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新規制により輸送コストが増加する可能性大

航空輸送の規制変更がモバイルバッテリの価格に影響?

著者: 山田昇

航空輸送の規制変更がモバイルバッテリの価格に影響?

充電率が問題になる

航空輸送による国際規則で、新たに「リチウムイオン電池を輸送する場合は、充電率が30%を越えないこと」という規制が追加された。この規制は2016年4月1日から準拠が義務づけられる。

この規制では、機器と同梱または機器に内蔵されている電池は対象外だ。たとえば、デジタルカメラの中に入れたバッテリや、iPhoneやMacBookの本体内に内蔵されているバッテリは、この規制の対象にはならない。しかし、デジタルカメラのバッテリの場合、本体とは別にした電池は規制の対象になってしまうし、モバイルバッテリもやはり予備電池と見なされ対象となる。

個人が旅客機で移動する場合、カメラバッテリやモバイルバッテリなどは以前から預け入れが不可能で、手荷物として機内に持ち込む必要があり今回の規制とは無関係だ。この規制で一般消費者が注意すべきは、海外通販などを利用したときの航空輸送だ。

たとえば海外通販などでデジカメや格安SIMフリー端末などを購入した場合、バッテリが本体内ではなくパッケージ内に単体で同梱されていると、この規制に抵触してしまう可能性が出てくる。そしてその場合、発送元が30%以下のバッテリ容量であることを証明しないと没収されてしまう恐れがある。しかし、デジタルカメラのバッテリには充電率を示すLEDなどが設けられていることはまずないため、証明することは事実上不可能なのだ。

その結果、規制後は海外通販で購入したものがなかなか手元に届かず、苛立ちを抱えることがあるかもしれない。

価格への影響に懸念

また、この規制は、多くのモバイルバッテリメーカーにも影響を与える。モバイルバッテリの多くは中国をはじめ海外で製造されているが、バッテリ充電率が30%以下であることを証明しないと船でしか輸送できなくなる。価格競争が激しいスマートフォンアクセサリ市場においては、船便を使ったほうが価格面で有利になるかもしれないが、製品出荷のレスポンスが悪くなり、在庫補充の時間や輸送時間ではデメリットにつながりかねない。

さらに今回の改正では、バッテリ充電率以外にも新たな規制が設けられている。「セクションII(下表参照)の貨物は1件の出荷につき1梱包まで」、「荷送人はリチウム電池の貨物を他の貨物と離して受け渡さなければならない」などといったもの。こうした制限が新しい充電量制限と組み合わさることで、メーカー側は輸送の準備が増え、ひいては輸送コストの増加につながって販売価格が上がってしまう可能性もある。

これは、アップルが先日発売した「iPhone 6s スマートバッテリケース」も例外ではない。アップルも、この規制に対応するなんらかの手段を講じてくるはずだ。今後は、こうしたバッテリ製品の価格変動に注視していく必要があるだろう。購入を検討している人は、早めに買ってしまうのが得策かもしれない。

■リチウムイオン電池を貨物機輸送する際の制限

リチウムイオン電池は、セクションの違いによって危険品申告書の有無や梱包方法など、取扱方法が細かく変わってくる。エンドユーザが製品によるセクションの違いを心配する必要はないが、リチウムイオンバッテリの輸送にさまざまな制限があるということは知っておくといいだろう。

【News Eye】

リチウムイオン電池は、旅客機移動での預け入れは不可能で、手荷物で機内に持ち込む必要がある。ワット時定格値が160Wh以上のものは手荷物としての持ち込みも不可能だが、大容量のモバイルバッテリでも160Whを越えることはないため心配は無用だ。