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どうしたアップル!? 混乱を招くページピンの説明

El Capitan告知ページの非Apple的情報提示

著者: 大谷和利

El Capitan告知ページの非Apple的情報提示

機能自体の素晴らしさ

問題の新機能は、エルキャピタンに付属する新バージョンの純正WEBブラウザ、サファリの「ページピン」だ。サファリにとっては目新しいが、実はグーグルのクロームブラウザに以前から実装されていた「ピンタブ」とほぼ等しい機能性を提供するものである。

ページピンの基本的な役割は、頻繁にアクセスするタブのライブブックマークと考えれば、わかりやすい。

従来のブックマーク機能は、WEBページのURLのみをリスト化して記録する。そして、あとから呼び出すと、その時点で新たに該当ページにアクセスしデータを取得するため、時間がかかる。

これに対してページピンは、任意のタブをタブバーの左端までドラッグするとアイコン化される機能を指す。アイコン化されたタブのページ内容はバックグラウンドでも常にライブアップデートされて最新状態に保たれ、ブラウザウインドウを閉じて再度開いたときにも、自動で定位置に現れるようになる。

クロームのピンタブでは、タブ上でポップアップメニューを開いて「タブを固定」コマンドを選ぶ必要があり、いまだにこうした機能の存在を知らないユーザもかなりの数に上るようだ。操作面では、サファリのページピンのほうが圧倒的に直感的で、さすがはアップルというべき実装になっている。

解説文とイメージ図の曖昧さ

ところが、いざその説明になると、アップルは、WWDCでも公式サイトのプレビューページでも、なぜかユーザを混乱させてしまう。それは、ピンタレストのサイトイメージとアイコンを使っているためだ。

ピンタレストは、WEB上で気になった情報を、ページ内の象徴的なイメージを用いて保存し、デジタルなスクラップブックを作れるサービスで、全世界に7000万人以上のユーザを擁している。こうしたイメージ利用の情報の保存がワンタッチでできるところが大きな特徴であり、ピンタレスト上にスクラップすることを「ピン」、そのユーザを「ピナー(ピンする人の意)」と呼ぶのである。

その利便性にはアップルも注目し、ピンされた情報から直接アプリがダウンロードできる「アプリピン」や、(今は米国内のみでの対応だが)アップル・ペイによって買い物が行える「バイアブルピン(購入ピン)」機能が、iOS向けのピンタレストアプリでのみ実現されている。

だが、今回のページピン機能は、それらのピンとはまったく無関係。にも関わらず紛らわしい名称が付き、しかも、その説明のためにピンタレストのサイトイメージが使われ、さらに「P」のアイコンが目立つ位置にある。その一方で、ページピンの解説文ではフェイスブックとツイッターの名前は出てきても、ピンタレストには一切言及がない。

そのため、あたかも「P」のアイコンがページピンの機能と関係しているかのような印象を与えたり、ピンタレストをよく知る人間には、同サービスのエクステンションがサファリに標準組み込みになったのかと思わせてしまうのだ。

この件に関して、筆者はピンタレストの幹部にも直接確認してみたが「アップルがページピンに関して、なぜこのようなことをしたのか、理解に苦しむ」との回答を得ている。直感的に理解できるOSやハードを目指すアップルだけに、こうした新機能の説明ひとつとっても、わかりやすく誤解を招かない見せ方に一層留意すべきである。

WWDC 2015におけるエルキャピタンのサファリのページピン機能の説明。名称がピンタレストのリッチピン(機能付きピン)などに似ているうえ、ページ例自体もピンタレストなので紛らわしい。

このプレビューページが、サファリの新機能のページピンの説明だと聞けば、多くの人は、赤い「P」アイコンが、このピン機能を利用するためのボタンだと勘違いする恐れがある。

実のところ赤い「P」アイコンはピンタレストのロゴで、ページピン機能とは何の関係もない。以前から提供されているサファリエクステンションにも、この「P」マークが使われている。

【NewsEye】

実はWWDC 2015キーノートの会場には、ピンタレストCEOのベン・シルバーマンもいた。アップルの協力を得てiOS限定のバイアブルピン(直接購入可能ピン)機能を提供したためと思われるが、その彼もサファリのページピン機能については事前に知らなかったはずだ。