MacBookよりも軽い重量に驚愕
iPadプロは12.9インチのディスプレイながら、レティナディスプレイを搭載した13.3インチのMacBookプロよりも総ピクセル数が多い。これだけのサイズのものを1枚のスレート(板)に落とし込むと、手に持ったときのディスプレイの巨大感には圧倒される。正確な数字は違うが、iPadプロの横向き表示で、iPadエアの縦表示が2枚入る、ざっくりとだがそれくらいのイメージを持ってくれていい。画面サイズが大きくなった分、アプリアイコンの間隔がわずかに広がったほか、アイコンサイズもわずかに大きくなっている。
iPadプロとiPadエア、iPadミニを重ねた様子。そのサイズ感の違いがまじまじとわかる。
iPadプロを横向きで持ったところ。もちろん長時間は疲れるが、片手でも十分持てる。
iPapプロはアイコンサイズが、これまでと比べて大きくなっている(左がプロ)。併せてアイコン間のスペースもわずかに空いた。
Apple Careには入りたい
その大きさゆえ、iPadプロは落下による破損トラブルが発生する危険性が高い。この場合は製品保証は適用されず、保証対象外(OOW)修理サービスを使った本体交換によってiPadを修理することになる。価格は7万4400円(税別)と、修理代がMac並みとなってしまう。
別売りのケースは、ぜひとも付けておきたいところ。前面のみを覆うスマートカバー(写真)は7800円(税別)、前面と背面を覆うシリコーンケースは9800円(税別)だ。
Apple Pencilは絶対必要である
iPadプロ最大のキラーツールであるアップルペンシル。1万1800円(税別)という価格設定にもかかわらず、同時購入を希望するユーザが大半を占め、アップルの供給力を大幅に超えるほどの人気を博す。
その爆発的ともいえる売れ行きの秘密は、アップルペンシルの圧倒的な「表現力」にある。従来までのスタイラスはiOSが持つタッチイベント、つまり人の「指」の延長でしかなく、筆の持つ本来の持ち味はほとんど活かされていなかった。これをアップルペンシルはその細いペン先を忠実に、しかも遅延なく軽快に再現する。また、ペンを握っているときは画面に手を付いていても操作に干渉しない「パームリジェクション」にも対応しているため、自然な形でペンを扱える。
アップルペンシルは単に従来までのスタイラスの不満点を解消しただけではない。たとえばペイントアプリとして有名な「Procreate」を使うと、画面にペン先を押し付けた筆圧で「トメ・ハネ・ハライ」が意図したとおりに再現されるが、さらにペンシルを傾けると、線の太さや濃淡までがまるで鉛筆や木炭で描いているかのような擦れ具合いで再現される。
また、純正アプリである「メモ」のように単にスケッチをするだけでなく、ハイライトを引いたり、作図中に二本指で画面をタッチするとクイックに定規が表示され、その上をアップルペンシルでなぞるときれいな直接が弾けるようになる。このように、デジタルならではのメリットを追求した「紙の延長線上にあるツール」としての方向を明確に示している。
初回ペアリング時には底部のマグネットキャップを外すと現れるライトニング(Lightning)端子をiPadプロに直接挿せば完了する。また、充電時も同様に行われるという仕様は今までになかったものだ。
これは「見た目よりも、ユーザがつなぐ必要があるケーブルを減らすためにどうしてもやりたかった」と、デザイン担当のジョナサン・アイブ氏。充電中はアップルペンシルが「刺さった」状態になるため置き場も含めて取り回しが悪くなるが、その代わり約15秒の充電で30分使えるようにする急速充電を実装。その負担は可能な限り低くなるように設計されている。
アップルペンシルを持つことこそiPadプロの「新次元の魅力」を引き出していると言っても過言ではない。どんなユーザが購入しても極めて満足度の高いアクセサリの1つになるだろう。
メモアプリ上で、ペンの傾きを変えて線を書いてみた様子。アップルペンシルは筆圧や向き、傾きを高い精度で検知する。
iPadプロは指を使っているのか、ペンシルを使っているのかを検知する。メモアプリでは、指を2本置くことで定規を表示させ、ペンシルできれいに線を描く、ということもできる。
圧倒的な反応速度がウリのアップルペンシル。そのとおり、タイムラグも少なく、直筆のような書き心地だ。
充電は、アップルペンシルのライトニング端子をiPadプロに挿入することで行われる。15秒充電するだけで30分使え、1度充電するだけで12時間使える。
ライトニングケーブルからも充電できるよう、ライトニングアダプタが付属している。
Smart Keyboardは手間いらず
iPadプロには、側面左側に「スマートコネクタ(Smart Connector)」という新しい端子がある。これにより、ペアリングや充電といった手間なしに、キーボード付きのカバーを利用可能にする。現在これを利用できるのはアップル純正の「スマートキーボード(Smart Keyboard)」か、ロジクールのiPadプロ用「クリエイト(Create)」のどちらか。
