Mac業界の最新動向はもちろん、読者の皆様にいち早くお伝えしたい重要な情報、
日々の取材活動や編集作業を通して感じた雑感などを読みやすいスタイルで提供します。

Mac Fan メールマガジン

iPhone 6s実際に使った本音レポート

文●石川 温

地味に効くタッチIDの進化

iPhone 6sをしばらく使っているが、地味ながらも気に入っているのが指紋センサの反応速度の向上だ。本当に地味すぎて申し訳ないのだが、この進化はじわじわと使い勝手に影響している。

今回、iOS 9からパスコードが6桁の数字の入力を推奨するようになった。パスコード4桁から6桁となると、結構面倒だったりする。iPhoneのロックを外すたびにイライラさせられるのだ。しかし、指紋センサであれば、当然のことながら、瞬時にロックを解除することが可能だ。しかも、iPhone 6sからは指紋センサが進化し、従来よりも早く反応、ロックを解除できる。実際にiPhone 6からiPhone 6sに乗り換えると、わずかながら高速になっているのが実感できる。ほんの一瞬の違いではあるが、これが1日に何度もロック解除するとなると話が変わってくる。1日、1週間、1カ月、1年。何度も何度もiPhoneのロックを解除するのだが、このちょっとした高速化により、ムダな時間がなくなる。

カメラ機能に驚き、しかし…

iPhoneを長く使い続けたユーザにとって、もっともわかりやすく驚けるのはカメラ機能かもしれない。写真を撮った瞬間に「あ、きれいだ」と実感できる。これまでもiPhoneのカメラは、何も考えずにそこそこきれいに撮影できるということもあり、一般的にもかなり定評があった。しかし、今回のiPhone 6sは、従来の800万画素から1200万画素にアップしたことで、はっきりと画質の違いがわかる。「ディスプレイが変わったのかな」と錯覚するほど、美しい画質で撮影できるのだ。1200万画素なんて、ハイスペックなアンドロイドデバイスからすれば「いまどき、1200万画素ですか」と突っ込まれてしまうが、iPhoneユーザであれば驚きを持って受け入れられるだろう。

一方でカメラ周りで残念だったのが、4K動画への対応だ。4Kで撮れることに不満があるわけではない。「SDカードに対応していないから、4Kテレビに出力するのが大変」「4Kで撮影すると1分で400MB弱の容量を必要とする」といった不満もあるが、問題はそこではない。通常画質や4Kへの切り替えが、カメラの起動時には変更できず、設定メニューから「写真とカメラ」の項目を選び、画質を変更しなくてはならないのだ。

しかも、画質は4項目から選べるようになっている。これまでのiPhoneのカメラは画質設定など何も考えずに、きれいに撮れるのがウリだった。設定はほとんどなく、撮ることに集中できた。しかし、4Kというハイスペックを採用し、通常と高画質というのを選べるようにしたことで、シンプルさが失われてしまった感がある。

カメラだけでなく、どのアプリがどれくらいバッテリを消耗しているかがわかるようにもなったのだが、これも細かい表示でシンプルさが欠ける。なんだか、やれることを増やし、利便性を高めた一方で、「アンドロイドっぽくなってしまった」のがとても不満であり、残念なのだ。iPhoneはシンプルで誰もが使いこなせるユーザインターフェイスが魅力だったのに、バージョンアップするたびに、複雑になっていく気がしてならない。

3Dタッチへの期待と懸念

iPhone 6sの特長の1つといえる「3Dタッチ」は、結構満足して使っている。やはり、何度も指を画面にタッチする必要がなくなったのは快適だ。今後対応するアプリが増えれば、さらに便利になりそうである。現状は、3Dタッチでショートカット機能を使えるアプリが限られているので「3Dタッチしてみたけど、非対応だった」という残念なこともあるが、いずれそういった不満も解消していくだろう。

ただ、長押しと3Dタッチとを使い分けたりするのは、少々繊細な操作が必要であり、万人向けではないかもしれない。特にシニア層などは、スマホの画面をぐいぐいと押して操作しがちだという。ガラケーの頃の感覚が残っているようなのだ。そういったユーザからすると、3Dタッチと従来のタッチ操作を混在させるのはかなり難しいかもしれない。アクセシビリティのメニューから3Dタッチの強弱やオン/オフが可能なので、「3Dタッチ、不要かも」と思える人は、オフにしてもいいかもしれない。

