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「読む」~『心理学的に正しいプレゼン 聴衆を納得させる99のアプローチ』書評

著者: 徳本昌大

「読む」~『心理学的に正しいプレゼン 聴衆を納得させる99のアプローチ』書評

第9回 人を学び、心をつかんでジョブズのような名プレゼンテーターに!

あなたのプレゼンは正しい? 正しくない?

プレゼンが苦手という人は多いと思いますが、そこにはコツがあります。カリスマ心理学者でもある著者は、プレゼンを成功させるためのアプローチを知り尽くしたプロフェッショナル。本書のプレゼン技術を身につけて、苦手意識をなくしましょう。

どんなプレゼンテーションも、2つの立場から成り立ちます。すなわち、話をするためのあなたと、聞く聴衆です。すばらしいプレゼンテーションを行ないたければ、人について多くのことを知らなければなりません。(スーザン・ワインチェンク)

プレゼンテーションで成功するためには、人について学ぶことが重要で、最新の心理学のテクニックを使う理由がここにあります。脳の特性を理解し、それをプレゼンに活用することが重要なのです。

そのよい例が、「聴衆に記憶させる」ためのメソッドでしょう。本書によれば、脳は一度にわずかな情報しか意識して処理できないので、情報は小さくまとめて開示すべき、なのだそうです。つまり、プレゼンとして与えるべき情報は、聴衆がその瞬間に必要とする最小限の事柄だけなのです。説明文や数字だらけのスライドでは、どこに意識をフォーカスしてよいかわかりません。私はできるだけワンビジュアル・ワンメッセージで作るようにしていますが、本書を読んで心理学的にもこの方法が正しいことがわかりました。

また、プレゼンにストーリーを持たせると、聴衆は話を聞いてくれるようになります。登場人物や具体例を入れることで、無味乾燥な情報でもわかりやすく、興味深く、忘れられないものになります。

時間にも気をつけましょう。有名なTEDのプレゼンが20分なのにも理由があります。ある研究によると、プレゼンの理想的な時間は20分なのだそうです。短くて長いこの時間の中で、聴衆の関心を失わないようにする秘訣は、物事を予測できないようにすること。質問し、動き回り、テーマを変え、ときには話を突然中断することで、聴衆を引きつけるのです。

ここまで書いていて、我らがスティーブ・ジョブズのプレゼンを思い出しました。キーノートのラストにある「ONE MORE THING」を期待しワクワクしながら、彼のプレゼンに聞き入ったものです(この最後のお楽しみはティム・クックのプレゼンにも引き継がれています)。動画で彼のプレゼンを見ながら、本書のアプローチ方法を確認すれば、きっと人を感動させられるプレゼンができるようになりますよ!

心理学的に正しいプレゼン

聴衆を納得させる99のアプローチ

スーザン・ワインチェンク著

イースト・プレス/1620円

2015年刊

徳本昌大

iPhoneやソーシャルメディアのビジネス活用を絶えず考える読書ブロガー。複数の広告会社勤務後、コミュニケーションコンサルタントとして独立。現在は、株式会社Ewil Japan、タキマテック株式会社、株式会社ビズライト・テクノロジーの取締役としても活動中。【URL】http://tokumoto.jp/