【Innovation 2】声を主体に直感的なタッチ操作をプラス
第1世代から第2世代への進化のときに大胆なハードウェアの変更が行われたアップルTVは、第4世代モデルにおいて今度は大幅な操作体系の見直しが図られ、まさに「未来のテレビ」と呼ぶに相応しいユーザ体験を実現している。ここでは、画面上のUIの工夫と、Siriリモートの両面から、アップルが成し遂げた革新に触れていくことにする。
「3メートル」の画面UI
アップルは、常に特定の製品の使われ方や利用場所に応じて、もっとも適したユーザ体験を実現することを目標にユーザインターフェイスを構築してきた。
たとえば、デスクトップ型Macではウインドウシステムとマウス、ノート型Macでは同じくウインドウシステムとトラックボール/トラックパッド、iPodではスクロールリストとクリックホイール、iOSデバイスでは全画面表示とマルチタッチという具合だ。
そして、一般消費者がマルチタッチに慣れた頃合いを見計らって、Macにもマルチタッチ対応のトラックパッドを導入した。その一方で、iOSデバイスでは音声認識&人工知能技術のSiriを普及させてきている。
アップルTVの場合も、第1世代からリビングのソファとテレビの間の距離を意識した、いわゆる「10フィート(約3メートル)・ユーザインターフェイス」の考え方に基づく大きめのUI要素と、十字キーによる操作対象のハイライト表示を採用していた。しかし、その動きは静的で、ハイライトもサムネイルやボタンなどが枠で囲まれるという平面的なものだった。これは、プロセッサ性能などを考えれば当然ともいえ、システムにあまり負荷をかけないインターフェイスでもあった。
対する第4世代モデルでは、iPadエアのA7チップを上回るA8チップを搭載したことで、同じ10フィート・ユーザインターフェイスを採り入れながらも、よりわかりやすく使い勝手の良い、ダイナミックな画面UIとなっている。
具体的には、ハイライトの効果が動的なものになり、より洗練された画面表示が実現した。また、アプリ項目の並び替えなどユーザが自由にホーム画面をカスタマイズできるようになっている点も、サードパーティ製アプリ解禁に伴い、使用アプリが増えることを想定して行われた改良だ。
声が主体の操作体系
話は変わるが、80年代の後半に、アップルは未来の情報環境のビジョンとして、「ナレッジナビゲータ」というデバイスが登場するコンセプトビデオを何本か発表した。ナレッジナビゲータは、タッチスクリーンによって画面内の要素を指定し、ボイスコマンドで具体的な指示を与えるというハイブリッドなユーザインターフェイスが想定されており、しかもボイスコマンドによるやりとりのほうが主体的に用いられていた。それは近未来的な一方で、とても理にかなったアイデアだった。
アップルTVのための新たなハードウェア・インターフェイスとなるSiriリモートは、形は違えど、このナレッジナビゲータを彷彿とさせる。画面内の要素にフォーカスしたり選択するときにタッチ操作が使えるという点ではiOSデバイスに似ているが、音声によって目的のコンテンツやアプリを直接呼び出せるなど、圧倒的にSiriによる操作がメインの位置づけとなっているからだ。Siriリモートのもっとも押しやすい位置にSiriボタンが設けられているのも、そのためであろうと考えられる。
もちろんSiriは、iOSデバイスの場合と同様に、スポーツの勝敗や天気予報、株価チェックなども行える。そのうえで、メディアの再生コントロール(たとえば、最初からの再生や、2分後への早送り、字幕の表示/非表示、セリフのリプレイなど)や、コンテンツの検索結果に対してさらに連続して絞り込みをかけていける機能があり、アップルTV向けのSiriならではといえる。
リモコンは見ない
一方で、タッチ操作のためのタッチサーフェスを使って行える標準的なジェスチャは、縦横のスワイプとクリック、タップだが、意味のあるジェスチャならばサードパーティが自社のアプリ内で独自に規定することも可能となっている。また、ホームボタンのダブルタップで、1つ前に利用したアプリに戻ることができるなど、最小限のボタンで最大限の使い勝手の良さを得るための工夫がなされている。
そして、Siriリモートの最大のポイントは、視線をスクリーンに固定したまま、目をリモコンに落とさずに声とタッチだけでほとんどの操作を完結できる点だ。これこそがジョブズのいう「想像もつかないほどシンプルなインターフェイス」だったのではないだろうか。その実現のために、アップルはたゆまぬ努力を続けてきたのである。
コンテンツをいきいきと映す
フォーカスした状態で、Siriリモートのタッチサーフェス上で指を円を描くように軽く動かすと、それに合わせてフォーカスの対象が面を傾けながらゆっくりと揺らぎ始め、仮想的な光の当たった部分が反射して見える。これは、ちょっとした演出だが、アップルらしい遊び心を感じる部分だ。
すっきりとしたデザイン
すべての画面要素がクリアなデザインで無駄のないディテールを持つことを基本とし、明確なグリッドシステムに沿ってレイアウトされている。そして、フォーカスされた要素(ユーザが操作しようとしている箇所をこう呼ぶ)はほかのものよりも少しだけ手前に浮いて見えるように動く。フォーカスされたまま、しばらくユーザの操作がない場合には、注意を喚起するために周囲が暗くなり、その部分だけがより目立つように光る。
カスタマイズで使いやすく
ホームスクリーンにはインストールされたアプリのアイコンが並んでいるが、もっとも上のエリアにはフォーカスしたアプリの特徴的なイメージや概要紹介が表示される。その下に位置するアプリの並びの最上段は、ユーザが使用頻度の高いアプリを登録してアクセスしやすくするための特別なスペースに割り当てられている。この部分にどのアプリを置くかはユーザの自由であり、こうしたカスタマイズによって、アップルTVはより使いやすく馴染んでいく。
アップルTV向けSiriならではの操作
アプリを起動したり天気予報などの情報を聞く以外にも、「初めから再生して」「字幕を出して」「この映画の監督は誰?」などといった、アップルTV向けSiriならではの操作ができる。自然言語に対応しており、思ったことをそのまま話しかけるだけで動作する。見ているものがたとえば映画なら、まるで映画通の友人といるような快適さを感じるだろう。
タッチインターフェイスを搭載したSiriリモート
アップルTVのための新たなハードウェア・インターフェイス、Siriリモート。右手で持ったときに、もっとも押しやすい位置にSiriボタンがあるのは、声を主体とした操作をアップルが推奨していることの表れだろう。ガラス製タッチサーフェスは、細かな動きにも素早い動きにもしっかり反応し、これまでのアップル・リモートと比べて格段に快適な操作が可能になった。
スライド
指を上下左右にスライドさせて動かすと、その動きがテレビの画面上で「移動」として認識され反映される。
クリック/タップ
画面上の項目を選択するときは、タッチサーフェスをクリックあるいはタップする。どの部分に触れてもしっかり認識する。
スワイプ
ムービー再生時に大きな動きで素早くスワイプすると、長い時間に渡って早送りと巻き戻しが可能。また、小さく細かな動きでスワイプすると、ほぼフレーム単位でコントロールできる。