ヨセミテを磨き上げたOS
OS Xエルキャピタン(El Capitan)は、Mac OS X時代から数えて12番目のメジャーアップデートになります。OS Xを長く使ってきたユーザなら、OS Xには過去に2度、2つのメジャーアップデートに渡る進化があったのを覚えていると思います。レパード(Leopard)からスノーレパード(Snow Leopard)とライオン(Lion)からマウンテンライオン(Mountain Lion)です。最初のアップデートで新機能の追加やUIの刷新といった大きな変化を起こし、続くアップデートで変化を新たな体験に磨き上げました。2つのアップデートを段階的に上げることで、ユーザは変化に戸惑わずに、結果的に大きな前進を遂げられました。
今回のエルキャピタンとヨセミテ(Yosemite)の関係を見てみましょう。エルキャピタンはヨセミテ国立公園内にある世界的に有名な岩山です。この関連性から想像できるとおり、エルキャピタンはフラットデザイン化で大きく変化したヨセミテを洗練させるアップデートです。もう少し具体的に説明すると、iOSとOS Xの間で機能やサービス、デザインを統合するという大きな目標をヨセミテで達成し、OS Xに立ち返ってOSとしての本質的な進化を図ったのがエルキャピタンなのです。その大きな狙いは2つ。「パフォーマンスの向上」、そして「Macの体験の向上」です。
アップデートすれば高速に
見た目の大きな変化はなく、また追加機能も少ないため、地味なアップデートという第一印象を抱く人が多いと思います。しかし、使ってみるとそれがメジャーアップデートにふさわしいことを実感できるはずです。
ヨセミテとの比較で、ソフトウェアの起動速度が最大1.4倍、切り替えは最大2倍。iOSに続いてOS Xにも、よりダイレクトにGPUの性能を引き出せるグラフィックスAPI・メタル(Metal)が組み込まれており、プレビューでPDFファイルを開く速度は最大4倍です。OSをエルキャピタンにアップデートするだけで着実に使用感が快適になります。またルートレスという新しいセキュリティ機能によって、rootユーザにもアクセス制限がかけられるなど、セキュリティが根本的に見直されており、マルウエアなどで性能が損なわれる心配も緩和されます。
Macの体験の高みへ
体験の向上は多岐にわたります。日本のユーザなら、まず日本語を入力したときに、ライブ変換によって日本語入力が見違えるほど快適になったことに気づくはずです。逆にリリース時点では日本語対応が遅れているため日本人は気づきにくいのですが、スポットライト検索も「9月に作業した書類」というように自然な言葉でファイル検索をできるようになりました。WEBから引き出せる情報も増えて、天気予想やスポーツの試合結果を確認するためにブラウザを開く必要がありません。
フルスクリーンモードも大きく進化し、スプリットビュー(Split View)で2つのソフトウェアを並べて表示できます。ほかにも「メモ」が情報やファイルの管理場所として機能豊富になり、「メール」の操作性が向上するなど、たくさんの標準ソフトに手が加えられ、それぞれがとても便利なものになっています。
ここまで機能が充実してくると、影響を受けるサードパーティが少なくありません。使い方次第では「エバーノート(Evernote)」や「ワンノート(Onenote)」に頼っていた記録を「メモ」に任せられるし、スポットライトは「アルフレッド(Alfred)」の強力なライバルになりそうです。
アップルがサードパーティ開発者のビジネスを奪っているという指摘もありますが、同社がこれらの機能をOSに取り込んだのはすべてのMacユーザの利益になると判断したからです。人気の高いサードパーティソフトでも、OS全体の中ではユーザが限られます。中には主にパワーユーザの間でしか使われていないツールもあります。OSに組み込むことで、誰もが簡単にアクセスできるようになり、Macをより便利に使いこなせるチャンスがすべてのユーザにもたらされます。
OS Xは誰にとっても使いやすいOSです。そこに満足せず、さらに高みを目指せば、より便利に使いこなせるようになります。そんな機能がエルキャピタンには散りばめられています。
それは巨岩エルキャピタンの存在そのもの。ヨセミテ国立公園はあらゆるタイプのアウトドア愛好家が集まる場所です。登山に関心のない人でも遊歩道やキャンプエリアから絶景を楽しめますが、そこにはエルキャピタンがそびえ立っています。すぐそこにある大自然に触れ、多くの人たちが登山やロッククライミングに挑戦し始め、そして高みに立ったときに、そこからでしか見られない風景を体験できるのです。
Macの体験を向上させるのはOSだけではありません。この1年でハードウェアやサービスも進化しました。エルキャピタンにはレティナディスプレイで映える新しいシステムフォント「サンフランシスコ(San Francisco)」が採用されています。スプリットビューは感圧タッチトラックパッドで操作しやすく、スポットライトからは直接アップル・ミュージックのコンテンツを検索できます。エルキャピタンの新機能に斬新なものはありません。でも、エルキャピタンを使いこなすことで、あなたのMacライフは確実に前進するはずです。
El Capitanという場所
エルキャピタンはヨセミテ渓谷の北側にそそり立つ巨岩です。単一の花崗岩としては世界最大、1000メートルを超える岩肌を持ち、ロッククライミングの名所としても知られています。ちなみに名前はスペイン語でキャプテンという意味です。