高性能アプリの登場に期待
12・9インチという大型ディスプレイを高速に駆動し、複数のアプリを同時に動かすマルチタスキングを実現するには、従来のiPadをはるかに上回るハイパフォーマンスが求められる。
iPadプロに搭載される「A9X」は、iPhone 6sに搭載される「A9」の発展型にあたる第3世代の64ビットSoC(システムオンチップ)だ。CPU性能は第2世代の「A8X」を搭載したiPadエア2の約1.8倍も高速であり、GPU性能に至っては2倍高速化された。CPU性能の詳細は公開されていないが、ベンチマークソフトの解析などからの情報を総合すると、コア数はクアッドコアでiPhone 6sの2倍である4GBのメモリを搭載しているとみられる。
パフォーマンスをiPad以外の製品と比較すると、コアMプロセッサを搭載したMacBookの8割から9割程度に相当する。もちろん動作が最適化されたアプリも必要だが、iPadプロがあればハイパフォーマンスな処理が要求される写真加工や動画編集、3Dデータのモデリングやハイエンドゲームといった用途にも十分対応できる。
また、フラッシュストレージからのデータの読み出し/書き込みを制御するコントローラは並列化処理の改善などで性能が2倍となり、大容量のデータもストレスなく扱える。たとえば、フォトショップ・フィックスでは最新のハイエンド一眼カメラから読み込んだ5000万画素の写真も取り扱えるほどだ。
処理性能の向上によって消費電力の増加が心配されるかもしれないが、バッテリ駆動時間は公称10時間をキープしておりA9Xチップの省電力性能はさらに向上していることが窺える。
そして、もう1つの技術的注目点が4基搭載されたステレオスピーカだ。従来は電気信号を音声に変換するドライバ部分と音声を増幅する空間部分(エンクロージャ)はスピーカユニットとして搭載されていたが、iPadプロではこのエンクロージャをユニボディ内部に直接取り付け空間を確保、従来モデルより61%スペースが増大した。これにより迫力のある低音が全体から響くようになる。また、傾きセンサなどを使って常に上部の2つのスピーカから高周波成分を出力するという仕組みもユニークだ。どのような姿勢で使っていても臨場感のあるステレオサウンドが出力できるので、楽器アプリなどの応用も期待される。
●第3世代A9Xチップを搭載
第3世代A9Xチップは、iPadシリーズ最高峰のスペックを備える。また、M9モーションコプロセッサをチップ内に統合して組み込み、加速度や電子コンパスなど各種センサからの処理も低消費電力で行えるほか、Siriを電源接続なしに呼び出せるようになる。
●4スピーカで音に死角なし
ユニボディに直接スピーカの筐体が機械加工で取り付けられ、ドライバユニットと空間を覆うカーボンファイバーキャップで構成される。従来のiPadよりも3倍大きな音声出力が楽しめる。また、縦向きでも横向きでも上側の2つのスピーカから高周波成分を優先して出力する。
●デスクトップに匹敵する性能
iPadは初代から着実な性能アップを遂げ、CPU性能は22倍、GPU性能はなんと360倍のスペックアップを果たしている。これにより操作レスポンスの向上やグラフィックスのスムースな再生などが実現する。
●4K動画編集も楽々に
グラフィック性能の向上と同時に、フラッシュストレージに大量のデータを読み書きするためのストレージコントローラも一新された。速度にして2倍になったことで、HDカメラからのRAW画像の処理や、iMovieのような動画編集アプリで4Kビデオの編集がストレスなく行えるようになった。