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UP3 by Jawbone

身につけているだけでOK! ライフログはこれにおまかせ

著者: 氷川りそな

身につけているだけでOK! ライフログはこれにおまかせ

もういくつ寝ると新モデル

アップル・ウォッチが発売されたこともあってか、世間へ急速に「ウェアラブルデバイス」という単語が浸透しつつある今日この頃。デジタルガジェットを身につけていても好奇の目に晒されずに済むのがうれしい氷川です。

幼少のみぎりから万歩計をつけて歩くのが好きなのですが、「単につけて歩くだけ」ではなかなかモチベーションを保てません。そこで20世紀の終わり頃には、キャラクタもののミニゲームつき万歩計などを購入し、ゲーマー魂に火をつけることで三日坊主を回避。それなりに「歩数を稼ぐ」ことを楽しんでおりました。

そして今や時代は21世紀。こんな性分ですから、最新のテクノロジーで日常のさまざまな動きを記録してくれるガジェットに興味がないわけがありません。最初にアイツに会ったのは、2011年の秋。とあるイベントで某社長が「来年から日本で取り扱うんですよ」と見せびらかしてきたのが、ジョウボーンの活動量計(アクティビティトラッカー)でした。

今でこそ選択肢の多くなったこの製品ジャンルですが、黎明期だった当時から、歩数だけでなく「運動の記録も残せる」「睡眠時間とその質が計測・評価できる」といったコンセプトは非常に画期的でした。あまりに入れ込んでしまい、サンフランシスコの本社に赴き、製品の担当マネージャーにITジャーナリストの松村太郎さんと2人で趣味丸出しな突撃インタビューまで敢行してしまったのは今となってはいい思い出です。

そんなこんなで今回ご紹介するのが、最新版の「アップ3・バイ・ジョウボーン(以下UP3)」です。初代UP、UP24と使い続けながら待ち続けたニューモデル。家族に「また乗り換えて…」と冷ややかなツッコミを受けたような気もしますが、気にせずレビューしていきましょう!

ジョウボーン大好き

UP、UP24(写真下)、そしてUP3、(写真上)と、歴代UP揃い踏みの我が家(UP2は3の廉価版のためスキップ)。どんだけ好きなの、といわれそうですが、ヘッドセットの「イーラ(Era)」もスピーカの「ジャムボックス(JAMBOX)」も持っているジョウボーン信者です!

つけ心地は良好

普段はアップル・ウォッチと一緒につけているのでデジタルクラウンと干渉しないように、こんな感じで使っています。同系色で揃えている効果もあってか、あまり「つけている感」もなく、負担もありません。

三度目の正直になりそう

UPシリーズが持つ機能は前述のとおりで、歩数を測る万歩計だけではありません。ランニングやジムでのワークアウト、さらにスポーツといった「アクティビティ(活動系)」の計測機能や、夜間には睡眠時間や眠りの深さ(レム睡眠の持続時間)を計測してくれるモードまで備わっています。すごいのが、このモード切り替えによって、たとえばスポーツのアクティビティを取得しているときはごく小さな動きは無視したり、逆に睡眠時には小さな変化も見逃さないようにするなど、取得するデータのノイズを最適な形でフィルタリングして評価することで、非常に高い精度でログを残すことができるようになっています。

しかもうれしいことに、このモード切り替えがUP3になってからは自動化されました(ファームウェア・アップデートによる機能追加で実装)。以前は寝る前に睡眠モードに切り替え忘れて、目が覚めたときに「今日は記録取り損なっちゃった…」としょんぼりすることもありましたが、もうそんな日々ともおさらばです。

このほかにも、UP3には過去のUPシリーズの弱点を堅実に解消している部分が多く見られ、それはハードウェアのデザインにも表れています。従来のUPはS/M/Lの固定サイズでしたが、今回のシリーズからバンドにバックルが搭載されて、自分の手首にフィットする長さに調節できるようになりました。時計などでは当たり前ですし、何をいまさら…と思いがちですが、バンドにバッテリを内蔵するこの手のデバイスでは、バンドをここまで自由に調節可能なモデルは他社からは出ていないのです。

デザインの変更によってほかの部分も改良されています。既存ユーザにとって最大のメリットとなるのは充電機構の進化かもしれません。UPは比較的駆動時間が長い(7日から14日程度)のがウリですが、充電の際には先端のキャップを外してプラグに差し込む必要がありました。ええ…お気づきかと思いますが、よくなくすんですよね、あのキャップ。正直なところ構造の問題としか思えないのですが、紛失は自己責任扱いになるため有償で取り寄せになる(しかも結構いいお値段)という、タチの悪い冗談のような設計だったのです。でもUP3は大丈夫。安心してください、ちゃんと改良されてマグネットベースのキャップレス充電になってますよ。こういった改良の積み重ねもあってかこのUP3、非常に頑丈です。おそらく歴代でもっともタフなんじゃないでしょうか。

睡眠の質を客観的に知る

UP3で強化されたアクティビティと睡眠の分析機能。寝るときもつけていられるので、睡眠時の心拍数の推移や眠りの深さが計測できるのはありがたいです。記録に基づいて提案されるアドバイスもバラエティ豊かで、健康に対する豆知識も増えていくのが楽しいです。

