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AIR A01

円筒状ガジェットの正体は一眼レフ顔負けの本格カメラ

著者: 氷川りそな

円筒状ガジェットの正体は一眼レフ顔負けの本格カメラ

2015年カメラの旅

新型iPhoneの発売(がされているはず)で物欲もみなぎる秋、皆さまいかがお過ごしですか?今回のiPhoneもきっとカメラ性能が向上していると思われますが、もうそろそろかつての「コンパクトデジカメ」はスマートフォンに置き換わったといってもいいんじゃないでしょうか。

「これはiPhoneで撮りました」みたいなCMが出るくらいきれいに撮れちゃうわけで、もう日常のスナップショットどころか、取材の撮影ですらiPhoneで撮っても問題ないレベルです。いい時代になりました。

とはいえ、デジカメが不要なわけではありません。カメラ好きの筆者としてとても気になっていた製品が、今年の春に発売になったオリンパスの新ジャンルカメラ「AIR A01(以下A01)」です。

センサユニット以外の部品を大幅に省略した本体デザインは、ミラーレスどころか「ファインダーレス」カメラといった風貌。スマートフォンと常時ワイヤレス通信をして、撮影のコントロールを任せてしまおう、というコンセプト。よくいえばデジタルカメラの最小形ですが、見た目は完全にイロモノ…じゃなかった上級者向けの製品に見えます。

実は、同じようなコンセプトのカメラはすでに存在しており、一昨年ソニーから「レンズスタイルカメラ」という名前で「QX−10」と「QX−30」という製品が発売されています。こちらに飛びついた知人が数名いたのですが、その斬新すぎるスタイルゆえに購入後速攻で持て余すという報告が続出。異口同音に「悪いカメラじゃないんだけどね」と言うものの、じゃあなんで常用しないの、と思わずツッコミを入れたくなる状況にさすがのガジェット好きな筆者も購入を躊躇していました。

A01の外見はソニーのレンズスタイルカメラにも似ていますが、決定的に違うのは「レンズを交換可能」だということ。マイクロフォーサーズ規格のマウントを搭載した本気モードでリリースされました。これ、ちょっと気になってるんですよね、と本コーナーの担当編集にぽろっと漏らしたのが最後。気がつけば、手元にA01とレンズ数本が揃っているではありませんか。

フルセットが来たよ!

マイクロフォーサーズのレンズ持ってないんですよ、などと言ったらレンズも5本手配してきた担当編集。フォーサーズのレンズ沼に沈める気ですね、わかります。

小さいことはいいことだ

バッテリ内蔵で150グラム以下、6センチ以下というちっちゃいボディに一眼クラスの性能が詰め込まれています。キヤノンの一眼で使われる単焦点レンズ、「EF50mm F1.8 II」とほぼ同じサイズです。

使用準備がめっちゃ簡単

最初はアプリ「OAセントラル(OA.Central)」を使って、A01とiPhoneをペアリングします。アプリを起動すれば作業のガイドが表示されるので、指示に従ってブルートゥースとWi−Fiネットワークの接続設定を行うのですが、この作業ステップが実に秀逸。

A01の背面にあるQRコードをOAセントラルのカメラ機能で読み取ると、Wi−Fi接続プロファイルのダウンロードが始まり、接続設定が自動で行われます。SSIDやパスワードをメモする必要もないため、こういった作業に慣れていない人でも簡単にセットアップできるのは便利です。もちろん手動でも設定できるので、筆者のようにアイクラウド・キーチェーンに設定を保存して、複数台のiOSデバイスで使い回すといった使い方も可能。

A01のデータ通信のほとんどはWi−Fiを使って行われますが、本体の電源をオフにしていてもiPhoneでアプリを起動すると自動でオンになる「LOM(「補足」参照)」機能の制御にはブルートゥースも使います。実際に使ってみるとこれが非常に便利で、電源ボタンを探すことなくA01を撮影可能な状態にスタンバイできる設計になっています。低消費電力規格であるブルートゥースLEを利用したこの機能、カメラだけでなくほかのデジタルデバイスでも実装してほしいほど優秀です。

アプリ「OAセントラル」ではA01のセットアップ以外にも基本的な撮影コントロールをできるので、このアプリだけでもすぐに撮影を始められます。が、せっかく複数の対応アプリがあるんですからいろいろ使ってみたいところ。アップストア内で「OLYMPUS AIR」などのキーワードで検索すると、ぞろぞろと見つかります。筆者はA01のスペックをフル活用できるという「OAモードダイアル(OA.ModeDial)」をチョイスしました。

このアプリは、「iAUTO」「P(プログラム)」「A(絞り優先)」「S(シャッター優先)」「M(マニュアル)」「ムービー」といったモードを実装しており、名前のとおりカメラのモードダイアルと同じ役割を果たすだけでなく、フォーカスモードの切り替えや、撮影画素数、アスペクト比なども変更可能。一眼レフカメラのユーザであれば、「普段やっていることはこのアプリでほぼできる」と考えてよさそうです。