3DタッチはiPhoneに新しい操作体系を取り込んだように思う。この感圧センサが載ったことで、将来的にiPhoneの操作性はさらに高まるような気がしてならない。今後の進化に期待しておきたいところだ。

 

文?林 信行

3Dタッチの恩恵

iPhone 6sならではの新機能として、恩恵を感じているのはやはり3Dタッチだ。カメラアプリを深くプレスして、自分が撮りたいモードを選んですぐに起動できる「クイックアクション」は便利だし、メールや写真の一覧で画面をプレスすれば、ちょっと見たい写真をチラ見できる「ピーク(Peek)」と「ポップ(Pop)」の操作も便利で日々愛用している。

ピークとポップは、サファリでの利用が特に便利だ。たとえば「このメールに載っているリンクって、自分が求めているモノ?」と思ったときに、リンクを軽くプレスしてみる。するとリンク先のページがポップアップ表示される。求めているものと違えば指を離せば、すぐにポップアップ表示が消えてなくなる。

一方、求めているページのようなら、画面を上にドラッグして新規タブで開いたり、リーディングリストに追加したりできる。画面をさらに深く押し込めば、今、開いていたページからリンク先のページへと遷移(表示切り替え)される。

この操作に慣れてくると、Macのサファリでもこの機能が欲しくなる。いちいち「開いては戻る」や「新規タブで開いては閉じる」といった操作が煩わしく感じてくるのだ。

3Dタッチは、iPhoneのいくつかの標準アプリでも使い方に変化をもたらす。たとえば「メモ」。プレスすると、作成するメモの種類を選択できるのがとても便利で、エバーノート代わりに、あらゆる情報をメモに登録するようになった。

「リマインダ」も、プレスすると、どのリストに項目を追加するかを選べるようになったので「行ってみたいお店」、「いずれ買いたいもの」など、気軽にリストを増やして使い分けるようになった。

「メッセージ」や「電話」も3D タッチ対応だ。「メッセージ」アイコンをプレスすれば、最後に連絡した相手を一発で呼び出せるし、「電話」アイコンをプレスすれば、「よく使う項目」に登録した相手をすぐに呼び出せる。

もう元には戻れない

iPhone 6sで、もう1つ大きく進化したのがカメラ機能。特にライブフォト(Live Photos)だ。シャッターを切って、しばらくするとムービーの「録画終了」と同じ「ピッ」という音が鳴るので、ついついそれまでカメラを構えたままにするクセがついた。

私はせっかちで動きが早く、下手をするとカメラで何かを撮影したあと、すぐにiPhoneを持ち替えて、ツイッターで投稿する準備を始めてしまう。それをやってしまうとせっかくのライブフォトのシャッターを切ったあとの1.5秒の様子が乱れてしまう。ライブフォトを撮るようになってから、意識してiPhoneを丁寧に構えて写真を撮影するようになった。

新iPhoneでは、スチールカメラやビデオカメラとしての解像度が大幅にアップしたが、これのおかげで安心してデジタルズームが使えるようになった。これまで使っていたiPhone 6では、デジタルズームを最大限まで使うと被写体の輪郭がカクカクになってしまって写真としてきれいでない問題があったが、解像度アップでこれが少し緩和された(とはいえ、まったくカクカクしないわけではない)。

こうしてiPhone 6からiPhone 6sに切り替えて、iPhoneの日常での使い方がどれだけ変わったかというと、実はそれほど変わっていない。使い始めてから数日経って、新機能にも慣れると、やることといえば、ちょっとサファリで調べ物をしたり、音楽を聴いたり、これまでどおり日々の予定を確認したり、日常風景の写真を撮ったりと、なんら変わらない使い方が中心となる。

しかし、そんなiPhone 6sに慣れきった状態で、しばらくぶりにiPhone 6を触ってみると「もう、これには戻れない」という感覚が襲ってくる。指紋認証からホーム画面の表示、WEBページの表示。これまでさほど問題に感じていなかった、すべての動作が遅いのだ。いちいちカメラを起動してからモードを切り替える操作もまどろっこしい。

これまでiPhoneやMacを何台か乗り換えてきた人なら誰でも経験があるだろう。あの「もう元には戻れない」感覚だ。まだ前のiPhoneの契約が残っている人はiPhone 6sに触れないほうがいい。触ったら乗り換えたくなるからだ。でも、アメリカで実施されている「iPhoneアップデートプログラム」が日本でももし始まるのならば、記念に1回くらいは違約金を支払っておいて、真っ先に最新の3Dタッチを味わうのも悪くないかもしれない。