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藤原鉄頭の明日のためのアプリ

第19回 文系のひそかな憧れ? 電子工作の世界に挑戦してみた

著者: 藤原鉄頭

第19回 文系のひそかな憧れ? 電子工作の世界に挑戦してみた

理系王道の趣味

昨年話題を呼んだドラマ「下町ロケット」は、元宇宙科学開発機構の研究者だった社長率いる従業員200人の中小企業が、傲慢な大企業を相手に技術力と信念で立ち向かう姿を描いた感動作。こちらのTBS版は数話しか見ていないものの、2011年放映のWOWOW版は全話観ていて、大変面白かった記憶がある。

この「下町ロケット」の主人公は、いわゆる理系男子である。それもロケットエンジンの要となるバルブシステムを開発しちゃうくらい優秀な技術者だ。その他のキャストも〈いい役〉には理系が、〈ヤな役〉〈ダサイ役〉には文系が多かった気がする。文系を自負するワタクシとしては、そこにいささかの不満はあるが、実際の話、理系って頭脳明晰で論理的なイメージがあるから、まぁしかたないか。そしてそんな「下町ロケット」のデキる(理系の)男たちが、若い頃にきっと楽しんだに違いないと思われるのが、電子工作だ。

電子工作とは、ハンダゴテやニッパー、テスターなどを駆使して、ラジオや温度センサなんかを作るアレである。悪くいえば地味で暗くてオタクっぽいが、良くいえば男の子らしくって決してバカじゃできない理系王道の趣味。文系としてはひそかに憧れつつも(特にハンダを扱う職人的なトコ)、なかなか手が出ない異次元世界だ。

ワタクシは思うのですよ、もしも若い頃に電子工作をやっていたら、違う人生があったんじゃないかと。いや決して大げさでなく真面目な話。まずメカに対するアレルギーがかなり軽減したはずだし、物事を理詰めで考えられるようになっていたに違いない。そしてなにより、すごい特許を取って大金持ちになっていたかもしれない…。

子どもだけのアプリじゃない

ヨタ話はさておき、電子工作に夢を抱きつつも、結局は手を出さなかったわけだが、今回その積年の思いを晴らしてくれそうなアプリと出会ったので、ぜひ紹介したい。遊びや実験を通じて子どもたちに探究心と参加する心を促すユニークな教育アプリを提供し続けているタイニーボップ社の会心作「エブリシング・マシーン」だ。

簡単にいうと、工具を使わない電子工作アプリ。用意されたパーツを組み合わせて好きなマシンを作って遊んで、そして学ぶ。たとえば、バッテリにボタンスイッチと電球をつなぐ。するとボタンを押している間だけ電球が点くマシンができる(ふむふむ)。電球を懐中電灯のパーツに換えると、スイッチでiPhoneの裏側のフラッシュが光る懐中電灯マシンになる(おおっ)。今度はスイッチをスライダスイッチに取り替えると、iPhoneが調光付き懐中電灯になる(なんと!)。という具合に、パーツを取っ替え引っ替えしてみることでいろいろな結果が得られる、まさにトライ&エラーな精神が楽しめるアプリなのだ。

さらにこのアプリで注目すべきなのは、懐中電灯の例でもわかるように、デバイス本体が内蔵しているハードウェアやセンサなどの機能もパーツ化されていることだ。マイク、カメラを使って色・光・動作・音声・顔検出などを行うマシンを作ることができるし、アップルウォッチとの連動まで可能なのだ。いやはやスゴイ。これは子どもだけに遊ばせておくアプリじゃないだろう。

しかも現実の電子工作は、パーツや工具を揃えるのが手間だしお金もかかると思われるが、アプリだとその心配がないのもありがたい。アプリの代金のみで電子工作のエッセンスを楽しむことができる。まずはここから始めて、いずれはリアルな電子工作へ。それがワタクシの「下町二段ロケット計画」なんである。

タイニーボップのエブリシング・マシーン

【作者】Tinybop Inc.

【価格】400円

【カテゴリ】App Store>教育

難しい理屈はとりあえず抜きにして、そこにあるパーツを組み合わせることで、いろんなマシンを簡単に作ることができる発明アプリ。いわゆる電子工作をデジタル化した子ども向けの教育アプリだが、作ったマシンにあとから手を加えるなど、いろいろ工夫が楽しめるので結構奥が深い。iPhoneとiPadの両方に対応している。

楽しみながら論理力を鍛える!「電子工作アプリ」にチャレンジ

●オープニング

子ども向けとはいえ、レベルは低くない。オープニングを飾る回路図風アニメーションが、オシャレでポップ、センスの良さを表している。このあと、簡単なユーザ登録があって、本格的にアプリが始まる。

●マシンを作る&遊ぶ

新規に1から作る場合は右上端の「+」をタップする。すでにあるマシンを選ぶ場合は、その図をタップする(枠をタップすると枠色の変更画面になる)。最初は素直に「ここから始めます。」 を選ぶといいだろう。

●ここから始めます。

画面にはバッテリとトグル(スイッチ)と電球があるだけだ。根っからの文系だと、正直、どこから手をつけていいのかわからないカモ。そんなときは、まず画面右上の解説動画をチェック。どんなことができるのかがわかる。さらに詳しくアプリを知るには、画面上中央の「?」をタップすると、マニュアルが開く。(上)

マニュアルにはアプリで使えるさまざまなパーツや、それらを組み合わせて作ることのできるマシンのサンプルが紹介されている。大いに参考になるので、必ず目をとおしたほうがいいだろう。顔認識や通信機能といった高度な技術が、実に手軽に使えることにきっと驚くに違いない。(下)

いろんなカメラを作ってみる

①バッテリにカメラをつなぐと、デバイスのカメラ機能が作動する。さらにビデオプレーヤをつなげばカメラからの映像を見ることができる。それにカラーシフタで色のフィルタをかけてみた。

②今度は万華鏡をつないでみた。

③色+万華鏡で加工した映像をビデオセーバで動画として保存するマシンを作成してみた(ちゃんと録画されてました)。

遠隔操作で別のデバイスに喋らせる

2台のデバイスを使って、遠隔操作が行える。タイプトーカーを使って日本語を読み上げさせることも可能だ。

【担当者後記】

「タイニーボップのエブリシング・マシーン」は、アップルが選ぶ「今年のベスト(Best of 2015)」にも選ばれた優秀アプリ。アプリのテーマや機能面もさることながら、なんといっても、子どもがおもちゃとして遊び続けたいと思えるようなポップなデザインセンスがグッドです。

【担当者後記】

タイニーボップの他のアプリには、グラフィックスを加工してユニークなモンスターを作り出せる「ザ・モンスターズ」、地球とそれを形作る地質学上の現象をインタラクティブに解明していく「地球」など、創造性に富んだものがさまざま。どれも大人が遊んでも楽しめるアプリです。