大型アップデートの「真打ち」
今年リリースされたアップル製品を見返してみると、実に「豊作」だったのがよくわかる。その中でももっとも象徴的なのが、この度名称が「マジック(Magic)」シリーズに統一された入力機器たちだ。アップルは初代Macintosh(1984年)から30年以上、自社でも入力機器を設計・開発し続けている企業の1つで、豊富なノウハウと常に新しい技術に挑戦し続けることでコンピュータだけでなく周辺機器の分野においても業界をリードし続けてきている実績がある。
その中でも近年、もっとも革新的だったのがトラックパッドだ。本来、マウスが使えない場所でノートモデル向けのポインティングデバイスだったトラックパッドを、複数の指でジェスチャ操作することでさまざまな機能が使えるショートカットとして拡張させていった結果、マウスを超える利便性を生み出すことに成功した。これにより「デスクトップのMacでもトラックパッドの利便性を」と作り出されたのが、マジックトラックパッドだ。ノートよりも大きな面積を持つトラックパッドを使える利便性はノートから移行してきたユーザだけでなく、メインマシンがデスクトップの筆者のようなユーザでも、もはや手放せないほど快適な操作性を持つデバイスだ。
今回「マジックトラックパッド2」として5年ぶりにアップデートされた新型は、今年リリースされたMacBookシリーズから始まったタプティックエンジンを搭載した「感圧式トラックパッド」を採用している。さらにトラックパッド自体の面積を29%拡張し、底面全体で本体を支える台座構造に切り替えることで安定性と耐久性を向上させるなど、ユーザフィードバックを活かしたデザインにリフレッシュされている。
デザインが変わったのは、キーボードも同様だ。今まで使われてきた「アップルキーボード(Apple Keyboard、通称:109keys)」は実に8年にも渡るロングラン製品となったが、こちらも「マジックキーボード」として、完全リニューアルとなった。レティナディスプレイを搭載したMacBook向けに開発された新型キーボードを元に再設計されたシザー構造でキーを組み込み、以前よりも安定性を33%向上させた。また、マジックトラックパッド2同様に底面全体で本体を支える台座構造になり、傾斜角も今までよりもさらに浅くストロークが指に負担のかかりにくいものへと変更されるなど、リサーチと人間工学に基づいた知見から再設計されている。
改良に終着駅はなし
マジックシリーズの改良点はこれだけではない。今回マウス、キーボード、トラックパッドの3製品すべてが電池から内蔵のバッテリへと切り替わった。これによって継ぎ目がなくなり、部品としての強度が上がっただけでなく、形状が自由になるリチウムポリマー電池を内部に組み込むことで、従来の単三形乾電池よりも多くの容量を持つことが可能になった。アップルによればそれぞれ2時間で充電が完了し、持続時間は1カ月以上という。
充電端子にはアップルユーザ向けにライトニング端子が採用されており、製品にはケーブルが同梱するほか、iPhoneなどで使っているケーブルとの兼用も可能だ。しかもこのライトニング端子は、Macと接続すればブルートゥースによるペアリング設定を自動で行ってくれたり、有線接続でキーボードやトラックパッドを利用することも可能という汎用性を備える優れものだ。
キーボードやマウスといった入力機器の操作はある意味成熟しており、この20年近く大きく進化していない。コンピュータのように毎年アップデートされるものではないが、それでもアップルは何か新しい革新を与えられることはできないのかと模索を続け、トラックパッドを投入したり、今回のようにライトニング接続で充電やペアリングが可能な「マジック」シリーズをリリースする。そんなメーカーは世界に類を見ない。コンピュータを使ううえでもっとも触れる時間の多い入力機器だからこそより快適なものを、と考えるアップルのデザインにかける意欲の高さには、脱帽せざるをえない。
Magic Mouse 2
【価格】9500円(税別)
マジックシリーズに共通することだが、内蔵バッテリに切り替わった恩恵がもっとも大きいのがマウスだ。底面のバッテリカバーを廃し、スペースいっぱいまでバッテリを詰め込むことが可能になった結果、バッテリ駆動時間が大幅に伸びている。ほかの製品同様にブルートゥースでワイヤレス接続でき、最大9メートルの範囲内で利用可能だ。
●継ぎ目のない新デザイン
内蔵バッテリと継ぎ目のないボトムシェルによって可動部品が一段と少なくなり、底面のデザインも最適化され、一段とトラッキングがしやすくなっている。高さは2.16センチ、幅は5.71センチ、奥行きは11.35センチ。重量は99グラムだ。
●充電は裏返して
ライトニングコネクタ経由で充電が可能。ただし、コネクタは背面にあるので充電中は裏返さなくてはならず、使いながらの充電は難しい。
●マルチタッチ対応
表面はマルチタッチに対応しており、さまざまなジェスチャでOS Xを操作できる。クリックとダブルクリックはどの部分でも可能だ。
Magic Keyboard
【価格】1万1800円(税別)
実に8年ぶりのリニューアルとなるキーボード。有線モデルがついに廃され、ワイヤレス一択となったことで「マジック」シリーズとしてラインアップが定義され直されたこともトピックの1つだろう。デザインに関しても再設計にあたって、傾斜角や打鍵の感覚など「どこで使っても打ちやすい」ベストなものを模索した結果だという。
●コンパクトになって安定感も向上
キーボードにも改良が図られ、それぞれのキーの下にあるシザー構造により、キーの安定性が向上している。
●コンパクトになって安定感も向上
従来のアップルワイヤレスキーボードと比較したところ。サイズが若干小さくなり、またより低いフォルムとなっている。また、背面の滑り止めの接点が平らになったことで安定し、正確なタイピングを行える。
●充電しながら使える
マジックトラックパッド2およびマジックキーボードは背面にあるライトニングコネクタとMacをケーブルで接続すれば充電可能。ケーブルを接続した有線の状態でも使うことができる。
Magic TrackPad 2
【価格】1万4800円(税別)
3製品の中でもっとも進化したのがこのマジックトラックパッド2だろう。タプティックエンジンと感圧トラックパッドを組み合わせたテクノロジーは今年のアップル最大のトレンドともいえるが、デスクトップでも2段階クリックなど、パッド面を押した強さを感知して利用できるメリットは大きい。
●サイズがぐんと大きく
エッジぎりぎりまで使ったガラスの表面が、一世代前のモデル(左)に比べて約30%広くなった。このデザインとさらに低くなったフォルムにより、コンテンツのスクロールやスワイプがこれまで以上に快適になり、作業効率もアップする。
●感圧タッチにも対応
トラックパッドの表面の下には4つの感圧センサが配置されている。そのため、表面のどこを押してもクリックできる。これらのセンサは指が加える圧力の微妙な差を感知し、マルチタッチをスムースに行う。感圧タッチテクノロジーによって、強めに押すとさまざまな操作ができる。