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「あの人、誰だっけ」と困ることがなくなりました。

[Chapter 3]株式会社ベンチ 横石 崇さん●デキるビジネスパーソンのとっておきソフト?

著者: 山田井ユウキ

[Chapter 3]株式会社ベンチ 横石 崇さん●デキるビジネスパーソンのとっておきソフト?

「あの人、誰だっけ」と困ることがなくなりました。

横石崇

1978年生まれ。多摩美術大学卒業後、クリエイティブエージェンシーを経て株式会社ベンチを共同で起業。コミュニケーションプロデューサーとして、ブランド開発やプロモーション戦略、ビジネス開発、コミュニティ運営などを行っている。

横石さんのとっておきソフト

Evernote

【開発】Evernote
【価格】無料
【カテゴリ】Mac App Store>仕事効率化

マルチデバイス対応のコミュニケーションツール。2013年のサービス開始以降、開発者・エンジニアを中心に人気を呼んでいます。チャンネルによるグループ分け、豊富な連係機能などが特長です。

人脈管理にソフトを活用

クリエイターを発掘、育成し、ともにプロダクトや広告、キャンペーンなどの事業を行う会社「ベンチ」。ブランディングと採用の両面から企業活動をサポートできる稀有な会社として、さまざまなオファーが殺到しています。にも関わらず、ベンチの社員はわずか2人。これは2012年の起業当時から変わっていません。同社の横石崇さんは、イベントやキャンペーンの企画運営から人材育成まで幅広く手がけるプロデューサーです。仕事柄、打ち合わせや現場に足を運ぶことが多く、会社にいる時間はほとんどないそうです。

とにかくたくさんの人と毎日のように顔を合わせる横石さんですが、意外なことに人の顔を覚えるのが苦手なのだそう。本人は頭をかきながら「プロデューサー失格ですよね(笑)」と苦笑い。そんな横石さんのビジネスを支えているソフトがエバーノートです。

同ソフトは、テキストや画像、音声など、あらゆるファイルを保存しておけるクラウドサービスで、登場以来多くのユーザに愛されてきました。「記憶装置」としての明確なコンセプトを持つ一方で、何をどう保存するのかはユーザに委ねられており、人によって使い方が異なるのもエバーノートならでは。横石さんの主な使い方は人脈管理です。

「名刺というものがずっと嫌いだったんですよ」と、横石さん。その理由は、せっかく名刺を交換してもその整理が煩雑で、どうしてもファイルに入れっぱなしになりがちだから。あとから活用しないのでは、無意味に名刺ファイルが増えていくだけです。たまっていく一方の数千枚の名刺に悩まされていた横石さんを変えたのが、エバーノート、そしてスキャナのスキャンスナップ(ScanSnap)でした。

「今の会社を起ち上げる前、世界一周の旅に出たのですが、そのとき紙ものを整理しようと思って見つけたソフトがエバーノートでした。なので、最初は断捨離のためのソフトでしたね」

帰国後、横石さんは小島幸代さんと一緒に株式会社ベンチを設立。クリエイターを応援するプロデューサーとしてキャリアをスタートさせます。ずっと嫌いだった名刺の管理をエバーノートに任せてみようとひらめいたのは、そのときでした。

名刺はすべてスキャンスナップでスキャンし、エバーノートに保存します。エバーノートに保存した名刺はiPhoneでも見られるため、人と会う直前にその人の情報をチェックできるようになったのだとか。さらにフェイスブックの情報と紐付けることで、顔写真やパーソナルな情報まで事前に調べられます。エバーノートを使い始めてから、「あの人、誰だっけ」と困ることがなくなったと横石さんは言います。

アナログとデジタルの間

エバーノートに入れるのは名刺だけではありません。横石さんならではの使い方が、ポストイットとエバーノートの組み合わせ。クライアントにPDFで請求書を送る際、ポストイットに手書きのお礼や似顔絵などを描いてスキャンし、エバーノートに保存。請求書に添えて送るのだそうです。請求書をもらって、思わず顔がほころぶ相手の顔が見えるよう。これが、横石さん流の遊び心です。

名刺を徹底的にデジタル化する一方で、ポストイットのように手書きにもこだわる横石さん。デジタルとアナログ、どちらか1つにこだわるのではなく、両方の長所をうまく取り入れて仕事をしています。

「良いクリエイターって、人間的にも愛される存在であることが多いんですよ。結局、最後は人ですし、この人と仕事がしたいと思えるかどうかが大事。デジタルに極端に寄ってしまうと、相手の顔が見えにくくなるんですよね。手書きのほうが相手との距離が近い感じがするんです」

アナログの良さを大事にしつつデジタルと上手に付き合って効率化を進める、という明確な方針を持つ横石さんですが、ではエバーノート以外にどんなソフトを使っているのでしょうか。

「エバーノートはあくまでも自分の仕事を効率化するためのソフトです。一緒に会社をやっている小島とファイルを共有するのは、ドロップボックスを使います。社外の人とはグーグル・ドキュメントですね。人との連絡はフェイスブックのメッセンジャを使うことが多いです」

1つのソフトに1つの役割を持たせてシンプルに使い分けるのが横石さんのやり方です。

「マルチタスクが苦手で、1つのソフトにすべてを任せると自分が混乱するんです。棚の使い方が自分の中で決まっているのだと思います」

プレーヤーであるクリエイターをベンチ裏から応援したい、そんな意味が込められた社名。逆に横石さんにとっての「ベンチ」は、エバーノートをはじめとする、さまざまなソフトなのかもしれません。

エバーノートとスキャンスナップの組み合わせが最強

横石さんのスキャンスナップはエバーノートエディション。ボタン1つで自動的にスキャンからエバーノートへのアップロードまでやってくれるそう。

手書きのメモをデータで送る

横石さんの手書きメモ。紙の書類をデータに置き換えると、そのやりとりは無味乾燥になりがちです。そんなときは、あえてアナログ感のある手書きメモをデータ化して添付。紙の書類にある付箋メモの習慣をデジタル化しているのです。こうしたことを思いつく人って、案外少ないのでは。

本はコミュニケーションツール

人間味やアナログ感を大事にする横石さんの姿勢はオフィスにも表れています。棚に並ぶたくさんの本のことを尋ねると、「本はコミュニケーションツールなんです。ただ読むだけならデジタル化してしまえばいいのですが、オフィスに来たお客さんと本の話題で盛り上がることもあるし、お貸しすることもあります。こういった使い方はデジタルではできないことですね」。

[Company Profile]株式会社ベンチ

小島幸代氏と横石崇氏の2人により2012年創業。クリエイターをサポートすることをミッションとし、「探す」「育てる」「創る」の3つの柱で事業を展開する会社。バスキュールとPARTYの学校「BAPA」の運営や「TOKYO WORK DESIGN WEEK」などのイベントを主催するほか、求人サポートやキャリアカウンセリング、事業開発サポートなども行っています。【URL】https://www.bench.jp