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【CHAPTER 3_1】未来を拓くアップルTVイノベーションの全貌●Apple TVはテレビを変えるのか??

著者: 大谷和利

【CHAPTER 3_1】未来を拓くアップルTVイノベーションの全貌●Apple TVはテレビを変えるのか??

「青は藍より出でて藍より青し」という言葉がある。藍草で染めた布が藍草よりも鮮やかな青色になることから、弟子が師匠の学識や技術を超えるという意味だが、第4世代のアップルTVは、まさにテレビを超えるテレビといえる。このセクションでは、その超えっぷりを、アプリ、インターフェイス、サービス、ゲーム、ホームキットとの関連から見ていこう。

 

【Innovation 1】アプリがテレビを拡張する

アップルTVのアプリ対応は以前から噂されていたものだが、第4世代モデルでついに現実化した。これは、iPhoneがスマートフォンの世界で成功した方法論をリビングに持ち込もうとする試みだ。アップルTV用アプリはSiriリモートへの完全対応を義務づけられるので、iOSアプリがそのまま適用されるわけではないが、移植作業の負荷は比較的小さい。だが、アップルTVならではのアプリがどれだけ揃うかが真の勝負どころだ。

リビング版iOSのtvOS

第4世代アップルTVは、アップルが「tvOS」と呼ぶiOSの派生OSによって機能する。tvOSは、基本的にはiOSをベースにアップルTVのGUIやSiriリモートに対応できるよう拡張したもので、iOSアプリのような完全なカスタムアプリを開発することもできる。

ただし、アップルTVの場合には、コンテンツ系のアプリの割合が多くなることが予想されるため、そうしたアプリの開発が容易に行えるような仕組みも用意された。それが、TVML、TVJS、TVMLKitという新たな枠組みを利用する方法だ。

TVMLは“Television Markup Language”を意味するマークアップ言語であり、TVJSはTVMLで記述されたアプリを表示するためのJavaスクリプトのAPIセットを指す。そしてTVMLKitは、ネイティブアプリとTVMLおよびTVJSを束ねる役割を果たす存在である。たとえば、動画サービスやテレビ局などのコンテンツプロバイダーがアップルTV向けアプリを提供する際、優れたユーザ体験を実現しつつも短期間でコストを抑えた開発を行って、タイムリーにアップストアで公開したいとする。そのようなニーズには、これらの枠組みを利用することで、アップルが用意したテンプレートベースの標準レイアウトや画面遷移を使い、統一感のある使いやすいアプリを、フルカスタムアプリよりも楽に素早く開発することができるのだ。

このほかにも、tvOSはiOSにはないFocus Engine(画面内でユーザが操作を加えようとしている要素を際立たせる)やTVServices(開発者が指定したアプリの説明のためのコンテンツを状況に応じて表示する)などの要素を持ち、アップルの考えるテレビの姿に適したインタラクションを実現するための工夫に満ちている。

iOSとの連係

なお、アップストアでは新たに、iOS向けアプリと、関連するtvOSアプリをまとめて買うことのできる「ユニバーサル購入」機能が提供される。これにより、ユーザは両者を連係させたアプリ活用がしやすくなるほか、開発者はビジネスチャンスを広げられ、アップル自身もアップルTVの販売促進につなげられるという好循環を生み出そうとしている。

iOSデバイスとアップルTVに同一アプリが提供される場合、開発者がアップルの推進するハンドオフ機能に対応できれば、視聴中の番組をシームレスに引き継げるような連係も生まれるはずだ。

また、すでにエアプレイを利用する一部のアプリでは実現されているが、iOSデバイスとアップルTVに異なる情報を表示するような連係の仕方も考えられる。たとえば、旅行ガイド的なアプリの場合、アップルTVのアプリでは迫力ある大画­面に目的地の美しい風景を表示し、手元のiPhoneやiPadに詳細な解説を表示するといった役割分担だ。

このように、それぞれのデバイスの特性やユーザとの距離・関係性を活かしたアプリにも注目が集まっていくことだろう。

リリース確定のアプリたち

すでにアップルTV向けのリリースが確定している主要なアプリとしては、次のようなものがある(ただし、すべてが日本でも提供されるとは限らない)。以前から提供されていたサービスも含まれるが、すべて新たなGUIやSiriリモートに合わせて作り直されている。公表されているものはiOSアプリに比べてまだまだ少ないが、未開拓のアップルTV向けアプリ市場は開発者にとって魅力的なはずであり、今後、アプリ数は加速度的に増えていくものと予想される。

 

Jリーグオンデマンド/MLB.TV/NBA/NFL NOW

サッカー、野球、バスケットボール、アメリカンフットボールなどのスポーツ系のアプリも充実している。こうしたサービスの目玉は、大きな対戦はもちろん、普段目にすることのない練習試合から、地方での試合などに至るまで、すべてライブやリプレイで楽しめることだ。

Jリーグオンデマンド

 

WSJ VIDEO

ウォール・ストリート・ジャーナルが手がける、硬派のビデオチャンネルアプリもある。ニュースや世界に散らばる特派員からの映像レポートのほか、オリジナルのオンデマンド番組も配信される。

 

VLC Player

OS XやiOS向けでもポピュラーなビデオランのマルチフォーマット対応メディアプレーヤアプリ、VLC PlayerもアップルTV版を開発中だ。詳細は不明だが、ほかのプラットフォーム向けと同様に、tvOSのネイティブ環境ではサポートされない形式の動画・音声データを再生できるようになるものと考えられる。

 

YouTube

アップルのプリインストール環境からのグーグル系サービスの排除に伴って、一時はアップルTVからも姿を消していたネット最大の動画共有サービスだが、開発環境が公開されたことで復活する。

 

Airbnb

話題の民泊ブッキングサービスであり、リビングの大画面で宿泊先の室内などを没入感のあるビジュアルで確認することができる。ただし、少なくともアプリの開始時点ではアップルTVからの直接予約はできず、これはと思える場所を宿泊先の候補リストに加えるためのツールという位置づけだ。

 

バンダイチャンネル/ディズニーチャンネル

どちらも膨大な人気コンテンツを抱える大手エンターテインメント企業であり、消費者へのリーチを広げるため、アップルTV対応も積極的に進めている。

バンダイチャンネル

 

RedBull TV

エナジードリンクのメーカーとして、さまざまなエクトリームスポーツを主宰しているレッドブルが提供するコンテンツであり、驚くようなパフォーマンスと冒険の世界が待っている。

このほかにも、ABC、ABC News、CNN Go、Fox Now、NBC Sports Live Extra、Watch ESPN、Bloomberg TV、Dailymotion、HBO、Showtimeなどが、アップルTV向けのアプリを提供する。