スマートキーボードは従来のスマートカバー(Smart Cover)と同様、iPadプロ本体を支えるスタンド構造を兼ね備えている。このため全長がいくぶん長めになり、ディスプレイカバー時にはキーボードを内側に折りたたむような形で格納する。しかも、この折り曲げが可能なように配線そのものをエッチング加工を施して、導電性を持つ新しい素材を作り出すという凝りよう。その結果、キーボードスペースも最小限で済む。
新しいのはキーの構造そのものも同様だ。一番上の層は、特別に織られた耐久性の高い1枚のファブリック素材から作られている。キー部分の形成にはレーザーアブレーション(焼き付けによる整形)が用いられており、それぞれのキーにスプリングのような張力が備わる(=内部に従来のようなメカニズムのない)構造となっている。
スマートキーボードを展開させたときの様子。多少組み立てが難しいのが気になるが、慣れてしまえば問題ないだろう。
iPadのスマートカバー同様に、スマートキーボードを折りたためば、スタンドとしても使うことができる。裏側が起毛になっているので、画面もしっかり保護してくれる。
iPadプロの側面にあるスマートコネクタとキーボードを接続するだけで、電源なし、ペアリングなしで使える。
スマートキーボードのファブリック素材は、耐久性が非常に高い。打鍵感は、新しいMacBookに似た、ストロークの短いキーだ。
デュアルディスプレイで実力発揮
iPadプロをMacのセカンドディスプレイとして利用すると世界が広がる。iOS向けにさまざまなアプリが登場しているが、レスポンスの良さで知られる「Duet Display」を使おう。iOSとMacにそれぞれアプリをインストールしたらライトニングケーブルで、Macと接続してiPad側でアプリを起ち上げればセットアップは完了。特に何もしなくてもこれでiPadがセカンドディスプレイとして利用できるようになる。iPadプロはフルHDをしのぐ2732×2048という高い解像度を持ち、縦横どちらでも表示ができるため、セカンドディスプレイとしても非常に優秀だ。
デュエットディスプレイはiPadプロに最適化されていないため、フル解像度では利用できない(11月21日現在)。開発元では近日中(coming soon)と案内されている。
プロユースでも使える高スペックさ
iPadプロは、その大きな画面サイズでクリエイティビティを加速してくれる。実際にプロ向けのデータを展開した際のパフォーマンスは良好だ。
キヤノンのEOS 5Dsおよび5Ds RのRAWファイルを「Adobe Photoshop Lightroom for iPad」に読み込んでレタッチや色調補正を行ってみたところ、ファイルは5000万画素、サイズにして50~80MBという非常に大きいにもかかわらず、レスポンスは良好。iPadエア2はもちろん、MacBookやMacBookエアと比較しても遜色ないスピードで作業が行える。
ライトルームを使って、レタッチや色調補正を行ってみた・。ファイルは5000万画素、50~80MBサイズにもなるが、レスポンスは良好だった。
Magic Keyboardも使える
iPadプロは、従来どおりブルートゥース接続のキーボードをサポートしている。純正キーボード「マジックキーボード(Magic Keyboard)」も当然利用が可能で、ほかのブルートゥースキーボードとの違いはない。「設定」アプリのブルートゥース項目からデバイスを選択し、ペアリングするだけだ。iOS 9より外部キーボードを使ったショートカット対応が増え、格段に利便性が増している。
マジックキーボードのスイッチを入れ、IPadプロの[設定]→[Bluetooth]をオンにし、マジックキーボードとペアリングする。
Magic Mouse/TrackPadは使えない
iOS 9では、iPadのソフトウェアキーボードを2本の指をそろえて動かすと、テキストの選択がより細かに操作できるモードが追加されている。では、この操作を外部マウスやトラックパッドを接続して利用できないだろうか。これに関してはキーボードとは逆でまったく不可。ペアリングモードにして待っていても、そもそもデバイスリストにも表示されない。iPadプロもあくまで画面タッチを前提とする「iOSデバイス」ファミリーであり、テキストアプリでの疑似カーソル操作は(現時点では)補助的なものと考えているに違いない。
マウスやトラックパットは、iPadプロ含め、iOSデバイスでは利用できない。
マルチタスキングと相性抜群
iOS 9はiPadの体験を高める機能が数多く搭載された初めてのメジャーアップデートだ。その中でも特に強化されたのが「マルチタスキング」と呼ばれるもので、同時に2つのアプリを画面の中に表示して利用できるようにしたものだ。
大迫力のスピーカサウンド
iPadプロのハードウェア改良点として期待されているのがスピーカだ。実際に再生してみるとその違いは顕著で、最大3倍といわれているボリュームが手元から再生される迫力は従来とは比較にならないほどリッチだ。バランスに関しても低音はすべてのスピーカから出力されているが、上方のスピーカは高い周波数帯を優先して出力するようになるため、より耳に近い位置に最適化されているのが感じ取れる。