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マミヤ狂四郎が語るモバイルアプリの可能性

[USER INTERVIEW 2]iPad Proで加速するマンガ制作のワークフロー

[USER INTERVIEW 2]iPad Proで加速するマンガ制作のワークフロー

マンガ家

マミヤ狂四郎(GO羽鳥)

1979年生まれ、東京都出身のマンガ家。イラストレーター、コラムニストとしても活躍中。「くだらなくて、おもしろい出来事などをお届けする」ロケットニュース24編集長「GO羽鳥」としても知られている。著作に『絶対に返してはいけない 迷惑メール、LINE乗っ取りにマジレスしてみた。』(ワニブックス)、『アジア裏世界遺産』(幻冬舎)など。

生粋のMac+アドビユーザ

「私のハゲ写真が勝手に『薄毛対策メルマガの広告』に使われていたので広告の作者に挨拶しに行ってみた」など、独自視点の取材企画で人気を集めるネットニュースメディア「ロケットニュース24」の編集長であり、マンガ家のマミヤ狂四郎さん。自ら企画を立て、記事を執筆し、ときにはイラストまでその場で作成してしまうというパワフルな仕事ぶりが真骨頂だ。古くからのMacユーザであり、アドビ製品との付き合いも長いという。

─ はじめて購入したMacはPerforma5280でした。フォトショップのバージョンは4だったと思います。当時はまだマンガ家としてデビューする前で、秋葉原界隈でミニコミ誌を作ったりしていました。ペンタブレットなどの導入は早かったと思います。デビュー初期はコーレル社の「ペインター」でペン入れをして、文字入れや調整にフォトショップを使っていました。2003年に出版社の仕事を辞め、放浪の旅に出た頃にセルシス社の「コミックスタジオ」も使い始めたのですが、今も「クリップスタジオペイント」には移行できていません。現在のマンガ制作環境は、13インチのMacBookエアとワコムの液晶ペンタブレット、そしてアドビCCですね。iPadプロも購入したので、アップルペンシルと一緒に使い始めたところです。

最強の組み合わせ

iPadプロでは、アドビのモバイルアプリである「フォトショップ・スケッチ」「イラストレータ・ドロー」「フォトショップ・ミックス」「カンプCC」などを試験的に使い始めたという。

─ 使い始めたきっかけは、実際に動作する様子を間近で見て、その場でヤラれちゃったんですよ(笑)。すぐに注文しましたね。アップルペンシルが届くのに1カ月かかってしまいましたが、その間は人から借りたペンシルで描きまくっていました。以前もiPadでペン型のデバイスは使っていたのですが、仕事で使うにはイマイチかなと思っていました。でも、iPadプロとアップルペンシル、アドビのモバイルアプリの組み合わせはすごい。現時点で最強ですね。これなら仕事でもいけるかもという確かな手応えを感じました。

iPadプロを使ってマンガやイラストを描くときに、特に便利と感じるのは「パース定規」機能とのこと。この機能を使うと、指先でパースを拡大したり、角度を変更して二点透視または一点透視図法で消失点を表示できる。

─ フリーハンドであまり定規は使わない作風なのですが、やはりこうした補助機能があるとイラストの作成が大幅に楽になって、作業スピードの向上につながります。特に、WEBのように即時性が求められるメディアでは、こうしたツールの存在はありがたいですね。あと、これはアップルペンシルの機能ですが、ペンを寝かせて書いても自然に認識してくれるのは便利です。昔のタッチペンは誤認識しないようにペンを立てて描画しなければならなくて、「習字かよ!」というのが多かったですからね(笑)。

一方で、モバイルツールをマンガで利用する際には、注意する点もあるとマミヤさんは指摘する。

─ アドビ製品は基本的に“マンガ家専用”ではなくて、製図などの一般的な用途を想定しています。なので、機能をそのままマンガに使うには難しく、ある程度設定をカスタマイズする必要があります。たとえば、Gペンのようにペンの入りと抜きの表現を重視したいのであれば、カスタムブラシを使うとよいでしょう。クリエイティブ・クラウドでブラシを一度作ってしまえば、自動的に同期してiPadだけでなくMacでも使えます。皆さんも体験版で便利さを実感していただきたいですね。

マミヤさんの作品

下描きなしの1発で仕上げることが多いマミヤさん。これまではMacBookエアと液晶ペンタブレットを使っていたが、現在はiPadプロとアドビのモバイルアプリ「フォトショップ・スケッチ」「イラストレータ・ドロー」などを試験的にワークフローに導入中。

どこでもマンガが描ける

アップルペンシルの書き味はかなり実用的で、ディレイ(遅延)もほとんど感じないとのこと。「驚いたのは定規機能ですね。雲形定規で簡単に線が引けるんですよ、自分のマンガにはあまり定規は使ってなかったんですが(笑)」。

カスタムブラシの作成

iPhoneでキャプチャした画像をベクター化してカスタムブラシを作成できる「アドビ・キャプチャCC」。作成したブラシは同期されて、iPadやMacでも同じカスタムブラシを利用できる。写真はマミヤさんの顔を利用したカスタムブラシ。

WEBはスピードが命

将来的にはマンガ作成のすべてのワークフローをiPadプロだけで完結するように移行したいというマミヤさん。現状ではツールへの慣れという課題もあるため、スピードが求められる作業ではMacとの連係作業が必要とのこと。

─ 原稿サイズが決まっている紙媒体の場合、コミックスタジオでコマの大枠のテンプレートを作成し、それをiPadに読み込み、その上のレイヤーにペンで描いています。色塗りはMacに飛ばしてフォトショップ上で自分で組んだアクション、具体的には範囲を自動選択して拡張して塗りを乗算するといった過程をワンボタンでできるように効率化しています。

作業の効率化にこだわる一番の理由は、やはりWEBメディアは「スピードが命」だからだという。

─ iPadプロも液晶ペンタブレットもモバイルアプリもそうなのですが、やはり作業時間が短縮できるというのが選定のポイントですね。たとえば、速報性を求められるニュースをいち早く報じたいとき、記事の執筆中に顔写真の手配が間に合わないこともあります。その場合、画像なしで掲載するよりはイラストがあったほうがいいですよね。もしあと3時間待てるのであれば、外部のイラストレーターさんに発注するかもしれませんが、あと5~10分での勝負となったときは自分で描くしかありません。そういった場面でも、iPadプロとアドビのモバイルアプリがあれば素早く対応することができます。

また、スピードの向上と同時に、いつでもどこでも同じ環境で作業できるアドビのモバイルアプリには強く期待しているという。

─ 以前は海外取材の出発直前まで空港にMacとペンタブレットを持ち込んでガリガリ描いていました(笑)。でも、iPadプロとアドビのアプリだけで仕事できるようになれば、持ち物も減るし現地からでも東京と変わらずマンガやイラストの仕事ができます。作品のクオリティを落とさずに、そういう柔軟性のある仕事のスタイルに移行できるのはとてもうれしいですね。

最後の仕上げはMacで

iOSデバイスとMacをクラウド経由でシームレスに作業できるのがアドビ製品の利点。「iPadだけで作業が完結するのが理想ですが、今のところiPadで描いたイラストはMacのフォトショップCCで彩色できるので問題ありません。この機能だけでもCCにする価値あると思いますよ!」。