たくさんのインプットをして、
質の高いアウトプットをしたい
多田圭佑
ホリデー株式会社のデザイナー兼開発責任者。クックパッド株式会社に新卒社員として入社すると同時にHolidayというサービスの起ち上げに参画(当時はクックパッド株式会社ホリデー事業室)。以来デザイナー兼開発責任者としてホリデーのプロダクト開発を担っている。
多田さんのとっておきソフト
Sketch
【開発】Bohemian Coding
【価格】99ドル
【URL】https://www.sketchapp.com/
ベクタードローツールの定番ソフト。アプリUI制作では、多くのデザイナーが使用しており、イラストレータやフォトショップから移行するデザイナーも増えているようです。
ユーザの考えに触れたい
「ホリデー(Holiday)」は、日帰りを中心としたおでかけプランの投稿・検索サービスです。2014年9月にスタートした新しいサービスですが、すでに自分のおでかけプランを投稿する人、その投稿を読んで出かけてみる人の輪が生まれて、人気のサービスになっています。ホリデーはわずか数人のチームで運営されていて、その中でデザイナーとして活躍しているのが多田圭佑さんです。
多田さんの主な仕事は、WEBとスマホ用アプリのデザインですが、小さなチームで運営しているため、その他の仕事もやらざるを得ません。
「デザイン周りだけでなく、サービスの企画や、コアな部分のコーディングもします。ユーザからの問い合わせにも対応します」
多田さんは、1日の仕事の時間の中で、デザインワーク以外にも、さまざまな仕事をモザイクのように組み合わせてこなしています。
「確かに集中できる時間を長くとることはできません。ただ、そのおかげでユーザの声をしっかり捉えられることは、とてもよいことだと確信しています」
ユーザがいちばん心地良いと感じるデザイン、それはデザイナーが決めるのではなく、ユーザに選んでもらうことで決まってくるのだという考え方です。そのためには、デザインワークだけではなく、チーム全体のさまざまな仕事(ときには雑用ですら)をやることで、視野を広く持つことができ、ユーザの考え方に触れる機会が増えるのだと考えているそうです。
「ユーザが本当に求めているものは、ユーザ自身にもわからないのだと思います。そのため、ユーザからの問い合わせや意見は、時間がなくても必ず目を通します。そこにデザインの重要なヒントが隠されていることがあるからです」
組み合わせで効率化
「ユーザを中心に考える」。そのために多田さんは、1つのデザインを作りあげるときに、無数のプロトタイプを作って比較検討します。アプリの画面をデザインするときは、グラフィックスソフト「スケッチ(Sketch)」を使い、そこで作成したグラフィックスをプロトタイピングツール「フリント(Flinto)」に入れ、タップやスワイプ、画面遷移などをチェックします。このようなプロトタイプをたくさん作ってみて、チーム全員で確認するというのが多田さんの仕事の進め方です。
「アプリを大きく変えるときは、グラフィックスも作らず、メモ用紙に手書きしたアプリ画面を撮影して、動きをフリント上で確かめるということもよくやります」
このようなデザインワークをするときは、当然ながら集中力が必要です。一般的なデザイナーやエンジニアは集中をするために、個室に閉じこもったり、パーティションで視野を塞ぐなどすることもあるといいますが、多田さんは短時間で瞬間的に集中できる工夫をしています。
多田さんが業務に使うツールは、グーグル・カレンダーやグーグル・アナリティクスなどWEBベースのものがほとんどです。しかし、アクセスするためにはいちいちサファリのタブをクリックして切り替えなければなりません。このクリックが集中を途切らせてしまうので、WEBページをソフト化できる「フルイド(Fluid)」を愛用しています。これを使うと、WEBページを1つのソフトとして扱え、独立したウインドウで表示されるので、画面にタイル上に並べておくことができるのです。これでいちいちクリックしなくても、必要な情報が常に目の端に捉えられるようになります。また、「スレイト(Slate)」を使って、ウインドウの並べ方も複数設定しておき、業務に合わせて、必要な情報が一覧できるようにしてあります。
「業務に集中をするためにこれらのソフトを使っています。チャットなどの通知はオフにしていますが、チャットのウインドウは見られるようにしてあるので、自分のタイミングでメッセージを読むことにしています」
いきなり飛び込んでくるメッセージの通知は、業務への集中を途切らせてしまいがちです。これをオフにしておくことで、自分自身のタイミングでメッセージに対応できるようになるのです。レスポンスは数十秒から数分遅れてしまうこともありますが、重要な作業をしているときに集中を維持して、一区切りついたところで、別の作業に頭を切り替える。こうして短時間で集中できるようにしています。
集中力を持続させるために
多田さんは、Macのほとんどの操作をキーボードからできるようにしてあり、トラックパッドはグラフィックワークぐらいにしか使わないのだそうです。
「キーボードは操作ミスが少ないんです。たとえば、トラックパッドでウインドウのクローズボックスをクリックするときは、カーソルの微妙な位置合わせが必要になります。些細なことですが、この位置合わせが集中を途切らせてしまうような気がするのです」
多田さんが働くオフィスは、パーティションがほとんどないオープンな空間。いつも同僚の顔が見え、椅子を回すだけですぐに話ができる環境です。その空間の中で、デザインワークやコーディングといった集中力を必要とする仕事をするときには、瞬時に集中力を効かせなければなりません。
「ユーザを中心に考える」多田さんの意識は、現代の企業にとって共通した認識になっています。作る側の正解をユーザに押しつけるのではなく、真摯にユーザの声に耳を傾け、教えを請うことで、質の高い製品、サービスが生まれてくるという考え方です。そのためには、常に周囲にアンテナを張りながら、作業にも集中しなければならないという、一見矛盾したことを同時にこなさなければなりません。多田さんの働き方の工夫は、この問題を解決することが基本になっているのです。「たくさんのインプットをして、質の高いアウトプットをしたい」という多田さんは、オフィスの中にいてもたくさんの刺激を受け、Macに向かうときには集中ができる、そういう理想的なMac環境を構築しています。 (取材・文/牧野武文)
[Company Profile]ホリデー株式会社
「Holiday」は、「いつもの休日を楽しみに」をコンセプトに「今度の休日どこいこう?」という悩みを解決する、おでかけプランの投稿・共有サービスです。全国のおでかけ好きなユーザが投稿するプランが集まるので、有名なスポットでもいろいろな楽しみ方を知ることができ、地元の人しか知らないガイドブックには載っていないようなスポットを発見できます。アプリ版なら外出先でも、全国のおでかけ好きなユーザが投稿するプランを簡単に見つけられます。【URL】https://haveagood.holiday/