撮影は、付属のマウンタを使ってA01の背面にiPhoneを取り付けて行うのがスタンダードな形でしょう。この状態であればミラーレス一眼とほぼ同じスタイルとなり、どのレンズを使っていても安定した撮影が可能になります。「M.ZUIKO DIGITAL ED 75ミリ F1.8」のような単焦点レンズで撮影した画像を見ると、コンバージョンレンズなどでは実現できないクオリティに思わず顔がにやけてしまいます。

設定は背面に

背面のカバーを外すと、SSID、ブルートゥースデバイス情報などを確認できます。QRコードの表記や、マイクロSDカードスロットもこちらに。カバーを装着した状態ではLOMのスイッチとUSB端子だけアクセス可能になっています。

OA.Cetral

【開発】Olympus Corporation

【価格】無料

【カテゴリ】Appストア>写真/ビデオ

ガイドアプリが秀逸

A01とiPhoneの初回のペアリングに使用するアプリ「OAセントラル」は、A01の起動や設定など制御系の「ハブ」として働くためインストール必須です。設計が秀逸で、設定が苦手な人でも簡単に扱える良いアプリです。

対応アプリたくさん

A01に対応するアプリは、純正シリーズだけでも8種類(執筆時点)。まだまだ増えていくようです。

老舗メーカーらしい設計

使ってみて感じたのは「あ、ちゃんとしているな」というのが率直なところでした。1600万画素クラスの4/3型MOSセンサを搭載し、ISO感度も最大1万2800、シャッタースピードも1/1万6000まで対応。iPhoneへ転送できるファイル形式はJPEGのみですが、マイクロSDカードをセットすればRAW+JPEG撮影も可能という、一眼レフ顔負けの性能を持っちながらこの価格帯、というのはかなりお買い得です。

iPhoneの画面はデジカメのパネルよりきれい(さすがレティナ!)ということもあり、操作系は視認性も良く動作レスポンスも軽快。また、縦の構図で撮影する際にきちんとUIが追従して縦長になるため、撮影ストレスが少ないことにも気づきました。今までミラーレス一眼やキワモノのカメラは敬遠してきた筆者ですが、進化に感心するとともに、長年カメラを作り続けているオリンパスさんならではの「こだわり」はすごいな、と改めて思い知らされた次第です。

今回は基本的な撮影ステップをお伝えしましたが、次号では作例を交えつつ、より詳細な検証を行いたいと思います。

可変式マウンタ

蓋にあるツメの部分が伸縮するのと、「SMALL」「LARGE」スイッチの切り替えでマウンターの「開き」角度が変更可能に。これによってiPhone 4sからiPhone 6sプラスまでフル対応。iPhoneを斜めにハメコミます。

OA.ModeDial

【開発】Olympus Corporation

【価格】無料

【カテゴリ】Appストア>写真/ビデオ

OAモードダイアル

カメラについてくる機能を全部盛り込んできたこのアプリ。さすがに老舗メーカーなだけにちゃんと作ってあります。使うiPhoneの画面が大きいほど見やすい感じなのと、縦位置に対応しているのはさすが!

氷川りそなの評価

● 小さいのに本格一眼

● 価格も手ごろ

● 自由度の高い撮影スタイル

● 接続までのレスポンスが悪い

● アクセサリが少ない

【補足】

LOM(Lights-Out Management)は停止したコンピュータの電源を遠隔操作で再投入するためのテクノロジーです。かつてのサーバ向けMac「Xserve」でも使われていました。実際には電源が完全には「落ちてない」ので、ちょっとだけ電気を使っているのがポイント。

【補足】

円筒型のA01ですが、横置きにしたらゴロゴロ転がるのかと思って試してみたところ、重心が下に設定してあるようでわりとすぐに止まります。テーブルの上から落下することはなさそうですが「これならローリングムービー撮れるかも!」と期待してたので大変むずかゆい思いをしております。

SPEC

[使用期間]40日

【発売】オリンパスイメージング

【価格】3万3800円(税別、ボディのみ)/4万9800円(税別、レンズキットモデル)

【URL】http://olympus-imaging.jp/product/opc/a01

【サイズ】56.9(W)x57.1(H)x43.6(D)mm

【重量】146g

【インターフェイス】ブルートゥースLE、IEEE802.11a/b/g/n

【備考】カメラ部有効画素数1605万画素、総画素数、約1720万画/対応OS:iOS 7.0以降、アンドロイド4.0以降ほか(アプリの制限による)/搭載センサ:4/3型Live MOS

氷川りそな Risonah Hikawa

システム構築からカスタマートレーニング、サポート業務までやらされる会社員兼業ライター。アップルネタで原稿代を稼いでMacやiPhoneを買うエコシステムを絶賛構築中。