充電機構は大きく進化

充電はマグネットによる接触式で、さっとつけておけるのが便利。1週間程度は連続稼働しますし、充電も60分以内に満タンになるので、出かける前にシャワーを浴びて、着替えが終わるくらいには準備完了となっているのもいいところ。

センサがすべて、じゃない

UP3が優秀なのは、ハードウェアだけではありません。専用アプリとの組み合わせでその真価を発揮します。センサが取得したデータはiOSデバイスを通じてクラウドにアップロードされ、集計や分析が行われます。iOSデバイスとの通信は低電力消費でおなじみとなったブルートゥースLEでバックグラウンドで行われるため、都度アプリを開いて同期する作業がいらないのも手間が少なくてありがたいところ。

この専用アプリと、ログを分析するクラウドサービスが非常に優秀で、センサから取得したデータから「横になった」「眠り始めた」などのタイミングや、睡眠時の「眠りの深さ」を分析してくれます。UP3には心拍計測用のセンサが備わっていますが、これを使った脈拍データと組み合わせることで眠りを「ごく浅い(覚醒に近い状態)」「浅い(ノンレム睡眠)」「深い(レム睡眠)」と細かく分類して、その質まで分析してくれるのです。

これによって「昨日は結構しっかり寝たつもりだけど、疲れが取れてないなあ」みたいな感覚も視覚的に睡眠の質で確認できるので、翌晩は寝る前にストレッチしてみたり、リラックス効果のある飲み物を飲んでみたりなど自分に合った「快眠さ」を試行錯誤でき、アプリ側からもデータに基づいて日々さまざまな提案をしてくれるのがうれしいところです。

また、UPシリーズにはバイブレーションによる目覚まし機能が搭載されていますが、これも単純に設定した時刻に起こしてくれるのではなく、設定された時刻が近づいてくると眠りが浅くなったタイミングでバイブが始まるため「アラームに気づかずに寝過ごす」という可能性が激減するという、非常にインテリジェントな機能も備わっています。これらの機能により、実際に睡眠の質が向上したのは非常に大きなポイントで、UP3を手放せなくなりました。

センサとしては取り立てて高い性能を持っているわけではないのですが、アプリとの高い親和性がハードウェアの性能を補っています。どこかで聞いたことのある「モビルスーツの性能の差が戦力の決定的な差ではないことを教えてやる」という言葉どおり、どう活用すればよいか?といったところまで設計し、アップデートで機能拡張し続けていることにこそ、UPシリーズの「コア」があるように思えます。

もちろんUP3もまだまだ完璧ではありません。バッテリ駆動時間は最大7日間ですが、前モデルであるUP24のように14日間持つようにしてほしいですし、パワーナップ(ちょっとした仮眠を取るときのタイマー)が機能ごと消えてしまっているのを復活してほしいなど要望はありますが、今までもファームウェア・アップデートで対応してくれたので今後には十分期待できます。

価格面でも歴代最高額になってしまっているUP3ですが、実際に使ってみればコストパフォーマンスには納得できるのではないでしょうか。

多彩な連携機能

UPは「ヘルスキット(HealthKit)」対応製品のため、iOS標準アプリ「ヘルスケア」にも対応しています。加えて自社でも独自に連携機能を提供しており、「ウィズシングス(Withings)」や「ランキーパー(Run Keeper)」、「IFFTT」などのデータを取り込んで分析することもできます。

氷川りそなの評価

● つけているだけでOK

● シンプルな設計

● アプリによる分析機能

● 前世代の機能をUP3にも対応させてほしい

【補足】

15年以上前に流行したミニゲームつき万歩計、スペックを確認しようとグーグル検索したところ、WEBページが公式に残っており(しかもページリンクも切れてない!)、危うく飲みかけのお茶を盛大に吹くところでした。 【URL】http://www.nintendo.co.jp/n09/pokepika/index.html

【補足】

UPに限らず、この手のウェアラブルデバイスはどのメーカーも本当によく壊れるという話を聞きます。逆にまだ壊れたことがない、なんていう人がいると「むしろその製品のほうがおかしいんじゃないですか?」などというハイブローなジョークが飛び出すことも。「素直にUP3買いましょう」と絶賛布教中です。

SPEC

[使用期間]90日

【発売】ジョウボーン

【価格】2万5880円(税抜)

【URL】https://jawbone.com/store/buy/up3

【サイズ】220(W)x12.2(H)x3.0~9.3(D)mm(手首回りは140~190mm)

【重量】29g

【備考】対応機種 : iOS 8.0以降/アンドロイド4.3以降およびブルートゥース4.0を搭載したデバイスが必要(詳細な対応デバイス一覧は【URL】https://jawbone.com/up/devicesを参照)。

氷川りそな Risonah Hikawa

システム構築からカスタマートレーニング、サポート業務までやらされる会社員兼業ライター。アップルネタで原稿代を稼いでMacやiPhoneを買うエコシステムを絶賛構築中。