教える機能もあるのです。

【Q】ウイルスの目的って何なの?

【A】ズバリ、「お金儲け」のためです

ウイルスの目的というと、現在は「お金儲け」のために作られるケースがほとんどで、昔のようなイタズラ的なものはほとんどなくなりましたね。でも、ウイルスの作成者は少しでも多くのお金をユーザから詐取するために、作成したウイルスをムダにばら撒くようなことはしません。ウイルスを仕掛けやすいサーバや騙しやすいメールアドレスの一覧などが売買されているんです。もはや完全にビジネスのために行っていると言っていいでしょう。

弊社は今年、Macをターゲットにした「ランサムウェア」が出現するのではないかと予想しています。これは、ユーザのファイルを勝手に暗号化してしまい、それを復元する「身代金」として金銭を要求するという類いのもので、昨年ウィンドウズ環境でとても流行しました。もしもMacでセキュリティソフトの導入を考えているなら、今がそのタイミングだと思います。

【Q】無料ソフトでも大丈夫なの?

【A】無料にはそれなりの理由があります

アップルのCEO、ティム・クック氏が、昨年5月に開催されたとあるイベントでプライバシーとセキュリティについての講演を行ったのをご存じでしょうか? その講演の中で「無料と見せかけて実はかなりコストを伴うサービスを利用するために、利用者が個人情報を差し出すようなことがあってはならない」と述べ、「無料サービスを気に入っている人もいるでしょうが、自分のメール、検索履歴、さらに今では家族写真までもが得体の知れない広告目的で利用・販売されています」と注意喚起を述べたのです。

また、昨年秋に話題となったのですが、ある無料のアンチウイルスソフトのプライバシーポリシーの中に「広告主に閲覧と検索履歴を販売することができる」と明記されています。普通に使っていても気づかないんですよ。もちろん、すべてが当てはまるわけではありませんが、無料である裏にはそれなりの理由があるんです。

【Q】セキュリティソフトとアンチウイルスソフトの違いは?

【A】総合的なセキュリティ対策とウイルス感染だけを

対策するものの違いです

「アンチウイルスソフト」というのは、ウイルス(マルウェア)の感染を防いだり、感染してしまったウイルスを駆除するためのものを指します。

一方の「セキュリティソフト」というのは、ウイルス対策機能に加えて、詐欺サイトなどの危険なWEBサイトへのアクセスをブロックしたり、リンク先サイトの安全性をチェックして知らせたり、あるいはキー入力による情報流出の防止や保護者による閲覧可能サイトやダウンロード、利用時間などを制限したりと、インターネット関連を含めた幅広い脅威からユーザを保護することを目的とした総合セキュリティソフトを指します。これが最近の主流となっていますね。特にMacの場合、ウイルスよりもネット関連の被害に遭う可能性のほうが高いので、こちらをおすすめします。宣伝になってしまいますが、弊社のセキュリティソフトは先ほど挙げた機能をすべて備えています。

【Q】ウイルスの収集や分析はどこでどのように行っているの?

【A】ほとんどの場合、ロボットが自動収集・分析をしています

かつては、専門家同士が交換するなど人の手で収集していた時代もありましたが、現在はウイルスの数が増大し、人の手では処理しきれなくなっています。世界各国に置かれている自動収集システムが捕まえたり、一般ユーザから送られてきたり、あるいはユーザがどんなプログラムをダウンロードしたのか、どんなWEBページにアクセスしてどんな危険な目に遭ったかなどの振る舞いを「Kaspersky Security Network」(カスペルスキー社の場合)に集め、ウイルスラボでウイルスかどうか自動解析しています。

また、未発見のウイルスに対してもソフトウェアにウイルスと疑われる不審なふるまいを検出する機能が搭載されています。このような仕組みは、おそらく他社さんも同じだと思います。ちなみに多くの製品がMac上でもウィンドウズのウイルスを検知しますので、Winユーザの友人へ誤ってウイルスを送るのを阻止してくれます。

【Q】セキュリティソフトを入れたら何もしなくていいの?

【A】OSやソフトのバージョンを常に最新にしておくことが重要です

もちろん、セキュリティソフトを入れていても気をつけることはあります! まずは、OS Xを最新バージョンにしておくことです。「セキュリティ・アップデート」が公開された場合にも必ず更新しておきましょう。また、ソフトの脆弱性を突いて悪質なコードをシステムに侵入させるケースもありますので、WEBブラウザやJava、PDFリーダなどのソフトも最新バージョンにしておくことが重要です。あとは、Macアップストアから入手できるソフトのみをインストールするのがベストだといえます。

そして、やはりバックアップは重要です。これにより、先述したランサムウェアによって暗号化された場合でも、ファイルを復元できるのですから。なお、初心者の中には、違うセキュリティソフトを2つ入れたらより安全になると思ってる人もいらっしゃいますが、Macが不安定になる原因となるので避けましょう(笑)。

【Q】iPhoneユーザが注意すべき点は?

【A】怪しいメッセージやデマは信じる前にWEBで調べることです

iPhoneのサファリでWEB ブラウジングをしていると、突然「ウイルスが検出されました」というメッセージが表示され、さもiPhoneをスキャンしているかような警告画面が表示されるとともに、それを駆除するためのアプリのインストールを促されることがあります。あるいは「○○の懸賞に当たりました」や「○○にあなたが選ばれました」といったメッセージが表示されることも実際に起こっています。このようなメッセージの多くは詐欺ですので、WEB検索で調べるなどして、決して騙されないように注意しましょう。

また、iPhoneだけに限った話ではないですが、「◯◯をするとiPhoneの動作が軽くなる」といった、よくSNSで拡散されるデマに惑わされないこと。また、そのデマを確認せずに周りに広めないようにしてください。しっかり「ソーシャルエンジニアリング」を身につけましょう。